特別企画

【特別企画】カメラマン高橋学のスバル「レヴォーグ」を運転してみました

1.6GT EyeSightが気に入りましたね

 Car Watchでは、新車の撮影やSUPER GTに参戦するスバル(富士重工業)「BRZ」の参戦記などをお願いしている高橋学カメラマン。その高橋カメラマンが、最近気になるクルマとして挙げているのが「レヴォーグ」だ。松田秀士氏によるレヴォーグ プロトタイプのインプレッション撮影も高橋カメラマンにお願いしたのだが、撮影の最中も「んー、気になる」という言葉を何度となく発していた。

 それでは、ということでお願いしたのが高橋カメラマンによるインプレとなる本記事だ。レヴォーグは“ツーリングスポーツ”をウリとしたクルマ。多数の撮影機材を積み、各地(高橋カメラマンの場合は主にサーキット)に移動しなければならない高橋カメラマンは、想定ユーザーとしてのマッチング度も高いと思われる。ワゴンユーザーでもある高橋カメラマンのインプレをお楽しみいただきたい。


「レヴォーグ」を撮るだけでなく運転してみた

 「レヴォーグ」はプレカタログに「2014年4月発売予定」としか記されていないのに何故「レヴォーグを運転してみた」なのか? それは私の職業が自動車雑誌やモータースポーツ関連のカメラマンでもあるから、その機会恵まれたというのが理由です。Car Watchでも松田秀士氏による「レヴォーグ プロトタイプ」のインプレッションが掲載されていましたが、あのとき撮影を担当したのが私でした。ちなみに下記の記事が松田秀士によるインプレッションです。写真にも注目してもらえると、ちょっとうれしいです。

●スバル「レヴォーグ プロトタイプ」
http://car.watch.impress.co.jp/docs/news/impression/20140123_632001.html

 カメラマンの仕事はクルマをかっこよく撮ることや、運転するドライバーを車内から撮ること。そのため、1.6モデルの後席に乗って多くのシャッターを切っていました。そのとき思ったのは、「後席の乗り心地が硬いなぁ」ということ。その感想を覚えていたCar Watchの編集者から、「レヴォーグの試乗会が再度あるので、乗り心地に関してコメントしていた高橋さんが書いてみませんか」というオファーがあり、受けることにしました。運動性など深い部分についてはすでに松田秀士氏がCar Watch誌上で書いており、「荷物をたくさん積み込んでサーキットへ向かうなど、長距離を自走するカメラマンとしての視点でヨロシク!!」との注文でした。

 前回の試乗会の際、開発陣が後席の乗り心地の硬さを把握しており、改良に取りかかることを知らされていたので、個人的にもその進捗状況を確かめたい部分がありました。仕事用のクルマとして、そしてファミリーカーとしてのレヴォーグをプロドライバーとは違う視点でお届けできればよいなぁ、なんて思いながらツインリンクもてぎへ向かいました。

乗り込む前に、まずは仕事に使えるのかをチェック

 プロカメラマンの仕事は、多くの場合カメラバッグ1つでこなせるものではありません。三脚はもちろん、脚立であったり大型ストロボであったりなど、発注者からの多様な注文に的確に応える機材を持っていないと、次回の発注が期待できなくなります。とくにクルマを撮影する場合、現場でひらめいた注文も多く、いかに的確な撮影環境を作り出すかが腕の見せ所です。そのため、トランクの容量チェックには、よく登場するゴルフバックではなく、撮影機材などを多数詰め込んだ自分のバッグを試乗会場に持ち込み、確認してみました。

 最も大きいものはスーツケースで外径寸法は80×60×28cm。これは多くの航空会社が採用する国際線の受託手荷物の最大サイズ(3辺の合計が158cm)より一回り大きなものですが、それでも3個積めます。空港で頻繁に見かけるサイズのスーツケースなら4個を飲み込んでしまうでしょう。ちなみにレヴォーグはそのデザイン上リアウインドーが傾斜していますが、実は影響はわずかなもので、写真のとおり問題なく積めます。そのほかのパターンは写真にてご覧ください。

スーツケースのサイズは80×60×28cm。多くの航空会社が採用する国際線の受託手荷物の最大サイズより一回り大きなものですがご覧のとおり。一見するとリアゲートのガラスに干渉しそうに見えますがまったく問題ありません。なおこの場合トノカバーは外して積み込んでいます。荷室のフロア長は107cm、幅は108cmもあり現行「レガシィツーリングワゴン」とほぼ同サイズです
収納されているのは飛行機の機内に持ち込める最大サイズのバッグですが、トノカバーを閉めても天地方向に十分な余裕があります。多くの場合この状態での使用が可能でしょう。この状態でのバッグの高さは37cm
開口部の段差が極めて小さく、荷室内にリアシートのバックレストを倒すレバーもあります。壁面にフックもあり、この辺はステーションワゴンの使い勝手にこだわり続けて来たレガシィのDNAが確実に受け継がれているように感じます。なお、カーゴランプも壁面に設置されているのでトノカバー使用時にも使える半面、大きな荷物を積む場合は隠れてしまい、筆者の場合これは少々マイナスポイントです
低く構えたレヴォーグですがゲート開口部は極めて広く、またリアゲートは小さな力で開閉が可能でした。トノカバーは未使用時サブトランク内にきれいに収納できるのもポイント
フロアボード下のサブトランクは深く、可動式のパーテーションも備え、使い勝手もよさそうです
サブトランクの発泡スチロール部分を外し、スペアタイヤの収納も可能です。テンパータイヤは固定ボルトとともに用品として発売予定とのことです。筆者の場合フロアボード上部のトランクの収納力だけで十分だと思うので、ラリー撮影など悪路走行や緊急時に備えテンパータイヤを購入しようと思っています
リアシートのバックレストはリクライニング可能です。先に紹介した大型スーツケース収納の際には左の写真の状態で使用しました
後席の足下はパワーシート付きモデルでもつま先がシート下に入りますので足下に窮屈さは感じません

 全高を抑えスタイリングに抑揚を持つレヴォーグですが、ラゲッジルームの使い勝手や大きさに抜かりはなく、ツーリングワゴンに対するスバルのこだわりが随所に見える素晴らしいできだと感じました。もちろん私自身の仕事にもまったく支障はなさそうです。

GT-Sにするか、GTにするか?

 今回何より気になるのが、新開発のブルーボクサーエンジンである水平対向4気筒 直噴1.6リッターを搭載する1.6GTですが、今回の試乗車はすでにリアシートの乗り心地が改良されていて、リアシートに座る家族からは文句は出ないだろうと思う仕上がりになっていました。

 試乗コースは、ツインリンクもてぎのオーバルであったり、サーキット内の外周路であったり、はたまたサーキットコースであったりとグレードごとに違う所を走ったので比較はしにくいのですが、実は快適性においても18インチタイヤ+ビルシュタイン製ダンパー付きのGT-Sの方が好ましく、プラス26万円以上の価値はあると感じてしまったのが正直な所です。2月27日時点ですでに5673台もの先行予約のあるレヴォーグの受注構成比で、Sグレードを選ぶ人は1.6リッターモデルでは7割、2.0リッターモデルでは9割を占めているとのことで、初期受注もSグレードに人気が集中しているようです。

 ちなみにサーキットコースではアウディ「S3」をベンチマークとし開発したという2.0GT-Sに試乗しましたが、パワフルなのに刺々しさのない素直なドライブフィーリングはやはり魅力的でした。25年もの長きに渡り築いて来たレガシィのスポーティなイメージの正当な後継はこちらなのかもしれません。

 一方、現代のトレンドの1つでもあるダウンサイジング直噴ターボである1.6リッターモデルはほかのスバル車には搭載されていない新開発エンジン。今まで築き上げたブランドイメージとは違う新しい価値を発信する重要なモデルなのかもしれません。2.0リッターの走りに魅力を感じつつも、私個人としては本体価格、燃料代の安さ、燃費、アイドリングストップ機能など経済性を重視するので、1.6リッターモデルに軍配を上げたいと思います。

SUPER GTのBRZ GT300やインプレッサによるニュルチャレンジのドライバーを務める佐々木孝太選手の先導によるサーキット走行は2.0GT-Sで体験。素直で快適かつパワフルな走りに「コッチがいいなぁ~」なんて思いながらのドライブとなりました。先行する佐々木選手を追いながらの試乗はちょっとしたGTドライバー気分でした

これは絶対はずせない“EyeSight ver.3”

 先代レガシィ登場時にその性能に驚いた先進安全技術「EyeSight(アイサイト)」もレヴォーグではver.3に進化。既存のプリクラッシュブレーキや全車速追従機能付クルーズコントロールの進化に加え、3つもの新機能が追加されました。そのうちの1つ「アクティブレーンキープ」を今回の試乗で体感する事ができました。

 要は走行時に道路に引かれた車線を逸脱するのを防ぐ機能です。クルコン使用時には車線の中央を維持しながら走ります。またクルコン未使用時には車線をはみ出しそうになるとステアリングアシストが行われ車線内に車を戻そうとする機能です。どちらもサーキット内の短いテストではありましたがその効果は確実に体感できます。

 個人的に評価したいのはその介入の“加減”です。電子デバイスによる運転の自動化や直接介入には否定的な意見もあるようですが、個人的にはアイサイト最大の美点は、さらっと介入するものの決して余計なお世話に至らない点にあると思ってます。これはアイサイト登場時にも同じ様にも感じました。「走って楽しい車」を常に追い続ける、スバルならではのサジ加減こそがアイサイトの魅力だと改めて感じました。本当の実力は街に出てさまざまなシチュエーションで運転してみないと分からないというのが正直な所ですが、レヴォーグで外せない機能がこのアイサイトです。

新機能「アクティブレーンキープ」の体験はスタッフに同乗してもらい機能説明を受けながらの走行です。レーンの中心をブレることなく走り続けるこの機能はロングドライブの疲労軽減に大きく貢献してくれそうな予感

レヴォーグの開発最高責任者 熊谷PGMに聞いてみた

レヴォーグの開発を担当した富士重工業 スバル商品企画本部 プロジェクトゼネラルマネージャー 熊谷泰典氏

 脈々と受け継がれた魅力を備えながらも、どこかおおらかな大陸的雰囲気を併せ持つ現行型レガシィに移行できなかった先代ワゴン(BP型)ユーザーの受け皿にもなりえるし、実際開発時にはメーカーにもそういう意識はあったというレヴォーグ。先代のツーリングワゴンに憧れていた私としては、2.0NA、2,5NA、3.0NA、2.0ターボとワイドバリエーションを展開した先代に対し少々選択肢が少ないことと、私の中で未だにくすぶる「もう少し車体幅を狭くできなかったのだろうか?」という疑問を開発の最高責任者である熊谷氏に投げかけてみました。

 ボディーサイズに関しては「全国のスバルディーラーに話を聞くと、長さ(現行型レガシィの)4790mmに対する不満が圧倒的に多かった。それに対し1780mmの幅はギリギリではあるが許容範囲という反応でした。日本の5ナンバー枠の駐車場だと、出し入れの際長さで不便を感じる人が多いようです。それならば全長を短くした上で幅は平坦になりがちなワゴンのサイドパネルに豊かな表情を持たせ、デザイン的自己主張が強く1800mmを超える幅を使い立体的になってきているライバルに対抗するために1780mmいっぱいに使わせてもらおうと考えました」「あと、先代ユーザーの中には(現行型の)広さが必ずしもプラスではなく、室内の(ほかのパッセンジャーとの)一体感が失われた、との声もありました。室内空間に関してはその辺の“居心地”も意識しています」とのこと。

 選択肢に関しては、「1.6リッターに関してはとにかくレギュラーガソリンで性能を出すことにこだわりました。(SIドライブの)Iモードで最大限の燃費効率を出そうと考えて開発しました。その辺のこだわりは(価格の絶対値こそ上がったが)先代の2.0iオーナーにも満足してもらえる仕上がりだと思ってます」。そこには、新規購入、他のメーカーからの乗り替え、現行モデルからの乗り替えはもちろん、先代を気に入ってくれているユーザーを強く意識している熊谷氏の姿勢が強く感じられた。ステーションワゴンにおいてほかの国産メーカーが海の外ばかり見ているように感じる中、ちょっと嬉しいお答えでした。

率直に言って東京モーターショー登場時は少々装飾過多に感じていたレヴォーグですが自然光の中で見るとその造形は決してクドくはなく、この造形を得るための1780mmの車幅に納得せざるを得ない美しさです
1.6GT/1.6GT EyeSightはホイールキャップ付きですが、キャップを外してもきちっとデザインされたアルミホイールですので外してしまってもおかしくはなさそうです
佐々木選手によるオーバルコースの同乗走行体験もありました。プロドライバーによる超高速体験はレヴォーグを買ったところで決してできない貴重な体験です。SUPER GTも開幕直前です。今年こそチャンピオン!と強く願いながら楽しませていただきました

 なお国内専売を謳うレヴォーグですが、すでに欧州からも輸出を望む声はあがっているそうです。熊谷氏自身が「日本に輸入されている欧州ワゴンに対抗できる装備をすべて盛り込んだ」というレヴォーグが欧州で走る日もそう遠くないように思えますが、北米ですでに成功を収めているレガシィ、欧州車をもライバル視した日本向けレヴォーグ、このキャラクターの異なるステーションワゴンを同じメーカーで選べることは今だけのチョットした贅沢かもしれませんね。

 なお、レヴォーグは3月31日までに先行予約すると予約特典があるようです。東京モーターショーからレヴォーグを撮影してきているのですが、結構気に入ってる自分自身に気がつきました。

3月31日までに先行予約するとプレゼントされるiPad mini Retinaディスプレイモデル(Wi-Fi 16GB スペースグレイ)にインストールされている専用アプリケーション「LEVORG MAG」のキャプチャー画面

高橋 学

1966年 北海道生まれ。下積み時代は毎日毎日スタジオにこもり商品撮影のカメラアシスタントとして過ごすも、独立後はなぜか太陽の下で軽自動車からレーシングカーまでさまざまな自動車の撮影三昧。下町の裏路地からサーキット、はたまたジャングルまでいろいろなシーンで活躍する自動車の魅力的な姿を沢山の皆様にお届けできればうれしいです。 日本レース写真家協会(JRPA)会員