日下部保雄の悠悠閑閑

北の国から ~山形編「SUBARU テックツアー」~

山形県で行なわれた「SUBARU テックツアー」で約200kmを走ってきた

 スバルを深く知るためのイベント、それが「SUBARU テックツアー」。2019年最初のテックツアーは山形県を舞台に行なわれた。山形の北、秋田県に近い酒田から山形駅までの都合200kmにわたる雪上ドライブである。

 前日のプレゼンに続いて、当日は酒田から山形駅までいくつかあるチェックポイントを選んで、ちょっとした小旅行を試みる。

 実は山形の雪には思い出がある。日本は雪の多い地域だが北海道、本州の日本海側、長野なども雪質が違うのではないかとの想定の下、大試走をやったことがある。もちろん月山も含めて山形にも足を伸ばした。

 日本中どこに行っても雪は雪だが、気温の変化や道路状況で地域によって雪は微妙に変化した。北海道の乾いた雪や日本海側の水気の多い雪など結構多彩だ。個人的には山形の雪は水分が多く、しかも時間によって気温の差もあって、さまざまな雪を作り上げるように思う。轍やシャーベット状の雪もできやすく、アイスバーン性能だけでなく、パターンによる雪掃け性能も重要で、いろいろな路面が混在してなかなか手ごわい。

 あいにくと言うか幸いと言うか、試乗当日は気温が上がり、今回の雪上ドライブではスバル4WDの底力を試すチャンスがなかったのは残念だったが、轍などでその片鱗を見せた。

 チェックポイントは出羽三山神社と肘折温泉、そして銀山温泉の3つのポイントを予定してみた。

 出羽三山は月山、湯殿山、羽黒山の3つの霊山の総称で、羽黒山の近くにある出羽三山神社を参拝すると3つの霊山をお参りするのと同じご利益があるという。

 ちょっと話は逸れるが、その昔ダイハツチームにお世話になっていたとき、デビューしたてのラリー車で出羽三山山岳ラリーに優勝したことがあり、自分にとってもなじみ深い地域だ。ラリーのプロセスはよく覚えていないが、山形とは何かと縁がある。

 出羽三山神社まではさすがに雪が豊富で、狭い山道を「フォレスター」でグイグイと上っていく。スバルならではのオフロードに特化した「X-MODE」もあるが、モードチェンジするまでもなくノーマルモードでスイスイと安定して走る。

出羽三山神社までは「フォレスター」のステアリングを握った

 言い忘れたが、今回のパートナーは同じモータージャーナリストのスーザン史子さん。「パワースポット、ぜひ行きましょう!」と盛り上がっているうちに難なく到着してしまった。

 雪で真っ白になった駐車場に「この辺でいいのかな?」という感じで適当にフォレスターを駐車し、雪深い出羽三山神社に参詣する。踏み固められた雪道を歩くと本殿には10分ほどで到着し、室内でお参りする。大きな神社だけに朝から大勢の巫女さんや神主さんが準備で忙しそうだ。霊験あらたかな心静まるパワースポットだ。

出羽三山神社の本殿に続く入り口をくぐると、そのまま室内を通ってお参りすることができた

 残念ながら国宝の五重塔に行くのは雪の中40分も歩くと聞き諦めたが、グループの中には近道して威風堂々と雪の中に建つ五重塔を見学できた人もいたようだ。

出羽三山神社は真っ白な雪に包まれていて、五重塔の見学は残念ながら諦めた

 出羽三山神社を後にして次は肘折温泉に向かう。肘折温泉は1200年の前、肘を折った老僧がここの風呂に入り、治癒したことから肘折温泉は始まったと言われる。

 一部シャーベット状の雪道をドライブしながらメインルートから外れて、往復40分の山の中にある肘折温泉に向かう。

 フォレスター「Advance」には標準装備でドライバーモニタリングシステムがあり、疲れてくると警告を発するが、楽しくドライブしているうちに肘折希望(のぞみ)大橋のループ橋を通過する。

 ここは2012年に崩落してルートが遮断されてしまってから、半年で急遽作られたコンパクトにまとまったループ橋だ。吹きさらしの急カーブの橋の雪だけに、アイスバーンに注意しなければならないが、何気なく通過してしまった。

 狭い肘折温泉街で迷っているうちにお勧めの湯、上の湯の前に出てしまったので、そのまま温泉に直行する。ここはズーッと湯に浸かっていたくなるような少しグリーンがかった透明度の高いよい温泉でした。

 ちなみに、スバルではこのお湯に入ると原稿が早く書けると言っていたが、その兆候は残念ながら、ない……。

肘折温泉では上の湯で日帰り入浴を楽しんだ。原稿の執筆速度は……

 昼食後にはフォレスターから「XV」に車両を変更。ハッチバックタイプだが最低地上高は200mmもあり、大抵の積雪地は走破できる。4WDシステムはフォレスターと同じアクティブトルクスプリットタイプで、前後輪のトルク配分は60:40をベースに状況に応じて可変させる。シャーベット路面や轍路でもハンドルをしっかり握っていればドライバーの意思通りに走ってくれ、高い最低地上高で深雪でもフロア干渉によるスタックをかなり回避できるのは頼もしい。走っていれば普通の乗用車と変わりはなく、1800mmの全幅も雪で狭くなった道でも走りやすい。

昼食後は「XV」に乗り換え、山形駅を目指す

 XVでは銀山温泉に寄ってみる。国道13号から横道に逸れて銀山温泉までは往復1時間かからない。温泉街は道が狭いので、温泉街に入る橋の手前でクルマを降りて温泉街を眺める。ここは小さな銀山川の両岸に大正ロマン漂う旅館街が並び、景観の維持に尽力しているので独特の風情があり、そこに惹かれる外国からの観光客も多い。

大正ロマン溢れる温泉街の銀山温泉に立ち寄り。雪の温泉街に川がよく似合う

 温泉街の散策にも心惹かれたが、早々に山形駅まで国道と高速道路を使ってひた走った。

 XVは立ち居振る舞いに派手なところはなく、ドライバーへのインパクトも薄いが、いざとなった時に頼りになる縁の下の力持ちのようなクルマだ。特に雪国では頼りになるだろう。

 いつもいろいろな発見があるSUBARU テックツアーだが、雪の中の日常をトレースでき、通常の試乗とは違った経験ができた。ま、今回は観光地レポートでしたが……。

日下部保雄

1949年12月28日生 東京都出身
■モータージャーナリスト/AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員/16~17年日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員
 大学時代からモータースポーツの魅力にとりつかれ、参戦。その経験を活かし、大学卒業後、モータージャーナリズムの世界に入り、専門誌をはじめ雑誌等に新型車の試乗レポートやコラムを寄稿。自動車ジャーナリストとして30年以上のキャリアを積む。モータースポーツ歴は全日本ラリー選手権を中心に活動、1979年・マレーシアで日本人として初の海外ラリー優勝を飾るなど輝かしい成績を誇る。ジャーナリストとしては、新型車や自動車部品の評価、時事問題の提起など、活動は多義にわたり、TVのモーターランド2、自動車専門誌、一般紙、Webなどで活動。