日下部保雄の悠悠閑閑

2台のSUV

三菱自動車工業「エクリプス クロス」

 急速に伸びているのはSUV、それも“コンパクトSUV”と呼ばれるクラスが著しい。コンパクトといっても守備範囲が広く、「ヴェゼル」などのコンパクトから、海外で“コンパクトカテゴリー”と呼ばれているSUVがそのまま日本に入ってくるので混乱する。これらはわれわれのコンパクトの概念からするとかなり大きい。もともとSUVは背が高くて大きく見えるのでなおさらだ。それにクロスオーバーなんてものもあって、クルマの使い方が多様となって境界線がはっきりしなくなっている。

 そんなことを思いながら、最近乗った“コンパクトSUV”をつらつら書いてみたい。

 1つは三菱自動車工業の「エクリプス クロス」。1.5リッターのターボエンジンのみで、駆動方式はFFと4WDが選択できるが、今回ハンドルを握ったのは4WDだ。このエンジンは完全な新開発ではないが、かっての「4G63」を思い出させるようなトルク感と回転フィールがあって懐かしい。「ランサーエボリューション」のような爆発的なパワーではないものの、あの名機が帰ってきたようで嬉しい。

 240N・mのトルクは重量1550kgを引っ張るには十分で、過剰でなく不足でもないところが使いやすい。トランスミッションはCVTだが、うまくチューニングされており、全開にしない限りはいわゆるラバーバンドフィールはほとんど感じない。静かで突き上げが少ない乗り心地もびっくりだ。サイズはホイールベース2670mmに全長4405mm、全幅1805mmだから、日本でコンパクトと呼ぶには大きいが、視界もよくて走っている限りは大きさはそれほど気にならない。磨きがかかった4WD(S-AWC)は雪上で体験済で、曲がりやすくトラクションがよくかかる。PHEVはまだラインアップされていないが、電動化の第一人者を自任する三菱自動車なのでやがて追加するだろう。

 さて、もう1つの“コンパクトSUV”はボルボ「XC40」だ。新しいCMA(コンパクト・モジュラー・アーキテクチャー)と呼ばれるプラットフォームはよくできていて、無理をしたところがない。ハンドリングはまるでスポーツカーのようでこちらもびっくりした。しなやかだがロールが少なく、シュンと曲がっていく。試乗したのが「R-Design」という20インチ(!)タイヤを履いたモデルだったが、タイヤの寄与率よりもサスペンション・ジオメトリーが秀逸なんだろう。乗り心地も快適だ。エンジンは2.0リッターターボ。90シリーズや「XC60」に搭載されているものと基本的に同じエンジンでトルクは300N・mもある。重量はおよそ1700kgぐらいだからその力強いことは予想以上だった。使いやすいパワートレーンだが正直自分にはtoo muchに感じられたほどだ。サイズはホイールベース2700mmに全長4425mm。全幅は1875mmとしてけっしてコンパクトではない。あまりに軽快に動くのでドライビングは楽しかったが、狭いところでは物理的なサイズはキチンと把握したほうがよさそうだ。

ボルボ「XC40」

 この2台で最新のSUVの実力を垣間見ることができた。グローバルで伸びている市場だけにメーカー間の競争も激しく、生半可なことをやってたんじゃ勝ち抜けないという危機感の表れだ。ちなみにエクリプス クロスは253万2600円から、XC40は389万円からはじまる。

 価値ある2台に、次の自分のクルマの選択肢にSUVもありかな、と考える今日このごろなのである……。

日下部保雄

1949年12月28日生 東京都出身
■モータージャーナリスト/AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員/16~17年日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員
 大学時代からモータースポーツの魅力にとりつかれ、参戦。その経験を活かし、大学卒業後、モータージャーナリズムの世界に入り、専門誌をはじめ雑誌等に新型車の試乗レポートやコラムを寄稿。自動車ジャーナリストとして30年以上のキャリアを積む。モータースポーツ歴は全日本ラリー選手権を中心に活動、1979年・マレーシアで日本人として初の海外ラリー優勝を飾るなど輝かしい成績を誇る。ジャーナリストとしては、新型車や自動車部品の評価、時事問題の提起など、活動は多義にわたり、TVのモーターランド2、自動車専門誌、一般紙、Webなどで活動。