特別企画
【特別企画】三菱自動車「アウトランダーPHEV」の回生レベルセレクター活用ドライビング
レーシングカー同様の回生ブレーキ可変システムでアクティブドライビング
(2014/9/19 00:00)
美人だけれど家庭的。オトコはついついそんなオンナに惹かれて行く。みんながみんなじゃないかもしれないが、大半のオトコはそんな“ギャップ”に魅力を感じるものだ。それはクルマだって同じだ。その昔、ハコ車がスポーツカーをブチ抜いたことで、「羊の皮を被った狼」と人気が出たクルマもあった。すべて逆だと惹かれないのだが……(笑)。
三菱自動車工業の「アウトランダーPHEV」は、そんなギャップの持ち主だ。
外ズラは環境性能を考え抜いたクルマであることに特化。床面に敷かれたバッテリーによってEV走行を可能にするのはもちろん、バッテリー残量が少なくなれば、搭載されるエンジンとバッテリーによって、ハイブリッドカーとしても走ることができる。PHEVなのだから当然といえば当然なのだが、充電設備がない状況でもそのメリットを感じられる仕上がりは有り難い。
けれども、そんな一面を持ちながらも、走りを存分に楽しめるから驚くばかりである。SUVとしての悪路走破性を備えていることは見た目からも想像がつくとは思うが、それ以外にも4WDシステムの操りやすさや、回生レベルセレクターによって減速状態を操ることを可能にすることから、低ミュー路における一体感溢れる走りが可能になっている。それは以前、氷結湖面のドライビング記事(http://car.watch.impress.co.jp/docs/news/20140214_635186.html)でお伝えしたとおり、ランエボを彷彿とさせる走りがそこにはあるのだ。
その一番の功労者となっているのが、前述した回生レベルセレクターだ。ステアリング奥に備えられた2つのパドルは、回生ブレーキのレベルをB0(回生力小)~B5(回生力大)までの6段階で変化させることができる。これはF1をはじめ、回生ブレーキを持つレーシングカーでは当たり前の装備であり、タイヤや路面状況によってその介入量を変化させている。そんな回生レベルセレクターが備わっていること、これぞアウトランダーPHEVの面白さなのだ。
ちなみに、これまでのハイブリッドカーやEV(電気自動車)の場合、アクセルを離した時に得られる回生ブレーキの減速感は一定。エンジンブレーキ変わりにより強力な回生モードをもう1つ持っているくらいが一般的だ。
ならば、この回生レベルセレクターを操ることで、もっと効率よく、そしてもっと楽しく走れないのか? これが今回のお題である。以前のように氷上の限定的なシーンではなく、一般道路においてどのようなメリットが得られるのかを検証してみる。
基本の回生ブレーキ量はB2
まず街乗り状態でDレンジの状態を探ってみると、アクセルOFFした状態で減速しすぎるシーンがあることが分かってきた。DレンジでアクセルOFFすると、回生レベルセレクターのB2レベルの回生状態になるのだが、これが遠くの信号が赤になったからコースティングさせて燃費を稼ごうとすると、かえって減速しすぎてしまい、再びアクセルを入れなければならない状況に陥ってしまうのだ。それを防ごうと信号ギリギリまでアクセルを踏み続けるのは非効率だ。
そこで回生レベルセレクターの出番だ。流れがよい道路で、遠くの信号が赤に変わった時を見計らって、右のパドルを弾き、試しにB0まで切り替える。つまりは、エネルギー回生力を非常に小さい状態にするのだ。すると、タイヤはみるみる転がり、遠くの赤信号まで一直線。停止寸前に左のパドルで回生レベルを引き上げて行けば、完全停止までできそうな雰囲気だ。ただ、ここまでやるのは後続車両がなく、周囲に減速していることを知らせなくてもよい場合だけ。フットブレーキにおいてもエネルギー回生は多少なりともできるため、完全停止する際にはフットブレーキで最終減速することが現実的だろう。
この感覚を染み込ませると、どんなシーンでも回生レベルセレクターを使いたくなる。例えば下り坂にあるタイトなカーブを通過する手前では回生力の大きいB5レンジにスイッチ。すると、安定してコーナーへとアプローチできるから面白い。リアにもモーターを備えることで、回生時にも4輪で減速することが可能になり、フロントタイヤへの負担を軽減させることができるのだ。その気になれば速く走らせることもできそうだ。
ただ、闇雲に回生させれば効率がよくなるかといえば答えはノーだ。減速が必要な直線部分ではB5レンジを使い、コーナーへのアプローチへ向けてB4→B3というように減速。つまり、クリッピングへ向けて回生レベルを緩めて行くように乗ると減速しすぎず、続く立ち上がり加速へとスムーズに繋げて行くことができる。その先もずっと下り坂ならば、立ち上がり時にB0になるように回生レベルセレクターを操作すれば、アクセルを踏み込む必要は一切ない。
もちろん、B5でアプローチした後にコーナーのクリップあたりからアクセルを徐々に開けて行けば同じ効果が得られるが、コーナー立ち上がりも下り坂が続くなら、アクセルを入れるのも非効率だろう。
だからこそ、同様の効果を狙いつつ、電力消費を必要としない前述した回生レベルセレクターの使いこなしが必要になる。重箱の隅を突くような走り方ではあるが、こんなマニアックすぎる走りも許容してくれるところがアウトランダーPHEVの面白さだ。
また、一般道でメリットを感じたのは、回生レベルセレクターを操作することによって、結果としてピッチングも少なく、フラットな乗り味となることだ。もしも同乗者がいるのなら、快適に感じてくれるに違いない。
回生レベルセレクターでファンtoドライブ
このように、エネルギー回生を効率的にするために搭載されている回生レベルセレクターは、ファンtoドライブにも、同乗者への快適性向上にも役立ってくれることを改めて感じた。もしも操作がわずらわしくなった時は、右のパドルを引きっぱなしにすれば、即座にDレンジ復帰するところも好感触。フロアシフトの操作を一切必要とせず、ステアリングを握りながらソノ気になった時にだけチョットだけ効率よく走れるという程よい感じが好感触だ。
アウトランダーPHEVにこんな面白さと快適性が備わっていると誰が想像しただろう? 普段はSUVに興味を示すことのない僕ではあるが、いつしかアウトランダーPHEVを次期購入車両候補の1台に連ねたくなっている自分がいた。やはりそれは、このクルマが持つギャップにやられてしまったということなのだろう。