知っておきたい自動車保険2010
【第3回】意外とややこしい保険の種類と用語

見積もりを始めてみると意外と保険用語がわからず戸惑うことも

 インターネットを使えば、24時間いつでも申し込みができるダイレクト系自動車保険。この記事を読んで早速見積もりを出してみた人もいると思う。しかしいざ見積もりを始めてみると、分かるようで分からない用語に戸惑った人も少なくないはずだ。今回はこの素人にはやっかいな保険用語について解説していく。

 まずは自動車保険と言っても、その内容はいくつかの保険が組み合わせられたものになる。大きく分けると賠償保険、傷害保険、車両保険があり、それぞれ補償の対象などにより、さらに細分される。さらに特約は、保険と組み合わせることで補償の範囲を広げたり、逆に絞ることで保険料を安くできたりする。特約はここに書いた以外にも各社からさまざまなタイプが登場しているので、それぞれの保険会社で確認していただきたい。

対人賠償保険
 賠償保険に含まれるのは、対人賠償保険と対物賠償保険だ。「対」と付くのは、自分ではなく相手方に対する補償だと覚えておこう。

 対人賠償保険は事故で他人に怪我を負わせたり、あるいは死亡させたりして損害賠償責任を求められた場合に支払われるもの。これは自賠責と補償が重なるので、まずは自賠責から支払われ、不足した場合に任意保険の対人賠償が使われる。

 ここで言う他人とは、相手や相手のクルマの同乗者に加え、自分のクルマに同乗していた人も含まれる。ただし本人(被保険者)とその家族(配偶者や子供、同居の親族)、さらに運転者は対象にならない。家族と友人を連れてドライブしていた時に事故を起こした場合は、友人には支払われるが、家族には支払われないことになる。また自分の子供にぶつけてしまった場合にも、対人賠償は使われない。友人などが運転していた場合は、その運転者も対象にはならないので注意しよう。

対物賠償保険
 対人賠償が人の死傷に対して支払われるのに対し、自動車やガードレールなど財物に対して使われるのが対物賠償保険だ。事故でぶつけた相手のクルマやガードレール、電柱、建物に突っ込めばその建物を修理する費用がここから支払われる。

 また、ぶつかった相手がお店だった場合や、タクシーなど商業車だった場合、その被害により営業できない間の休業損害分の補償も、この対物賠償から支払われるのだ。たとえば踏みきりで事故を起こし、電車を遅延させた場合など、その賠償額は高額になることは間違いない。

 対物賠償に関しても、対人賠償と同様に自分の車や資産に対しては補償の対象とならない。自分の車が壊れたことに対してはもちろん、ぶつけた相手が、たとえば家族のクルマであったり自分の家であったりなど、自分の所有物だった場合は、それらの修理代も補償の対象とはならないのだ。友人から借りていたものも同様だ。

搭乗者傷害保険
 傷害保険の一つが搭乗者傷害保険だ。前の2つの賠償保険と違い、自分自身や家族、自分のクルマの搭乗者や運転者が補償の対象となる。過失割合に関係なく、症状に応じて一定の額が支払われ、相手のいない自損事故も補償の対象に含まれる。また、追突事故など、自分の過失割合がゼロの場合も支払われるのが特徴だ。

 事故から180日以内に死亡、あるいは後遺障害となった場合、1名ごとに死亡の場合では補償金額の全額が、後遺障害の場合では保険金額を上限にその症状に応じて支払われる。さらに、介護を要する重度の後遺障害の場合は100万円を上限に保険金額の10%が上乗せされる場合もある。この辺りは保険会社ごとで少しずつ違うので確認が必要だ。

 また、事故による怪我で通院や入院した場合も保険金が支払われる。これは保険会社によって、入院1日ごとに保険金額の0.15%(通院の場合は0.1%)を支払う日額払いの場合と、障害の部位や症状に応じて一律の額を支払う部位症状別払いの場合がある。最終的な支払い額では日額払いの方が高額になるケースがあるが、支払いの早さでは部位症状別の方に分がある。

人身傷害保険
 傷害保険の一つ。フルカバータイプの保険とも言われ、他の保険がカバーできない自分側の補償を十分にカバーするもの。

 通常は自分が怪我をした場合、自分の過失が4割あれば、治療費の6割は相手の保険から出るが、残りの4割は自分で払うことになる。しかし人身傷害保険に入っていれば、自分の過失分の治療費も自分の保険から出すことができるわけだ。相手の過失分についてもまずは人身傷害保険から支払われ、後に保険会社から相手に請求されることになるので、相手の支払いを待たなくてよいのが特徴。

 搭乗者傷害保険と同様、契約しているクルマで事故を起こした場合に、そのクルマに搭乗していて死傷した全員を対象に支払われる。搭乗している他人はもちろん契約者本人とその家族、運転者も含まれる。補償は自損事故も含まれる。さらに被保険者本人やその家族については、クルマに乗っていないとき(歩行中など)や、他人のクルマに搭乗しているときの事故も補償の対象となるのがポイント。ただしバイクや原付などの運転中は対象外となり、原付特約を加えることで原付での事故は補償の対象となる。

 支払われる金額は、傷害の場合はその治療費や休業損害が、死亡した場合は生きていれば将来に渡り得られたはずの利益(逸失利益)といった損害額が、保険金額を上限に支払われるので、搭乗者傷害保険では足りない補償もカバーすることができる。

車両保険
 車両保険は、契約しているクルマが損害を受けた場合に支払われる保険。対物補償は自分のクルマは補償の対象とならないため、自分のクルマに対して掛けられる唯一の保険となる。

 クルマ対クルマの事故だけでなく、自転車との接触やガードレールへの追突といった単独事故、火災や洪水といった自然災害、当て逃げや盗難、落書きやいたずら、さらに前走車の飛び石によるガラスの破損なども補償の対象となる。さらに、カーナビなどクルマに装着していた付属品も補償の対象だ。全損の場合は保険金額の全額、分損の場合は、保険金額を上限に修理費用が支払われる。

 掛けられる保険金額は、対象車両の時価によってある程度決められる。また、事故の多い車種の場合は保険料が高くなる。ただし、補償の対象範囲を減らすことで、保険料を安くすることもできる。保険会社によって若干異なるが、自損事故や自転車との接触、いたずらなど、クルマ対クルマ以外の事故をカバー範囲から外すことで、保険料を抑えたタイプも用意される。

 また、自己負担額(免責金額)を設定することでも保険料は抑えられる。分損事故の場合、損害額からこの自己負担額を差し引いた額が保険金として支払われるのだ。

自損事故傷害特約
 相手がいない単独事故で搭乗者やクルマの保有者が死亡したり怪我をした場合で、自賠責保険の補償が受けられない場合に支払われる特約。保険会社によっては特約ではなく単独の保険となっている場合もある。

 内容としては搭乗者傷害保険や人身傷害保険の補償内容とかぶるが、こちらはあくまでも「相手がいない」ことが前提となる。さらに保険金額が以下のとおり低額であることから、搭乗者傷害保険や人身傷害保険が不要と判断するのは危険である。逆に人身傷害保険に入っていれば、自損事故傷害特約は入らなくてもよいだろう。

 三井ダイレクトの場合で、死亡は1名につき1500万円、後遺障害で1名につき50~2000万円、介護が必要な重度の後遺障害さらに200万円、怪我の場合は1名1日につき、入院6000円、通院4000円が支払われる。

無保険車傷害特約
 事故を起こした相手が自動車保険に入っていなかったり、あるいは入っていても十分な保険が掛けられていなかった場合、相手の過失分の内、自賠責分を差し引いた金額が支払われる。自分の過失分をカバーするものではないので注意したい。契約車での事故の場合は、搭乗者全員が対象になるのに加え、保険会社や契約内容によるが、本人や家族は歩行中に巻き込まれた事故も対象になる。

対物超過修理費用補償特約
 事故を起こした際の相手の物損に対して支払われるのが対物賠償保険だが、ことクルマに関してはそのクルマの時価までしか補償されない。つまり相手が古いクルマで時価20万円と評価された場合、修理に40万円掛かっても対物賠償保険から支払われるのは20万円の過失割合分のみ。追突などで10割こちらの過失だとしても20万円までしか支払われない。そうした場合に、上限50万円まで過失割合に応じて補填されるのがこの特約だ。

身の回り品補償特約
 車両保険にセットできる特約。車両保険を使う事故が起きた際、トランクの中の荷物やキャリアに固定された荷物に付いても契約した保険金額を上限に補償する。

事故付随費用補償特約
 車両保険に組み合わせ可能な特約。車両保険を使う事故で、自走不能な状況になった際、それによって発生した帰宅費用や宿泊費用などを支払うというもの。

レンタカー費用補償特約
 車両保険にセットできる特約。保険会社によって「代車等費用補償特約」「代車費用担保特約」などとも呼ばれる。車両保険を使う事故において、自分のクルマが使えない状況になった際に借りたレンタカーの費用を定額支払う特約。

原付特約
 契約者本人やその家族が排気量125cc以下の原動機付自転車を運転、あるいは所有してる際におきた事故に対し、契約している対人・対物保険や人身傷害保険、自損事故傷害特約の補償を受けられるというもの。この原付は本人のものでなくてもよく、借りていた原付も補償の対象となる。また、年齢条件に関しても不問のため、クルマの免許は持っていなくても原付には乗る子供がいる場合なども、契約しておくとよいだろう。保険会社によっては「原動機付自転車補償特約」や「ファミリーバイク特約」など呼び方が異なる。

弁護士費用補償特約
 自分の過失割合がゼロの事故の場合、相手との示談などに自分の保険会社は介入することは、法律上できなくなっている。つまり相手の保険会社と直接やりとりするしかないのだが、そこで話がもつれて民事裁判になった場合、その費用を負担するというもの。契約者本人やその家族が他のクルマに搭乗している際や歩行中にあった事故についても補償の対象となる。

他車運転特約
 本人やその家族が他人のクルマを運転していた際に起こした事故についても、自分の対人・対物補償を使える特約。自損事故については、人身傷害保険や自損事故補償特約の有無によって変わる。

臨時運転者特約
 自分と家族以外の他人の運転に対しては、年齢条件以下であっても補償の対象とする特約。家族以外で会社の後輩などが運転する場合は、年齢条件を下げるよりも保険料を安く抑えることができる。

家族限定特約
 補償の対象となる運転者を本人とその家族限定とすることで保険料を値引きする特約。臨時運転者特約を組み合わせることはできない。

本人・配偶者限定特約
 補償の対象となる運転者を本人とその配偶者限定とすることで保険料を値引きする特約。家族限定特約よりも保険料を安く抑えられる。臨時運転者特約を組み合わせることはできない。

ノンフリート等級
 利用者の無事故の期間が長ければ保険料を割り引くもの。通常20等級で分けられ、契約初年度は6等級からスタート。1年間無事故だと1等級アップし、等級に応じて保険料が割り引かれる。所有台数が9台以下のユーザーを対象としたもの。保険会社を切り替えても基本的には等級は引き継がれる(一部取扱いが異なる場合もある)。また、7等級以上の場合、保険期間の満了日から8日以上経過すると等級の引継ぎができなくなるので注意が必要。

カウント事故・ノーカウント事故・据え置き事故
 一般的に保険を使う事故を起こした場合は、カウント事故として翌年の保険のノンフリート等級が3等級下がる。ただし対人・対物補償、車両保険を使わない様な場合、ノーカウント事故として等級は翌年1等級上がる。また、火災や洪水、盗難、落書き、飛び石によるガラスの破損、飛来物との衝突によって車両保険を使った場合は、据え置き事故として翌年の等級が据え置きになる。カウント事故・ノーカウント事故・据え置き事故の定義は保険会社ごとに若干異なるので注意しよう。

(瀬戸 学)
2010年 9月 22日