日下部保雄の悠悠閑閑
ポルシェ・パレード 2018 in 鈴鹿
2018年5月28日 00:00
ポルシェは世界中に熱烈な愛好者がいる。独ポルシェAGの公認クラブだけでも世界60カ国に620あり、その会員数は約18万人にも達する。日本にも全国に27の支部があり、約1100人の会員が在籍している。それが、ポルシェ・クラブ・ジャパンである。
そして、そのポルシェ・クラブ・ジャパンが主催し、全国のポルシェ・クラブ各支部が一堂に会するポルシェ・パレードがゴールデンウィーク明けの鈴鹿サーキットで開催された。ポルシェ・パレードは2年に1度行なわれ、最近は鈴鹿サーキット開催が定着している。
このイベントは実に3日間におよぶもので、内容は鈴鹿サーキットフルコースのフリー走行、ドライビングクリニック、サーキットレッスン、サーキットタクシー、ファミリー走行、コンクールエレガンス、支部対抗カート大会、パーティ、そして参加する全ポルシェがサーキットを埋め尽くすパレードランなど、多数のイベントが組まれている。つまり、好きな自分のポルシェで思う存分走り尽くそうというイベントなのだ。
クラブマンたちは本当にポルシェが好きで、そして、それを走らせるのが大好きだ。日常的に忙しい毎日を送っているオーナーも、鈴鹿で非日常のポルシェとの付き合いを満喫するわけだ。
実は自分にとってポルシェはなんとなく苦手意識があった。以前といってもかなり前だが、テストのためにポルシェ「911」をサーキットでドライブした時、お尻がムズムズするようなリアエンジンの特性に悩まされた。フロント荷重は小さいので、ハンドルを切ればスーとノーズが入るが、FRのドライブ感覚でアクセルを踏むとリアが滑っていこうとするのだ。嫌な汗をかいた。この最初のデートで苦手意識ができてしまったようだ。
ミッドシップもそうだが、後輪荷重の大きなクルマに乗るときはドライビングを変えなければならない。しかし、それを掴むとクルマはドライバーを中心に旋回するので、もうやめられない。昔からのポルシェ乗りはここにはまったのだと思う。それに、RRの特徴でもある制動力の高さ、そして強力なトラクションはポルシェの大きな魅力と武器だ。
その後、ポルシェの面白さをなんとなく体得できたような気がするし、低重心のフラット6エンジンを搭載しているポルシェだからこその魅力も理解できたが、やはりポルシェをサーキットで乗る時はちょっと緊張する。クルマも人も最初のお付き合いは大切なのである。やっぱり……。
閑話休題。ちょっとだけサーキットの話。
昔のレーシングコースは自然の地形を上手に活かしながらレイアウトされていた。それだけにセーフティゾーンなどの安全マージンも少なく、崖や壁がコースのすぐ脇というのも珍しくない。ドイツのニュルブルクリンクやベルギーのスパなどは典型的な例だ。コースの改修によってかなり安全になってきたが、基本は変わらない。そして、そんなコースほど中速や高速のコーナーが深いチャレンジングなコースレイアウトになり、ドライバーを燃え立たせる。鈴鹿サーキットはそのチャレンジングなコースの1つだ。
何が言いたくてサーキットの話を持ち出したかと言えば、そのチャレンジングな鈴鹿で延べ3時間半におよぶフリー走行をポルシェで走り、大きなトラブルもなく終了したのはクラブマンの意識の表れだろう。速度差はドライバーの経験やクルマ(新旧のリアエンジンポルシェや「ケイマン」「パナメーラ」「カイエン」「マカン」といった全てのポルシェ)によってそれぞれだが、それを意識して多数のポルシェがサーキットを走っての結果だから素晴らしい。
その中を縫うように、影山正美、荒聖治、上村優太の各選手がカップカー、GT3、パナメーラ E ハイブリッドによるサーキットタクシーで走り、さらに福田良、坂本祐也、吉田広樹の各選手によるドライビングクリニックもあり、なかなか豪華なイベントも同時進行していく。
最終日はあいにくの雨だったが、このイベントの呼称にもなったビッグイベント、パレードランが行なわれた。全国から参加した26の支部から集まった297台の新旧ポルシェが鈴鹿のフルコースを1周パレードする。これだけのポルシェが集まると壮観な眺めで、3日間の最後を飾るにふさわしいエンディングだった。