知っておきたい自動車保険2010
【第2回】ダイレクト型保険のメリット・デメリット

インターネットを使っていつでも申し込みできるダイレクト型保険

 自動車保険のうち、“自賠責保険”と異なり任意で加入する“任意保険”。その任意保険の中でも“代理店型”と“ダイレクト型”があり、特にダイレクト型保険が保険料の面でお得だというのが前回までの話だ。今回はそのダイレクト型保険について、安さの秘密や本当に安くても安心できるのか? など、ダイレクト型保険会社である三井ダイレクト損害保険へのインタビューも踏まえて、メリットとデメリットを掘り下げる。

価格が安くいつでも申し込めるダイレクト型保険
 ダイレクト型保険の一番のメリットはその保険料の安さだ。もちろん代理店型であっても、団体割引などさまざまな割引があるため、絶対とは断言できないが、多くの場合、同じ条件で比較すればダイレクト型の方が保険料は安くなる。加えてインターネットを使って申し込めばさらに数千円割引されたり、保険証券を発券しなければ割引されたりする(契約内容はインターネットの専用サイトで確認できる)など、通販ならではの割引も用意されている。

 本誌の読者であればインターネットを利用しているはずなので、インターネットを使って申し込むケースで話を進めるが、値段の安さに加えて、もう一つのダイレクト型のメリットがある。それはインターネットでの申し込みであれば、いつでも見積もりや申し込みが可能だということ。

 代理店型では、代理店の休みの日もあるし、平日も深夜や早朝まで営業しているところはない。しかしインターネットで申し込みができるダイレクト型なら、24時間365日、いつでも保険の見積もりや申し込み、更新ができる。車検証と保険証券、免許証を用意したらダイレクト型保険会社のWebサイトに行けば、深夜であろうとそのまま見積もりから始められるのだ。

ダイレクト型保険のデメリットについて三井ダイレクトに聞いた
 ここまでダイレクト型のメリットについて話してきたが、もちろんデメリットもないわけではない。代理店型と比べてダイレクト型の一番のデメリットは、保険会社と自分が直接やりとりをしなければならないことだ。いざというときには数千万円や場合によっては億単位の金額が動く保険の契約を、素人が一人で行うというのは、やはり不安がつきまとう。保険に関する知識が豊富な代理店のスタッフに相談し、決めてもらえるほうが安心できそうだ。また、実際に事故を起こした時にも、代理店のスタッフがいたほうが、なにかと安心できそうでもある。

三井ダイレクト損害保険 事業部 企画グループ チーフスタッフ 相川淳之介氏

 ダイレクト型の魅力である「安さ」を、不安要素にとらえる人もいるようだ。いざというときに、電話をしても繋がりにくかったりしないのか? 示談交渉といったフォローが本当にぬかりなく行われるのか? それは事故を起こしてみなければ分からない。そうなった時に「やっぱり安いなりだった」では済まされないわけだ。

 筆者もダイレクト型保険のユーザーではあるが、そういった不安がないわけではない。そこで筆者も加入している三井ダイレクト損害保険の相川淳之介氏にお話を伺った。

補償額の設定はこれでよいの? 「加入時の不安」
 まずは、加入するときの不安。自動車保険は対人補償や対物補償、搭乗者傷害など、普段は聞き慣れない名前が並び、さらに特約の種類も各社で様々。少しでも安く抑えたいけど、本当に必要な部分が抜けていないか? 逆に特約などで保険が重複してしまっている無駄な部分はないかなど、不安は絶えない。

三井ダイレクトの場合、車両の情報や使用状況を選ぶとオススメの保険プランが3種類提案される

 この点に関して相川氏は「当社では、ホームページ等でオススメプランを提案しています」と言う。これは、代理店型でスタッフが提案するプランに当たるものだと思えばよい。さらに各補償内容についての説明も細かに掲載されているので、オススメプランを参照しながらも、それらをじっくり読んで、自分ならではのプランを作ることもできる。インターネットでなら、プランを変えた場合の保険料もその場で確認できるので、いくつものプランで金額を出してみて、納得いくものを選ぶことができるわけだ。

 もちろんそれでも一人で選んでいると、不安がないわけではない。できれば自分の設定したプランで抜けがないかをプロの目で確認してもらいたいところだ。

 この点については「当社ではお見積もりの際など、ご不明な点などあった場合におかけいただくフリーダイヤルを用意しています。常にお客さまの立場に立った、分かりやすい説明とスピーディな回答を心掛けています」と言う。しかしそれではインターネット割引が使えなくなってしまうのでは? とたずねると、最終的な契約さえインターネットで行えば、電話で相談してもインターネット割引は適用されるとのこと。それならば、ダイレクト型だからといって一人で不安を抱える必要はなさそうだ。

地方でも対応は行き届くの? 「事故時の不安」
 次に、実際に事故を起こしてしまった場合の不安だ。やはり顔も知ってる代理店のスタッフに対応してもらったほうが安心できそうではある。

 この点については、まず代理店が何をするのかを知る必要があると言う。実際に事故を起こした場合、契約者が代理店に連絡すると、代理店はそのことを保険会社へと連絡する。あとの示談代行などはすべて保険会社が行い、代理店は契約者向けの窓口となり、アドバイスを行うのが主な仕事となる。ダイレクト型の場合、この代理店の仕事を保険会社が行うことで、同等のサービスを提供しているのだ。

 事故があった場合、契約者は代理店の代わりに事故対応サービスセンターへと連絡するのだが、三井ダイレクトの場合、事故対応スタッフに事故対応経験年数平均10年強というベテランをそろえている。さらに「1事故専任担当制」を採用。これは、通常事故を起こした場合、対人や対物など、補償の内容によって担当者が異なるのだが、専任担当とすることで、契約者は一人の担当者を頼ればよいことになる。その担当者が不在の時には同じチームのスタッフが対応するので、利用者は代理店のスタッフに相談するのと同様に、選任スタッフに気軽に相談することができる。

事故受付はインターネットからも行える

 また、Webサイトには登録することで契約者それぞれの専用のページも用意され、示談の進捗状況などが随時記載される。事故対応について不明な点があればこのページから質問することもできる。これなら仕事などで、帰りが遅くなりがちな人にとっても安心だ。

事故対応の経過は自分専用のWebサイト上に逐一報告される分からないことがあれば安心メッセージボードに記入すれば回答してくれる。電話している時間がない人でも安心だ

 地方在住者にとっては、地方でも事故に遜色なく対応できるのかが不安だが、事故対応サービスセンターは、2010年7月現在全国13センターあると言う。それ以外にも全国に修理工場や弁護士などのネットワークがあり、必要な場合は担当者が現地訪問も行うとのこと。さらに補足するならば、実際に事故を起こした場合、保険会社のスタッフが現場を訪れるというケースはあまりない。それは代理店型にしても同じことで、なぜなら事故の状況を判断するのは警察の仕事だからだ。だからこの点に関しては、あまり心配する必要はないように思う。

 さらに三井ダイレクトに加入している場合、停車中に追突された場合など、自分の保険を使わない被害事故の場合でも、保険会社に一報いれておくといろいろ相談に乗ってくれる。これは筆者が実際に追突事故で被害に遭った場合のケースだが、一応連絡しておいたところ、最終的に相手の保険会社が支払った金額が適正かどうかの判断などを行ってくれた。ただしこの場合、示談の代行は法律上できないとのこと。それでも利用者にとっては非常に心強く感じた次第だ。

安いなりのサービスではないの? 「安さゆえの不安」
 最後に一番気になる「安さゆえの不安」だ。いざというときに使う保険という商品の特性上、そのときになって「安いなり」だったのでは困ってしまう。

 この点は、保険の仕組みについて知る必要がある。我々が支払う保険料は、その内訳として、実際に事故の際に支払われる保険金となる「純保険料」と、そのほかの会社の運営経費や代理店への手数料といった「付加保険料」からなっている。ダイレクト型が安いとは言っても、この純保険料の部分は従来のまま、付加保険料を削っているだけなので、補償に関して不安を感じる必要はない。

 たとえば代理店のスタッフが契約のために契約者の元に訪れるための交通費や人件費は、インターネットの契約では削減することができるし、説明のための資料もWebサイトに掲載すれば、カタログなどの紙代や印刷代が削減できる。もちろん代理店を通さない分、そこのマージンや管理費といったものも減る。こうした付加保険料の部分を削ることが、ダイレクト型保険の安さの秘密というわけだ。

 経費を抑えるという部分で言えば、代理店代わりに事故受け付けの窓口となるサービスセンターが、人員不足でいざというとき繋がらないという不安もありそうだ。相川氏によると、三井ダイレクトの場合、事故連絡の電話がつながらないようなことのないように、電話の応答率をチェックして最大限の配慮を行っていると言う。事故というのは週末や連休などに特に多く起きるそうで、カレンダーを見ればある程度予測できるとのこと。そこで、そうした事故が多発しそうなタイミングでは、要員体制の見直しなどの対策を行っているのだそうだ。

 保険会社に求めるクオリティとして、もう一つ気になるのが事故を起こした時の“示談能力”だ。双方に過失がある事故の場合、それぞれの過失の割合を決めるそれである。保険料が安い分、そういった示談の際に弱いのではないか? という不安は否めない。

 “示談”と言うと、我々のイメージとしては双方の保険会社の担当が舌戦を繰り広げるイメージだが、実際は違うそうで、よほど特殊なケースでもない限りは、過去の似た判例を参照して過失割合が決められるのだと言う。前回も書いたが2009年の場合で年間73万件を超す事故があるわけで、その中で似たような事例があるというのは、言われてみれば当然のこと。もちろん保険会社では示談のための専門のスタッフを用意してはいるが、その示談能力によって過失割合が変わることは少ないというのが現実のようだ。

 示談の話が出たところで、少し話がそれるが、実際に事故を起こした場合に注意しなければならないことがある。それは保険を使う場合は、当事者同士では絶対に示談を行わないことだ。もし仮に自分が100%過失があると自分で認めたとしても、それが過去の判例などから8割の過失だと判断された場合、保険会社から支払われるのは8割分だけになる。残りの2割は“自腹”になるわけだ。これはダイレクト型だろうと代理店型だろうと同じなので、くれぐれも注意していただきたい。

それでも不満の声がないわけではない
 利用者の声に耳を傾ければ、ダイレクト型保険に対する不満が聞こえてこないことはない。もちろん中には利用者が過度な期待をしていたケースや、先に述べたように、当事者同士で勝手に示談をしてしまったケースなどもあるが、それらを除いてもなにがしかの理由で不満を感じたという声はある。

 三井ダイレクトの場合、それらの不満を解消し、よりサービスを向上するため、開業以来、保険金を支払った利用者を対象に事故対応サービスに関するアンケート調査を行っていると言う。保険料を安く抑えながらも、そうした工夫により、実際、2009年度下期(2009年10月1日~2010年3月31日)は、普通・満足をあわせて95%以上という評価を得たとのこと。

 こうして話を伺うと、価格が安いダイレクト型だからといって不安を覚える必要はなさそうだし、代理店のスタッフがいなくても同等かそれ以上のサービスを受けることができそうだ。もちろんそうは言っても利用者の不満の声がないわけではないので、まわりの利用者の声などを参考にして、自分の条件に合う保険会社を見つけることが大事だろう。

 もし自分の契約した保険会社が気に入らなければ、次からは別の保険会社に乗り換えてしまえばよい。保険会社を切り替えても間を開けなければ等級は引き継がれるので、保険の契約が不利になることはないのだ。代理店のスタッフに顔を合わせなくてもよいダイレクト型は、乗り換えるのも気がラクなはず。もちろんだからこそダイレクト型各社は営業努力を怠らないわけだが。

 ダイレクト型保険の安さの秘密が分かったところで、次回は初心者にとってやっかいな保険用語について解説する。

(瀬戸 学)
2010年 9月 8日