特別企画

【特別企画】奥川浩彦がニコン「D810」でモータースポーツ撮影に挑む(前編)

“ニコンFXフォーマット”の画質チェックと電車撮影でAFを確認

ニコン D810

 筆者が初めて一眼レフカメラを買ったのは30年ほど前。以来、フィルムカメラからデジカメに変わってもずっとキヤノンユーザーだ。そんな筆者にCar Watchの編集長から「SUPER GTをニコンで撮ってください」との連絡。「はぁ?」と筆者。「ニコンから出たD810をサーキットで試して、EOS 5D Mark IIIと同じようなレビュー記事を書いてください」という依頼だった。

 ニコンのD810と言えば、高解像度一眼レフカメラとして大人気だったD800/D800Eの後継機。現在、多くのカメラマンが注目する製品だ。「3635万画素、7360×4912ピクセルの世界を見てみたい」と思い、筆者は承諾。8月30日~31日に鈴鹿サーキットで開催されたSUPER GT第6戦「43rd International SUZUKA 1000km」にD810を持ち込み撮影することとなった。

 まず、D810の仕様を簡単に確認しておこう。D810は2012年春に発売されたD800/D800Eの後継機で、発売は2014年の7月。撮像素子は有効3635万画素のCMOSセンサーを搭載し、センサーサイズは35.9×24mmでニコンFXフォーマット、いわゆるフルサイズ機だ。最大解像度は7360×4912ピクセル。撮像範囲をDX(APS-C相当)にした場合は4800×3200ピクセルとなる。今回は光学ローパスフィルターレスモデルのみをラインアップ。記録メディアはCFとSDXC/SDHC/SDメモリーカードのダブルスロットだ。

 連写速度は従来機の4コマ/秒から5コマ/秒にアップ。撮像範囲をDXにすると6コマ/秒となる。レリーズタイムラグは0.052秒と、筆者が普段使用しているキヤノン EOS 7Dの0.059秒より速い。オートフォーカスは測距点51点(うち15点はクロスセンサー)とフラグシップモデルのニコン D4sとスペック的には同等のAF性能となっている。

 ちなみに、9月16日に発表されたキヤノンのEOS 7D Mark IIは2020万画素で5472×3648ピクセル。連写速度は10コマ/秒。レリーズタイムラグは0.055秒。オートフォーカスは測距点65点で全てクロスセンサーとなっている。

 D810の特筆する点は3635万画素、7360×4912ピクセルという超高解像度だ。ニコン D4sの4928×3280ピクセル、キヤノンのEOS 5D Mark IIIの5760×3840ピクセル、EOS-1D X、EOS 7Dの5184×3456ピクセルと比較しても飛び抜けて高解像度なことが分かる。

 数字よりも図の方がイメージが掴みやすいと思うので、それぞれの解像度を図で比較していただきたい。参考にテレビやパソコンの液晶モニターで主流のフルHD(1920×1080ピクセル)、最近話題の4Kテレビ(3840×2160ピクセル)も図に入れてある。

D810の解像度比較

 フルHDと比較するとD810(FX)は3.8倍となる。Car Watchで掲載しているフォトギャラリーもフルHDサイズなので、被写体をフレームの1/4程度におさめても、トリミングすればフルHDでは画面いっぱいに表示することができる。

 D810、D4s、筆者が使用しているEOS 7Dの主な機能を表にしてみた。

スペック比較


ニコンD810ニコンD4sキヤノンEOS 7D
センサーサイズフルサイズ(35.9×24mm)フルサイズ(36×23.9mm)APS-C(22.3×14.9mm)
画素数3635万画素1623万画素1800万画素
解像度7,360×4,9124,928×3,2805,184×3,456
連写性能5コマ/秒(FX) 6コマ/秒(DX)11コマ/秒8コマ/秒
通常感度ISO 64-12800ISO 100-25600ISO 100-6400
拡張時感度ISO 32-51200ISO 50-409600ISO 100-12800
AF測距点51点51点19点
測距輝度範囲EV -2~19EV -2~19EV -0.5~18

 サーキット撮影という条件でスペックを比較すると、解像度とAF性能は問題ないが、連写性能の5コマ/秒はかなり遅く感じられる。感度設定をISO 32にできるのは、流し撮りでスローシャッターを切るときに役立ちそうだ。

 外観も見ておこう。長年のキヤノンユーザーである筆者でも、主な操作は取扱説明書を読まなくても直感的に理解できる。上面左上のレリーズモードダイヤルの上にQUAL、ホワイトバランスボタン、ISO感度ボタン、測光モードボタンがあり、それぞれのボタンを押しながら背面右上のメインコマンドダイヤルを回すと記録画質、ホワイトバランス、ISO感度、測光モードが変更できる。露出補正も上面右側の+-ボタンを押しながらメインコマンドダイヤルで変更が可能だ。

正面
背面
上面

 取扱説明書を必要とした操作の1つ目は連写の設定。上面左上のレリーズモードダイヤルの側面に書かれたCL(Lは小さく表示、低速連続撮影)と、CH(Hは小さく表示、高速連続撮影)で連写設定を変更する。2つ目はAFモードの変更。コンティニュアスAFの設定はレンズマウントの左下にあるフォーカスモードセレクターを押しながらメインコマンドダイヤルで設定する。AFエリアモードの変更はフォーカスモードセレクターを押しながらシャッターボタンの前にあるサブコマンドダイヤルを回して設定。フォーカスポイントを移動するときは液晶モニターの右側にあるマルチセレクターで操作する。3つ目はオートブラケティングの設定。オートブラケティングの変更はレンズマウントの左上のBKTボタンとメインコマンドダイヤルとサブコマンドダイヤルにより設定する。

レンズマウントの左下にフォーカスモードセレクター、左上にBKTボタンがある

 操作に関しては慣れによるところが大きい。ISO感度の変更などは、自分のカメラであればボタン位置を視認することなくファインダーを見たまま手探りで操作できるが、慣れないD810ではボタンを確認して操作をするのでワンアクション遅れる感じがした。これはあくまで筆者がキヤノンユーザーという理由で、ニコンユーザーであれば問題ないはずだ。

 実際に撮影を始めよう。編集長の指令は「2年前のEOS 5D Mark IIIで撮影した名鉄、オアシス21、名港トリトンなどを同じように撮ってくれ」とのこと。私事だが筆者は昨年、神奈川県の川崎市にオフィス兼住居を借りたので、1年の大半を関東で過ごしている。そのため、撮影するため8月25日からレースが行われた8月31日までの1週間ほどを、名古屋の自宅に戻って過ごすことになった。

 今年の夏は雨が多かった。天候不順を想定して長めに撮影期間を取ったつもりだったが、レース前日の金曜日まで1度も晴天を見ることはなく、撮影途中に豪雨で撤収するなど天候に恵まれない撮影となった。

撮影中に豪雨に見舞われクルマに避難。途中で撤収となることもあった

夜間撮影で高感度ノイズをチェック

 まずは高感度ノイズをチェックしよう。筆者が高感度ノイズの確認用に撮っているのは名古屋 栄のオアシス21。2005年くらいから撮り続けていて、デジカメWatchで2006年に執筆したキヤノン IXY DIGITAL 900 ISの記事(http://dc.watch.impress.co.jp/cda/longterm/2006/10/26/4912.html)にもオアシス21の写真が掲載されている。

 オアシス21はデザイン的にはなかなか優れものだと思って撮り始めたのだが、10年近くの長きにわたって50台以上のデジカメで撮り続けることは想定していなかった。オアシス21の難点は、ライトアップする照明の色が数分ごとに変化すること。今回、2年ぶりの撮影となったが、撮り始めの照明は青、撮影途中で紫に変わり、その後はレインボーカラーとなった。

オアシス21は照明が刻々と変化する

 2年前のEOS 5D Mark IIIの画像と比べて大きく色が異なっている。さらに色以上に変化したのはライトアップの明るさだ。ライトアップの方法を変えたのか、ライトアップの設備が変わったのか、たまたまタイミングが悪かったのか。とにかく、楕円状の太いパイプ付近が以前よりかなり明るくなっている。掲載した画像は1/3段ずつ5段階のブラケッティングで撮ったなかで、オブジェの中心部、左側の階段、その奥の建物の明るさが近いものを選択した。そのため太いパイプ部分は露出がオーバーとなっている。

 撮影した感度はISO 100からISO 25600まで9段階。高感度側の通常感度はISO 12800だが、EOS 5D Mark IIIの通常感度がISO 25600までだったので、拡張感度のISO 25600も加えてある。

 D810は高解像度化により1つ1つの受光素子が小さくなり、高感度ノイズは不利かと予想していたが、実際の画像を見るとノイズは少なめだ。ISO 12800あたりからノイズが目立ち始めるが、筆者の感覚では許容範囲。さすがにISO 25600になるとグッとノイズが増える。どこまでが許容範囲かというのは個人個人で差があるので、実際の画像を見て判断していただきたい。ただし、高感度になってもノイズは抑えられている反面、解像感はかなり低下している。ISO 6400あたりからシャープさが失われ、ISO 12800、ISO 25600と急速に解像感がなくなっていく。

 2年前に撮ったEOS 5D Mark IIIの画像も掲載したので参考にしていただきたい。EOS 5D Mark IIIはISO 6400あたりからノイズが増えていくが、解像感の低下は少ない。ISO 25600になるとその差は歴然で、高感度撮影に対する両者の絵作りの違いがハッキリと出ている。

ニコンD810

ISO 100
ISO 200
ISO 400
ISO 800
ISO 1600
ISO 3200
ISO 6400
ISO 12800
ISO 25600

キヤノンEOS 5D Mark III

ISO 100
ISO 200
ISO 400
ISO 800
ISO 1600
ISO 3200
ISO 6400
ISO 12800
ISO 25600

名港トリトンで小絞りボケ、回折現象の確認

 次は小絞りボケ、光の回折現象の確認をしよう。小絞りボケ、回折現象とは画素ピッチが小さくなると、撮影時に絞り込むことで画像がボケるという現象だ。物理現象なので高画素化が進んだ現在のデジカメでは避けることができないものだ。

 同じ解像度(画素数)のデジカメであれば撮像素子が小さいほど小絞りボケの影響は大きい。撮像素子の小さいコンパクトデジカメは絞り込むとボケやすく、APS-Cサイズになると改善され、フルサイズになるとさらに改善され、結果として絞り込んでもボケなくなる。撮像素子のサイズが同じなら解像度が高い(画素数が多い)ほど小絞りボケの影響は大きくなる。ニコン D4sやキヤノン EOS 5D Mark IIIと同じフルサイズでも、ニコン D810は高解像度であるぶん不利になるはずだ。

 2年前の撮影時とできるかぎり撮影条件を揃えたいと考え、月曜日に名古屋入りしたのだが、火曜日、水曜日は曇り、木曜日は朝から雨。土・日は早朝からサーキットに入るので、あとがなくなった金曜日も晴れることはなく、最初の撮影は曇天の金曜日に行った。

2年前の2012年は晴天だった
金曜日は曇天だったが仕方なく撮影

 小絞りボケ、光の回折現象の確認という目的は曇天でも問題はないので、ここで一旦終了と思ったが、土曜の朝はここ数日で初めて青空を見ることになった。そこで予定を変更し、鈴鹿サーキットに向かう前に名港トリトンに寄り道して撮影することにした。ただし、時刻は朝7時過ぎ。名港トリトンの橋脚に日が当たるのは11時過ぎまでなので午前中に撮影するようにしているが、2年前に撮影した時間は11時頃なので、かなり光の当たり方は異なっている。加えて2年前のEOS 5D Mark IIIとEOS 7Dは同じレンズ(EF24-105mmF4L IS USM)を使用して比較しているが、今回はレンズも異なっている。

土曜の朝は青空となったので急きょ撮影となった
105mmにズームして撮影

 使用したレンズはAF-S NIKKOR 70-200mm f/2.8G ED VR II。これを105mmにズームして画角を統一した。絞りはF2.8から1段ずつF22まで撮影している。サムネイルの画像は同じ場所を288×216ピクセルで無劣化に切り取ったもの。各画像をクリックすると元画像(7360×4912ピクセル)が開くようになっているので、細かなところまで確認したい方は拡大した画像を見ていただきたい。

ニコンD810

絞りF2.8
絞りF4.0
絞りF5.6
絞りF8.0
絞りF11
絞りF16
絞りF22

 F2.8はかなりボケているが、F4.0で少しシャープになりF5.6でかなり改善される。ここまではレンズの性能で光の回折とは関係ない。F8、F11がもっともシャープでF16から光の回折の影響でボケ始め、F22はかなり影響が出ている。高画素化により画素ピッチが小さくなっているので順当な結果だろう。画素ピッチの大きいEOS 5D Mark IIIと比較すると光の回折の影響は1段ほど差がありそうだ。とは言え、高解像度の恩恵もあり、F11では鋲の数が数えられそうだ。APS-CのEOS 7Dと比べるとまさに別格の印象だ。

キヤノンEOS 5D Mark III

絞りF4.0
絞りF5.6
絞りF8.0
絞りF11
絞りF16
絞りF22

 サーキットの撮影では絞り込みたいと思うことはほとんどないのだが「スローシャッターで撮影したい=勝手に絞り込まれる」ということは多い。晴れた日にシャッター速度を1/30秒以下にすると絞り込みにより光の回折の影響を受けるはずだが、実際にはスローシャッターで撮影すると被写体ブレの影響の方が大きいので、光の回折に神経質になる必要はないと思っている。

 それ以上に問題となるのは、昼間の撮影ではシャッター速度を落としたくても絞り値の限界に突き当たってシャッター速度を落とせないことがある。多くのデジカメの最低感度はISO 100だが、D810は通常感度でISO 64、拡張時感度でISO 32となっているのでNDフィルターなしでも撮影できるケースが出てくるだろう。

作例写真。カメラをほぼ水平にして右奥の赤い橋が「ハの字」に傾かないように撮影。撮影後に下半分ほどをトリミングしても、元の解像度が高いので横方向で5000ピクセル以上となる。最終的にフルHDにリサイズした

“名鉄の赤い電車”の撮影でAF性能を評価

 次は電車の撮影によるAF性能の評価だ。撮影方法は2年前と同じ場所で同じように撮影を行っている。D810にはAF-S NIKKOR 300mm f/2.8G ED VR IIを装着。比較対象のEOS 7Dには画角がほぼ同じとなるEF200mm F2.8Lを装着した。マニュアルモードでシャッター速度を1/1250秒、絞りF2.8に固定して撮っている。

 動く被写体に対するAF性能には、撮る人の技量が影響すると筆者は思っている。被写体を正面から撮る場合、サーキット撮影でも電車の撮影でも、レンズを振って被写体を追っかけて撮ることが多い。この場合、狙った1点に完璧にAFポイントを追従させることが理想だが、実際には微妙にズレが生じる。このズレの大小がカメラマンの技量で、上手い人はピントが合う率が高くなると思われる。

 電車の撮影によるAF性能の評価は、撮影者(=筆者)の追従能力(=技量)を排除するため、三脚に固定して撮影を行っている。AFポイントをセンターに固定。電車の向かって左上から右下へAFポイントが移動するため、通常の撮影よりカメラのAF性能には厳しい条件だと思われる。

 撮影対象は名鉄の赤い電車。電車の通過速度を合わせるため、撮影ポイントの前後の駅を通過する急行列車とした。現在、筆者は小田急線の沿線住人だが、2年ぶりに名鉄を撮った印象は「赤い電車、減ったなあ」。そのため、電車待ちで撮影時間はかなり長めになり、加えて豪雨で中止になったこともあって、2日にまたがる撮影となった。

D810+AF-S NIKKOR 300mm f/2.8G ED VR II

EOS 7D+EF200mm F2.8L

 評価方法も2年前と同じ方法とした。筆者の主観でピントが合っていれば○、やや甘い場合は△、ピンボケの場合は×とした。当然ながら、同じ画像でも人によってはピンボケと判断したり、OKと判断したり基準は違うと思われる。ちなみに評価を始める前に、2年前に撮ったEOS 5D Mark IIIの画像を再評価してみたら、15枚中2枚に差があった。その程度の誤差を含む評価と受け止めてほしい。掲載した画像はすべて元画像を見ることができるので、自分で判断したい方は1枚1枚チェックしていただきたい。

D810+AF-S NIKKOR 300mm f/2.8G ED VR II
△△○△△△×△△△△△×

EOS 7D+EF200mmF2.8L
○○○○○△○△○○×○○○○○○○××

 結果を見ると、D810の評価は期待外れとなった。ただし、D810はEOS 7Dより4割以上大きな画像となっている。誰しも経験があると思うが、カメラの液晶モニターでバッチリだった画像をパソコンで見たら、ブレやピンボケにガッカリ、パソコンで画面に収まるサイズで見てOKだった画像を等倍に拡大して見たら、ブレやピンボケにガッカリ、ということはよくある。比較する大きさがD810とEOS 7Dではかなり違うため、D810には不利な評価となっている。

 さて、2年前と同様に3つの方法で比較してみよう。まずは○を1枚、△を0.5枚と数えてAF合焦率という計算をすると以下のようになる。

D810:1+5=6 6/13=46%
EOS 7D:15+1=16 15/20=75%

 次は○、△は全て許容値内と考えて枚数をカウントすると、両者はほぼ同じスコアとなった。実際、フォトギャラリーに掲載している1920×1080ピクセルにリサイズすれば△と○の差はなくなるので、△は全て○と考えられる。

D810:1+10=11 11/13=85%
EOS 7D:15+2=17 17/20=85%

 最後は率ではなく、使える枚数を重視する考え方。筆者は一定水準以上の画像が多い方が、仕事として撮る場合は価値が高いと思っている。○△の合計枚数で比較すると、連写性能の高いEOS 7Dが優勢となった。

D810:1+10=11
EOS 7D:15+2=17

作例写真。2年ぶりに定番ポイントで撮影しようと思ったら、線路内に大量の雑草。レタッチ、リサイズなしの元画像を掲載
作例写真。新幹線も元画像のまま掲載。横位置の写真はDXで撮影

メディアの性能を評価

 超高解像度のD810で気になるのは画像のファイルサイズだ。画像によってファイルサイズは異なるが、RAWで約40MB、JPEG(Fine)で約20MBとなるため、高速、大容量の記録メディアが求められる。筆者は普段はJPEGで撮影しているので32GBのCFを使用しているが、今回は1066倍速 128GBのCFと600倍速 128GBのSDXCメモリーカードを用意して撮影に臨んだ。

 この2枚に、手元にあった200倍速のCFと200倍速のSDHCメモリーカードを加え、連写時の撮影枚数、書き込み時間を比べてみたので参考にしていただきたい。用意したメディアは以下の4種類だ。倍速の表記は読み出しの速度で、一般的に書き込みはそれより遅くなる。

レキサー プロフェッショナル1066倍速 CF 128GB
レキサー プロフェッショナル600倍速 SDXC 128GB
レキサー プラチナII 200倍速CF 16GB
サンディスク ウルトラSDHC(30MB/s=200倍速) 4GB

比較に使用した4種類の記録メディア

 撮影方法は三脚を使用し、マニュアルモードでシャッター速度1/2000、絞りF2.8(開放)に固定、フォーカスもマニュアルとした。記録画質はFXでRAW+JPEG(Fine)とJPEG(Fine)、DXでRAW+JPEG(Fine)とJPEG(Fine)の4つで、連写できた枚数とその時間、撮影後に書き込みが終了するまでの時間を手動計測した。

 D810は記録画質の設定によって連写可能枚数がファインダーに表示される。FXでRAW+JPEGにするとr17(17枚)、JPEGでr33、DXでRAW+JPEGにするとr24、JPEGでr44となっている。実際には高速なメディアを使用するとカウントダウンの途中で数字が止まり、表示以上に多くの画像を連写記録できる。カウントが0になると連写速度が大幅に低下するので、カウントが0になったところで撮影を終了。その後、カウントがr17、r33などの既定値に戻るとメディアへの記録が終了し、LEDの点滅も終わるのでそこまでの時間を計測した。ちなみに、D810の最大連写枚数は100枚に規制されているので、高速なメディアを使用した場合でも100枚が最大枚数となる。

 書き込みの途中でファインダー内のカウントはr0からカウントアップして既定値に戻る。その途中で撮影を再開すると、表示されている枚数に応じて連写は可能となる。例えば、FX RAW+JPEGでr17がr0となり撮影を中止すると、そこからr1、r2とカウントアップしていくので、r5で撮影を再開すると5枚撮ったところで連写速度が遅くなる。

メディア連写比較

1066倍速CF記録画質連写枚数連写時間(秒)コマ/秒書込終了(秒)
FXRAW+JPEG204.14.912.0
JPEG10019.85.05.5
DXRAW+JPEG416.76.18.4
JPEG10016.56.10.0
600倍速SDXC記録画質連写枚数連写時間(秒)コマ/秒書込終了(秒)
FXRAW+JPEG173.54.921.3
JPEG5711.25.117.1
DXRAW+JPEG264.65.616.3
JPEG10016.66.010.8
200倍速CF記録画質連写枚数連写時間(秒)コマ/秒書込終了(秒)
FXRAW+JPEG173.64.870.9
JPEG397.94.948.0
DXRAW+JPEG254.35.843.2
JPEG579.75.930.6
200倍速SDHC記録画質連写枚数連写時間(秒)コマ/秒書込終了(秒)
FXRAW+JPEG173.64.880.2
JPEG397.75.060.1
DXRAW+JPEG254.35.853.5
JPEG579.46.037.2

 1066倍速CFの速さは圧巻で、FX JPEGなら100枚の連写が可能となる。ファインダー内の表示もr44からカウントダウンが進むが、途中でカウントが増えたりもした。同じ条件で600倍速SDXCは57枚、200倍速のCFとSDHCは39枚となった。撮影後の記録時間も5.5秒、17.1秒、48秒、60.1秒と大きな差が見られた。DX JPEGにすると1066倍速CFは撮り終えた瞬間にカウントがr44に戻り、またすぐに100枚の連写が可能となる。

 200倍速のメディアでは書き込み終了まで1分以上待たされることもあるので、シャッターチャンスを逃す可能性がある。D810には高速、大容量の記録メディアを使用したい。

 ちなみに、パソコンに取り込む時間も書き込みと同様にメディアごとに差が出る。さらに撮った画像のチェックもパソコンの速さにより差が生じる。筆者はCPUにCore i5-4430を搭載したデスクトップPCを使用しているが、D810で撮った画像は、次へ次へと送りながらチェックするときに画像が表示されるレスポンスが遅くてイライラした。記録メディアだけでなく、パソコンも速いものが求められそうだ。

 次回はいよいよD810をサーキットに持ち込んで撮影した様子を紹介しよう。

奥川浩彦

パソコン周辺機器メーカーのメルコ(現:バッファロー)で広報を経て2001年イーレッツの設立に参加しUSB扇風機などを発売。2006年、iPR(http://i-pr.jp/)を設立し広報業とライター業で独立。モータースポーツの撮影は1982年から。キヤノンモータースポーツ写真展3年連続入選。F1日本グランプリ(鈴鹿・富士)は1987年から皆勤賞。