ワールドリポート

メルセデス・ベンツ「Aクラス」の派生モデルたち

 つい先日、独メルセデス・ベンツから、ほぼ生産バージョンに近いカムフラージュ状態のティザー写真が公表された新型車「CLAクラス」。ワールドプレミアは、2013年1月に開幕する北米デトロイト・ショーということで、その誕生は既にカウントダウン状態に入っていると言えるだろう。

 「CLAクラス」は、「Aクラス」「Bクラス」のFFプラットフォームをベースとする4ドアクーペで、そのスタイリングは2012年春の北京モーターショーにて発表されたメルセデス・ベンツ「コンセプト・スタイル・クーペ」によって、既にリサーチが行われていたものである。

コンセプト・スタイル・クーペ
CLA

 最大のセールスポイントとなるに違いないボディスタイルは、2011年のデビュー以来高い評価を受けている現行C218系「CLSクラス」のイメージを投影し、全長4.6m級サイズに縮小したもの。またつい先日には、こちらも「CLSクラス」と同じく「シューティングブレーク」仕様の設定が決定している? とのスクープ情報が配信されたようだ。

 フロントに横置きされるエンジンは、いずれも直列4気筒のガソリンとディーゼル。ガソリン版の上級バージョン「CLA 200」に搭載されるのは、AクラスおよびBクラスにも搭載される新設計の直噴4気筒ターボで、パワーは「A200」と同様155PSを発生する見込み。組み合わされるトランスミッションは、A/Bクラスでも採用されている7速デュアルクラッチトランスミッション「7G-DCT」とされている。

 しかしここで注目すべきは、前述のティザー写真が「CLA 45 AMG」とされていることであろう。AクラスのAMG版、「A 45 AMG」も間もなく追加デビューされることが決定しているが、CLAクラスには当初からAMGバージョンが設定される可能性が高いということである。

 ちなみに「CLA 45」とは名乗るものの、もちろん4.5リッターなどという大排気量エンジンを搭載するわけではなく、パワーユニットは4気筒2リッター+ターボチャージャー。自然吸気の多気筒4.5リッターエンジンに相当する350PS級のパワーを発生すること、そして2012年に創業45周年を迎えたAMGにとって、記念モデルであることも示したネーミングと言われている。こちらはAWDが標準ということで、A 45 AMGとともに、遠からず新型に切り替わるであろうフォルクスワーゲン「ゴルフR」包囲網を築こうとしているようである。

 一方国内外のスクープ系メディアでは、A/Bクラスと同じメルセデスの新世代FF用車台「MFAプラットフォーム」を使用する、もう1台のモデルについての噂も取りざたされているようだ。「GLAクラス」ないしは「MLAクラス」なるネーミングで呼ばれているコンパクトSUVである。

 このGLA(MLA)クラスはアウディ「Q3」やBMW「X1」、レンジローバー「イヴォーク」、そしてフォルクスワーゲン「ティグアン」のライバルとなることを期したモデル。Aクラスと共用となる4気筒の直噴ガソリン/ディーゼル・エンジンやトランスミッションを搭載し、FFまたはAWDの駆動レイアウトを持つ。

 新型移行と同時に、初代以来の「2階建て」プラットフォームを潔く放棄するとともに、先代までの背の高いミニバン風スタイルを新Bクラスに託し、新AクラスはゴルフやBMW「1シリーズ」、あるいはアウディ「A3」に対抗する「プレミアムハッチバック」カテゴリーに移行。そして、このスタイリッシュな4ドアクーペ&シューティングブレークのCLAクラス、およびコンパクトSUVのGLA(MLA)クラスの追加で、さらなるラインナップ拡充を図ろうとしているメルセデス・ベンツ。

 その背景には、エコロジーコンシャスな欧米市場のダウンサイジング指向と同時に、中国を筆頭とする新興国マーケットでは、2BOXハッチバックよりも見栄えのする3BOXサルーンやSUVの方が好まれるという指向性もあるだろう。

 Aクラス派生モデルの爆発的な増大には、現代のダイムラー首脳陣の柔軟性としたたかさが垣間見られるのだ。

武田公実