日下部保雄の悠悠閑閑

空を飛んでみたい!

静岡ホビーショーの会場に、「Bit」という1人乗りヘリコプターが展示されていた

 このところ気持ちのよい気候が続いている。愛車の「ロ―ドスター」もソフトトップを開けて開放感的な気分になっている。

 ところで、先日の静岡ホビーショーの展示会場に1人乗りのヘリコプターが展示されており、ちょっとびっくりした。

 電動モーターを採用する二重反転プロペラで非常にコンパクト。ヘリコプターは不可避的に持つメインローターの反力を防ぐためにテールローターが必要になるが、メインローターを2つ持ち、二重反転にすることでお互いのトルクを打ち消し合い自転しなくなる。

 二重反転プロペラは古くからある発想だが、機構が複雑化して実用化するのが難しいと思われていた。

 第二次世界大戦中に日本が少量生産した水上戦闘機「強風」は、試作段階ではプロペラの強大なトルクでまっすぐ離水することが難しく、二重反転プロペラを使っていた。しかし、当時の技術ではモノにならず、量産型では通常の3翅タイプに変更された。もっとも、強風が実用化された時は水上戦闘機の役割はすでに終わっており、苦心して開発された強風は、後の局地戦闘機「紫電」「紫電改」の母体になった。

「強風」の模型

 現在でも二重反転プロペラは実用化しているところが限られているが、この1人乗りのマイクロヘリは、ラジコンヘリで大きな実績を残している広島のHIROBO(ヒロボー)が開発中のモノ。ヒロボーは産業用ラジコンヘリですでに二重反転プロペラを実用化しており、この技術があってテールローターを必要としないコンパクトな1人乗りヘリコプターが可能となった。

 また、ドローンのような固定ピッチローターではなく、より高度な可変ピッチローターを採用して、安定性は段違いに向上しているとされている。この技術も同社の産業機材がベースになっており、すでに実績のある技術だ。

 人が乗って空を飛ぶとなると、無人機とは違って安全性のための膨大なコストと高度な技術が必要だ。実用化への壁が高いと想像するのは難しくないが、コンパクトな乗り物で空を飛ぶのは人類の夢でもある。

 日本の有人機はスバルや三菱重工業、ホンダといった大きな企業が商品化しているが、最小単位の1人乗りヘリコプターは初めてではないだろうか。いつかバイク感覚で空を飛ぶことができれば、産業にも大きな変化が生まれる可能性を秘めている。

 ドローンの本格的な運用が見える中で、このように有人機が飛ぶようになると空の法整備も現実的な対応をしていかなければならないだろう。

 ヒロボーは「Bit」と呼ぶこの有人ヘリをすでに2012年に発表しており、実現に向けて準備を進めているようだ。操縦もマニュアルということは難しそうなので、クルマで言うところの自動運転レベル3ぐらいになるのかもしれず興味深い。

Bitの説明

 でも、考えるだけで楽しくなり、夢のある話だ。オープントップのロードスターに乗りながら、真上を1人乗りヘリコプターが飛ぶ姿を想像してみた。

日産が「プロパイロット2.0」を発表した

 一方で日産から「プロパイロット2.0」が発表された。今年の秋にマイナーチェンジする「スカイライン」から搭載される計画だ。カーナビに目的地を入れれば、高速道路に合流した時点でナビ連動ルート走行を始める。高速道路ではジャンクションも含めて道案内をするというので期待度は高く、同一車線内のハンズオフを可能にしている。

 プロパイロット2.0の作動中に前走車に追いついた場合には、制限速度内ならスイッチで前後を確認して追い越しも可能だ。条件付きで一歩ずつ運転主体をクルマに任せる場面が増えてきた。

 高度な技術を見て聞いて好奇心に高揚した時間であった。さて、頭が疲れた。マニュアルトランスミッションをガチャガチャやりながら帰るとするか。

日下部保雄

1949年12月28日生 東京都出身
■モータージャーナリスト/AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員/16~17年日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員
 大学時代からモータースポーツの魅力にとりつかれ、参戦。その経験を活かし、大学卒業後、モータージャーナリズムの世界に入り、専門誌をはじめ雑誌等に新型車の試乗レポートやコラムを寄稿。自動車ジャーナリストとして30年以上のキャリアを積む。モータースポーツ歴は全日本ラリー選手権を中心に活動、1979年・マレーシアで日本人として初の海外ラリー優勝を飾るなど輝かしい成績を誇る。ジャーナリストとしては、新型車や自動車部品の評価、時事問題の提起など、活動は多義にわたり、TVのモーターランド2、自動車専門誌、一般紙、Webなどで活動。