日下部保雄の悠悠閑閑
ドナドナされていった「フィエスタ」と、ニューカマーのND型「ロードスター」
2018年12月31日 00:00
先代の「フィエスタ」を含めると3台を乗り継いできたが、手になじんだフィエスタと、とうとう別れることになった。
中古で手に入れた最初のフィエスタはごく普通のコンパクトカーだったが、ドイツ製らしく、ガッチリしたボディとしっかりとした足腰を持っており、華はなかったがフォード車らしくよく走ってくれた。
ちょっと話が逸れるが、もともと手のウチに入る小さなクルマが好きで、初代のフィアット「パンダ」やルノー「サンク」に乗っていたこともある。もっともどちらも引き取った初日に謎のエンストを経験した。あろうことか、2回ともツレアイが1人で運転していた時にわが家の前で動けなくなり、半べそかいて渋滞の列を尻目に帰ってきた。しかし、エンジンが止まったのはこの時だけで、それ以来1回もスターターが回らなくなったことはない。さすがイタ車、フランス車と妙に感心したものだ。
パンダはトラックのような乗り心地だったが、ジウジアーロによるデザインやハンモックシートなどが斬新で、ピョンピョン跳ねながらも楽しかった。サンクはコンパクトカーとは思えない乗り心地にさすがフランスと感嘆し、欧州車のヘッドライトの明るいことにも感動した。国情の違いとはいえ、クルマは国ごとに違うもんだと感じ入った若いころの思い出である。
さて2台目のフィエスタはこのコラムでも取り上げたことがあるが、何回もエンジンオブザイヤーを取った1.0リッターターボエンジンを積み、リッターカーであることを忘れさせてくれる痛快な加速力を持っていた。フォード・ゲトラグ製のデュアルクラッチ6速トランスミッションもシフトレバーに付いたサムスイッチを操作するとマニュアル感覚で面白かった。
実はこの世代のフィエスタは2台乗り継いだほど気に入っており、冬の時期にスタッドレスタイヤを履いて女神湖までドライブスクールのスクールカーとして連れて行き、帰りは4人の大人とその荷物を満載して(アンダートランクが重宝した)帰ってきたこともある。実用性も高かったのだ。
俊敏でスポーツコンパクトの範のようなクルマだったが、高速道路である速度以上になった時だけリッターカーであることを思い出した。
いろいろな思い入れがあり、家族にも重宝されていたフィエスタだが、スポーツカー+マニュアル車に乗りたい願望が徐々に強くなり、家族の後押しもあってついに決断してしまった。ND型「ロードスター」にターゲットを絞っていたが、新車には手が出ないので、知り合いを通じて探してもらうことにしたのだ。
それでも1か月ほどでついに希望に近いNDが見つかりわが家にやってきた。いわゆるNDの前期型で、もちろんマニュアルである。実はロードスターはNA型、NC型とも少しだけど家にあったことがある。これで3台目のロードスターになるが、どの時代でも楽しかった。スタビリティがどうのとか言い始めるとキリがないが、ドライバーとの一体感を骨の髄まで沁み込ませて作ったロードスターは稀有の存在だ。
まだわが家に来てから間がないが、マニュアルシフトの感覚を楽しみつつ、「軽快なフットワーク」とはロードスターのためにあるというハンドリングを満喫している。都市部ほどライトウェイトスポーツカーをというのは前から思っていたことだが、NDは東京でも使いやすく乗りやすい。
サイドブレーキが手になじむ位置にあるのも嬉しい。危険回避の最後の手段の1つにあるのはサイドブレーキだと思っているので、最近の電動パーキングブレーキや足踏みパーキングブレーキは理屈ではよく分かるけど、なんとなく不安になる。
もちろん欠点もある。走ると幌をかけていても、オープンと変わらないほどやかましく、2人乗ると如実に変わる加速力とか、軽量で横風の影響を受けやすいとか、いろいろあるあるけど、やはり楽しさの方が何倍も大きい。当分はロードスターとの生活にワクワクしそうだ。
NDには毎日ニヤニヤしているのだが、ドナドナされていったフィエスタの姿を思い浮かべるとちょっと悲しい。フィエスタは価値を分かっている人に引き取ってもらえると嬉しいと心から思う。元気でね。