日下部保雄の悠悠閑閑
スタッドレスタイヤの季節
2019年1月7日 00:00
スタッドレスタイヤの季節がやってきた。先日の鳥取、島根旅行で借りたレンタカーはすでにスタッドレスタイヤを履き、ウチのクルマもスタッドレスタイヤに交換する時期になっているが、2018年は例年よりもちょっと出遅れてしまった。いつもは12月に入ってしばらくしてから履き替え、4月の初旬までスタッドレスタイヤを履いている。東京に住んでいると雪に遭遇することはほとんどないが、それでも山間部に行くことがよくあるので、履いていると安心だ。
2018年、出遅れたのは車両の入れ替えなどで交換のタイミングを失ってしまい、いつもお世話になっているタイヤガーデンは予約がいっぱいで年内の履き替えは無理。ということで2019年になってしまった。その間に東京に雪が降らないことを祈るばかりである。
スタッドレスタイヤを眺めると、その大きさにびっくりする。写真は今回の女神湖で使う245/35 R19というビッグサイズだが、夏用タイヤよりも大きく、縦積みにするとその高さに驚かされる。
かつてのウィンタータイヤは細くして、ブロックを大きくし、面圧を高くしてスタッドが効果的に働くようにした。標準的なサイズで60~70本、ラリー用では120本ぐらいまでのスタッドを打ち込んで使用していたので、スタッドの保持を中心にウィンタータイヤ作りが行なわれていた。面圧を高くするためにタイヤが細くなっていたのだ。
スタッドレスタイヤでは考え方が違い、ミクロ的に引っ掻いたり、氷表面の水を吸う吸水作用を行なったりするため、トレッド面のエッジ量を増やし、吸水面積を増やすために接地幅が広がっている。
では、スタッドレスタイヤは展開幅が広い方がいいのかという疑問が頭をもたげる。以前インチアップしたものと標準サイズのスタッドレスタイヤを同じ条件、同じクルマで履き比べてみた。当然サイズが大きくなるので展開幅も広がる。滑りやすい氷の上では繊細にグリップ変化をするため、インチアップの方はコントロール性が落ちたが、氷の制動面では少しだけ有利だったと思う。だが、雪面を含んだ路面では標準サイズの方がコントロール性がよく、グリップ変化も小さかった。つまり、トータルバランスでは標準サイズがいい結果になった。
随分前のテストだったので詳細は忘れたが、基本は変わらないと思う。タイヤは前後方向だけではなく、さまざまな方向から力を受ける。そのため単純にグリップ比較はできないが、冬季の競技などではドライバーの使い方次第でインチアップも効果があると思う。またチャンスがあったら最新のスタッドレスタイヤでテストしてみたい。
先ほどの245/35 R19は2019年の女神湖氷上ドライビングパークで使うスタッドレスタイヤで、アウディ「RS 3」に履く予定の横浜ゴム製「アイスガード 6」だ。本当に幅広でデカイ。それでなくともハイパワーAWDのクワトロにはワイドサイズのスポーツタイヤを履いているが、スタッドレスタイヤのラインアップの関係でワンサイズ広いタイヤを履くため、前述のテスト結果を少し反映した実験になるのではないかと興味津々である。
ところで、タイヤサイズはメートル法なのにホイール径だけはインチ(ヤード・ポンド法)だ。なぜだろうと思って調べたら、昔は米国のインチ表示にならってすべてインチ表示だったようだ。そして、構造の進化で扁平化が進み、82%の扁平率のタイヤを開発したのがメートル法の創始国、フランスだったのでミリ表示になったとされる。ラジアルを開発したミシュランは当初からミリ表示をしていた。当初は想像のように幅もホイール内径もミリで表示されていたらしいが、タイヤの互換性で混乱したためにホイール径だけはインチに戻されたようだ。
ものの本によるとしばらくさまざまな表示方法があり、タイヤ開発もより優れたものを求めてチャレンジしていた時代でもあったため、使用する側は迷い、作る側は試行錯誤の連続だったようだ。クルマの進化とタイヤの進化はリンクしており面白い。
で、目下の悩みはND型「ロードスター」にスタッドレスタイヤをいつ履かせるかのタイミングである。もう少しオリジナルタイヤを楽しみたいような……。今回はタイヤの話でした。