特別企画

【特別企画】「アウトランダーPHEV」で春を先取り、ナガシマリゾート“なばなの里”へ行ってきた(後編)

ワインディングとバーベキューでアウトランダーPHEVの魅力に迫る!

 家電やスマートフォンなどを筆頭に多機能化している現代。皆さんはその製品が持つ機能をどれだけ使い切っているでしょうか。僕の場合、使い切るのはタイヤの限界と原稿の締め切りまでの時間くらいなもので(後者に関しては各方面ホントすみません……)、普段使う一般的な機能以外はほとんど使わない。友人から「オマエはガラケーで十分。スマホの意味ないね」と言われるような人種であります。

 だが、Car Watch編集担当の“機能を使い切る精神”たるや見習いたいくらい貪欲。今回のお題であるプラグインハイブリッドEV「アウトランダーPHEV」の機能を知れば、トコトンまで使い切ってやろうと企画を考えて取材に挑んでくる。

 三重県の「なばなの里」で河津桜を見ながら夜桜キャンプを考えていたのは前編(http://car.watch.impress.co.jp/docs/special/20140326_640920.html)で紹介したとおりだが、場所の関係であえなく断念した。しかし、この続きについて編集担当はすでに整理しているようだ。その考えとは、「ツインモーター4WDとS-AWC(Super All Wheel Control)の性能を活かしてワインディングを走り、その先で大容量バッテリーを利用したバーベキューをしてアウトランダーPHEVの機能をフルに試す!」というものだ。馬車馬のごとく働かせるなと思いつつ、その企画に乗っかることにした。

 ということで、後編となるアウトランダーPHEVの旅では、愛知県の三ヶ根山スカイラインや三河湾スカイラインといったワインディングを駆け抜けつつ、アウトランダーPHEVの電力を使ってバーベキューをしてみようというものである。場所を愛知県に移したとはいえ、さっきまで三重県にいたくらいである。バーベキューといえば牛、牛といえば言わずもがなの松坂牛があるではないか。これは楽しみ。

前編ではプラグインハイブリッドEV「アウトランダーPHEV」を使って燃費性能を試しながら三重県の「なばなの里」へ。後編では舞台を愛知県に移し、ワインディングを走って走行性能を確かめながら、野外でアウトランダーPHEVの電力を使ってのバーベキューをしてきた模様をお伝えします

ピュアスポーツカーの如く走る

 SUVの出で立ちながらも、連続するワインディングをものともせずに駆け抜けてみせるアウトランダーPHEV。

 なかでも感覚的に優れるのは、見晴らしがよい着座位置の割に安定感高く走ることだ。バッテリーを床下全面に配することでそのバランスを高めたというこのクルマ。これにより、重心高はガソリン車に対して30mmも低いのだ。結果として連続するコーナーも余計に揺らされる感覚はなく、ピタリと走る資質を持っている。まるでセダンモデルかと思えるこの感覚は、見た目とはまるで違う世界観といっていいだろう。

 さらにいえば、リアにモーターを積んだことで前後重量配分に優れているという点も見逃せない。フロント:リアのバランスは55:45と、まるでピュアスポーツのような重量配分を手にしているのだ。もちろん、重量的に見ればおよそ1.8tの巨体なわけだが、そんなことを思わせないくらいの素性のよさがある。

前輪をエンジンとモーターで、後輪をモーターで駆動する「ツインモーター4WD」を採用するアウトランダーPHEV。総電圧300V、総電力量12kwhの駆動用バッテリーをフロア下に配置してガソリン車よりも30mm低い重心高を実現。前後重量配分は空車状態で55:45だが、乗車人数や荷物が増えると50:50に近づく設定とし、これによって前後左右の車体姿勢変化が少なくなり優れた旋回性能を実現している

 加えて同社のハイパフォーマンスカー「ランサーエボリューション」で磨き上げてきた車両運動統合制御システム「S-AWC」があれば鬼に金棒だ。S-AWCはツインモーター4WDの駆動力や、駆動輪がスリップしたことを感知すると車輪にブレーキをかけながらエンジン出力を自動で調整してくれる「アクティブスタビリティコントロール(ASC)」などを統合制御し、走行安定性を高めてくれるというもの。ステアリングだけに依存せずにコーナーをクリアする様は、アウトランダーPHEVの見どころの1つ。コーナーリングするのが楽しくなるほどスイスイ走ってくれるのだ。

 見どころといえば、回生ブレーキの強さを6段階(B0~B5)で調整できることも挙げられる。アウトランダーPHEVは、パドルシフトによって回生ブレーキの介入量をコントロールすることができ、ステアリング左側のパドルシフトを次々に弾くことでモーターの回生が高まっていき、安定感ある減速を実現する。4つのタイヤがしっかりと地面に付きながら、下りのワインディングを安心して走ることができるのだ。この感覚はリアにモーターを搭載しているアウトランダーPHEVならではの世界といっていいだろう。

 SUVの体つきでありながら、燃費性能にも優れるエコカーという側面を併せ持つアウトランダーPHEVだが、それだけに留まらず、芯の部分はスポーツカーの考えで仕立てられたといっても過言ではない。外観は大人しくとも中身は派手、まるでドリフトできるガチャピンである。

87kW(118PS)を発生する直列4気筒DOHC 2.0リッター MIVEC「4B11」エンジン。エンジンは発電機としての役割も担う
G Navi Packageは18インチホイールを装着。4WDシステム「S-AWC」の採用により旋回時にラインを外すことなく走行できるとともに、悪路走行時も力強い走りを実現する

最大で約10日分相当の電力供給が可能なアウトランダーPHEV

 さて、そんな走りを楽しんだあとにバーベキューを始めたわけだが、そこでは静まり返った山の中で交流100Vを最大1500Wまで使えるというオールマイティぶりを発揮する。

 今回は事前にバッテリーチャージモードで走り、バッテリーをおよそ80%まで充電した状態でキャンプを始めてみた。担当編集とカメラマン、そして僕の3人でそのバッテリーを使い切ってやろうとお湯を沸かしてみたり、ミニホットプレートでバーベキューしてみたりしたのだが、バッテリーはなかなか減らない。おかげでエンジンが再始動することもなく、小鳥のさえずりが聞こえる快適なキャンプが続いた。

 それからの数時間、色々と使ってみたのだがバッテリー残量は思った以上に減らない。編集者は電池を使い切るまで帰るつもりがないらしく、「電気が使えるのなら原稿でも書きましょうか、橋本さん!」とまで言う始末。便利なのも考えものである。

まずは運転席横にある「AC100V」スイッチをONにし、ラゲッジルームのコンセントに延長コードを差して外で準備した家電製品を使えるよう準備
見よ、この豪華なバーベキューの具材!松坂牛がこれでもかと……ない。「三河名物といえば『ぼてこ焼きそば』っすよね~」と笑顔でいう担当編集、はじめて殺意を覚えたのはここだけの話にしていただきたい。名古屋名物のみそ煮込みうどんがインスタントであることもご愛嬌だ
とはいえ筆者、カメラマン、担当編集全員が空腹だったため、ありがたく調理を開始。使ったミニホットプレートの定格消費電力は700Wと力不足は否めないが、ミックス野菜、豚肉とともに麺もちゃんと焼くことができた。食材はさておき、こうして屋外でも手軽に調理することができて満足満足。実は味もGOODでした
しかしながら大人3人のお腹は満たされず、間髪入れずに定格消費電力1250Wの電気ケトルでお湯を沸かし、インスタントのみそ煮込みうどんを食す。ついでにインスタントコーヒーを飲むこともできたし、外で電力を使えるってホント便利ですね
だがしかしである。いくら電力に余裕があるといっても、ここまできて原稿書かせることはないだろうと。便利なのか不便なのか分かったものじゃない(いえ、便利です皆さん)

 ちなみに、バッテリーのみで一般家庭の電力消費量の約1日分相当、エンジン発電を含めると最大で約10日分相当の電力供給が可能というこのクルマ。我々が試したちょっとしたキャンプくらいでバッテリーを使い切ることなど、到底できる話ではないのでありました。

 今回はキャンプという遊びの場で使わせていただいたわけだが、東日本大震災のときのように電力の復旧がいつになるか分からないという状況が今後発生しないとは限らない。もしもの際におけるアウトランダーPHEVの頼もしさは計り知れないだろう。これまで燃費性能、走行性能の面から魅力をお伝えしてきたわけだが、実際に長くアウトランダーPHEVに触れてみて、緊急時のバックアップとしても役立つことを肌身で感じることができた次第である。

 電気自動車(EV)のように航続距離を気にして充電器を探す必要がなく、ハイブリッドカーとしても使えること。ワインディングでは力強くスポーツカーのように楽しい走りができること。そして日帰りキャンプでは使い切ることさえ難しいほどの電力を使えること。このオールマイティぶり、そしてそうした多くの機能を使い切ることがもはや困難と思えるほどの懐の深さこそが、このクルマの最大の魅力だと感じた。

そして最後に一言。EVだと自宅に充電設備を整える必要があるが、エンジンで発電も行えるアウトランダーPHEVでは、こうしてフツーにマンションの駐車場に置くことができる。その気になればモーターだけで走れるし、充電電力がなくなったらエンジンを主体にしても発電機としても走行できる。使えば使うほど便利なクルマであることを実感した今回の旅でした

Photo:堤晋一

橋本洋平

学生時代は機械工学を専攻する一方、サーキットにおいてフォーミュラカーでドライビングテクニックの修業に励む。その後は自動車雑誌の編集部に就職し、2003年にフリーランスとして独立。走りのクルマからエコカー、そしてチューニングカーやタイヤまでを幅広くインプレッションしている。レースは速さを争うものからエコラン大会まで好成績を収める。また、ドライビングレッスンのインストラクターなども行っている。現在の愛車は18年落ちの日産R32スカイラインGT-R Vスペックとトヨタ86 Racing。AJAJ・日本自動車ジャーナリスト協会会員。