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三菱自動車、新型「アウトランダーPHEV」「アウトランダー」発表会

新しいアウトランダーPHEVベースのマシンで増岡浩選手がラリーにワークス参戦

2015年6月18日開催

 三菱自動車工業は6月18日、内外装デザインから乗り心地まで大幅に進化させた新型「アウトランダーPHEV」「アウトランダー」の発表会を東京都港区にある同社の本社ショールームで開催した。また、この発表会のなかで、増岡浩氏が選手兼監督を務め、新しいアウトランダーPHEVをベースとするのマシンでクロスカントリーラリー「バハ・ポルタレグレ500」にワークス参戦することも発表された。

 アウトランダーは6月18日から発売され、価格は251万9640円~321万1920円。アウトランダーPHEVは7月9日からの発売となり、価格は359万6400円~459万円。このほかの新型アウトランダーPHEVとアウトランダーのバリエーションや装備などの詳細、写真解説などは関連記事を参照していただきたい。

三菱自動車、内外装デザインから乗り心地まで大幅に進化した新型「アウトランダー」「アウトランダーPHEV」

http://car.watch.impress.co.jp/docs/news/20150618_706395.html

写真で見る 三菱自動車「アウトランダーPHEV」

http://car.watch.impress.co.jp/docs/news/photo/20150618_707485.html

アウトランダーPHEV
歴代パジェロに与えられたデザインテイストを継承・進化させた「Dynamic Shield」の考え方をフロントマスクで表現
アウトランダー
両サイドから包み込むようなバンパー形状など、大幅改良によるデザイン変更はPHEVモデルと同様。ドアパネル下側の加飾がメッキからシルバー塗装に変更されているなど、細部に見分けるポイントがある
タイヤサイズは225/55 R18 98H。ガソリンモデルは全車でアルミホイールを標準装備。PHEVモデルのMグレードのみスチールホイールを採用する
直列4気筒SOHC 2.4リッターの「4J12」は、発生する最高出力124kW(169PS)/6000rpm、最大トルク220Nm(22.4kgm)/4200rpmのスペックに変化はないが、JC08モード燃費が14.4km/Lから14.6km/Lに向上している
アウトランダーは全車3列目シートを備える7人乗り、アウトランダーPHEVは2列目シートまでの5人乗りとなる。運転席と助手席のサイド部分にステッチが追加され、存在感を高めている
大型2眼式のメーターパネル。右側がスピードメーターになるのは共通で、左側はガソリンモデル(写真)がタコメーター、PHEVモデルは
ガソリンモデルのシフトセレクター。後方側(写真右側)にあるのは「S-AWC」のドライブモードセレクター
CVTの6速スポーツモードの変速は、ステアリングコラムに設定されたパドルシフトで操作可能。ガソリンモデル全車に標準装備する

欧州プレミアムメーカーに対抗するため大幅改良を実施

三菱自動車工業 取締役社長兼COO 相川哲郎氏

 発表会では、まず三菱自動車工業 取締役社長兼COOの相川哲郎氏が登壇。相川氏は「私が1年前に社長に就任した際に、これからの狙いとして『三菱ブランドを復活させたい。そのためには三菱らしい技術とデザインが重要である』と述べました。本日の新型車は、そのブランド復活の第一歩だと考えています」と語り、まずはデザインを紹介するため、壇上に用意されていたアウトランダーPHEVをアンベール。「私どものデザインフィロソフィとして、かねてより『機能が形を作る』という考え方でデザインに取り組んできました。この新しいフロントデザインは、歴代パジェロが継承してきた、バンパーコーナーのプロテクト機能、大きなラジエターグリルにより、冷却効果によるエンジンのパワーアップ。この2つのイメージを採り入れ、人とクルマをがっちりと守る。そんなデザインといたしました」と新しく与えたフロントマスクについて紹介した。なお、「Dynamic Shield」(ダイナミックシールド)と名付けたこのフロントデザインは、これから発売になる新型車でも順次採用されていくとのこと。

 また、外観デザインだけでなく、インテリアの質感、走行面での性能と質感についても広範囲に渡って向上させたと語る。現行モデルのアウトランダーは2012年10月にガソリンモデル、翌2013年1月にPHEVを発売し、現在までに48カ国に出荷して累計で約6万4000台を販売している。相川氏は「このようにご好評をいただいているクルマに対して、発売から3年が経たないうちにこれだけ広範囲な改良を施すのは、当社でも過去に例のないことです。これがなぜかを説明しますと、このPHEVを発売したところ、ヨーロッパのプレミアムカーからお乗り替えされたお客さまが予想以上に多かったこと、もう1つは、これから続々とヨーロッパのプレミアムメーカーがPHEVを出してくることに対抗する必要があるという2つが理由となり、今回の大幅な改良を決断しました」とコメントしている。

相川氏が三菱ブランドの復活を期して取り組むデザイン戦略の新しいキーワード「Dynamic Shield」によって一新されたアウトランダーのフロントマスク。「人とクルマをがっちりと守る」というイメージとなっている
アウトランダーPHEVは2013年1月に日本から発売が開始され、現在ではすでに48カ国に出荷。2014年度には約3万5000台を販売し、累計で約6万4000台が販売され、相川氏は「PHEVとしては世界でもっとも売れているクルマではないかと思っています」とコメント
大幅改良のポイントは「エクステリアデザイン変更」「インテリア質感向上」「走りの性能・質感向上」の3点
車両の詳細解説を追って登壇するプロダクトエグゼクティブに任せ、相川氏は自身が思う「アウトランダーPHEVの魅力」について紹介
外部からの給電でEVとしても走行が可能で、写真内右下のメーターパネルにある4068.6kmという数値は、相川氏が通勤に使っているアウトランダーPHEVが1回の給油で走行した距離とのこと。自宅から離れていない職場までの往復ぐらいなら、走行距離のほとんどを外部からの給電で走れることを強調した
世界で唯一となるツインモーター4WDが生み出す力強い加速と静かな車内環境が2つめのアピールポイント。2014年から続けている「1泊2日無料レンタルキャンペーン」でも加速力と静かさは好評であると解説された
3点目のアピールポイントは大容量の駆動用バッテリーに貯えられた電気を取り出して使えるので、ほかのクルマが走っているときに価値があることに対し、アウトランダーPHEVは停まっているときでも価値があると力説。レジャーシーンでも便利であることに加え、災害時にもエンジンの発電で長期的に電源として活用でき、岐阜県高山市に住むアウトランダーPHEVのユーザーが、2014年夏に災害による停電に見舞われたときに、このクルマがあったことで非常に助けられたとの声が寄せられていると紹介。4日間に渡る停電中も、テレビや照明、お風呂のボイラーまで動かせたとのこと
三菱ブランド復活に向けた活動として、アウトランダーPHEVでのモータースポーツワークス参戦も明らかにされた。パリダカのパジェロ、WRCのランエボなど、モータースポーツの場で技術を鍛え、市販車にフィードバックしてきた歴史を紹介。10月にポルトガルで開催される「バハ・ポルタレグレ500」にワークス参戦し、新たなファン獲得を目指す
三菱自動車工業 常務執行役員 プロダクトエグゼクティブ 岡本金典氏

 相川氏に続いて登壇した三菱自動車工業 常務執行役員 プロダクトエグゼクティブの岡本金典氏から、新しくなったアウトランダーPHEVとアウトランダーについての商品概要解説が実施された。

 まずアウトランダーPHEVについて解説した岡本氏は、「三菱独自のプラグインハイブリッドシステムについては、EV派生ならではの経済性、静粛性と走りのよさ、給電機能の特徴があり、お客さまからはそれぞれについてお褒めの言葉をいただいております」と語り、ユーザーから高く評価されていると紹介。また、先に相川氏も述べているように、アウトランダーPHEVは上級モデルからの乗り替えも多く、インテリアの質感や装備に対する高い要求が想像以上に多いこと、欧州メーカーを中心にPHEVモデルが今後増え、市場が活性化することが予想されるなど、ユーザーの評価と市場環境の変化に対応するため、今回の大幅改良では「PHEVらしさの強化」「質感向上」を実施したと説明した。

 岡本氏は「これらの商品強化により、台数の拡大とともに三菱のプラグインハイブリッドブランドをさらに光耀させ、イメージを構築していくことを目標にしています」とコメントしている。

アウトランダーPHEVで重視してきた3つのポイントとユーザーからの評価
発売前にはあまり想定していなかった上級クラスからの乗り替え需要や今後の展望など、大きな市場変化が大幅改良に踏み切った利用との説明
「PHEVらしさの強化」「質感向上」が改良の大まかな方向性
外観だけでなく、走りの性能や質感向上に向けて多岐に渡る改良を実施。静粛性の向上は、PHEVの特徴である静かでスムーズな“未来感のある走り”をさらに伸ばすための最重要項目の1つとして取り組んだという。主な改良点だけでも20項目に渡る
駆動用バッテリーの電池パックにはダイナミックダンパーが追加され、車体振動を低減
アクセル開度40%での加速力比較では、0-5m、0-40km/hそれぞれの到達時間を短縮。発進後の加速力が長く維持され、力強さも強調された
前後のサスペンションでショックアブソーバーのストラットシリンダー径を拡大。ボディーの各所にも補強を施し、乗り心地と操縦安定性を高めている
制御系の改良により、S-AWCによる走行性能、PHEVによる燃費と航続距離なども向上させた
乗員の身体に直接当たる部分で暑さ、寒さを感じにくいようにすることでエアコンなどの使用頻度を抑え、燃費を向上させるのは近年のトレンドとなっている
アウトランダーにおける改良点
日本市場における販売目標は、アウトランダーPHEVが1000台/月、アウトランダーが200台/月と発表された
発表会終盤では質疑応答を実施
欧州プレミアムカーからアウトランダーPHEVに乗り替えたユーザーが以前に乗っていた車種についての質問に対し、岡本氏は「市場によって傾向は変わりますが、一般的にはアウディやBMW、ボルボ、メルセデス・ベンツ、フォルクスワーゲンなどで、例えばアウディではA4 アバントやQ5、BMWでは3シリーズのステーションワゴンやX3、ボルボのXCなど、SUVやステーションワゴンからのお乗り替えがたくさんあります。フォルクスワーゲンではかなり広範囲なモデルからお乗り替えいただいています」とコメント
同社の販売台数やシェアが低迷していることについての対策を質問され、相川氏は「台数やシェアは確かに低迷していますが、ここで『シェアを取れ』『台数を増やせ』という指示はしていません。これをやると安売りで台数を増やすという方向になりかねず、そうするとなかなかブランドもできません。ここはグッとこらえて、我々としてはお客さまが欲しいと思う商品をまず出す、それをキッチリと売っていくことです。欲しいと思ってもらえるクルマはそれほど値引きを要求されませんし、それで利益率も高いとなります。そういった売り方をしながらブランド力を高めて、台数はあとから徐々についてくると思って国内販売を進めています」と回答した

「アウトランダーPHEVのすばらしい走りを世界の人に見てもらいたい」と増岡氏

新しい市販車の発表に合わせ、アウトランダーPHEVベースのクロスカントリーラリーの出場モデルも公開された
アウトランダーPHEV「バハ・ポルタレグレ500」参戦車両
乗員の安全性を確保するロールケージはレース規定に合わせて追加されているが、車内はベースとなるアウトランダーPHEVの雰囲気を残したものとなっていた
ドライバーは増岡浩氏が担当。コ・ドライバーは調整中とのこと
迫力あるオーバーフェンダーを前後に設定
タイヤはファルケン(住友ゴム工業)の「WILDPEAK A/T」を装着。タイヤサイズは前後LT 285/65 R18
「バハ・ポルタレグレ500」ワークス参戦のドライバー兼監督を務める増岡浩氏。発表会前日に岡崎にある研究所で実施したラリー車両のシェイクダウン走行の感想を、「走る・曲がる・止まるという主要3要素を高い次元で満たしてくれる、非常に頼もしいクルマだと素直に感じました」と語った
モータースポーツに参戦することで、電動車両技術、4輪制御技術の先行開発を行い、他社と一線を画す三菱独自のオンリーワン商品の性能を磨き上げることが使命であると増岡氏は語る
FIA規定を満たすためロールケージや安全燃料タンクなどの安全装備を装備したほか、参戦する「バハ・ポルタレグレ500」は全開での走行時間が長いことを受け、PHEVシステムの高出力化、ツインモーター4WDの専用セッティングなどを実施。走行用バッテリーも電圧と容量をアップしたことで大型化している
「バハ・ポルタレグレ500」の参戦体制

(編集部:佐久間 秀)