日下部保雄の悠悠閑閑

アルファ ロメオ

アルファ ロメオ「TZ2」のミニチュア

 アルファ ロメオとはなんと繊細で艶っぽいネーミングだ。そのブランドマークからして、イタリアミラノ市の紋章をベースにしたミステリアスなもので独特の雰囲気を出している。

 イタリアのコーチビルダーが元気だった頃には、多くの憧れの名車が生まれた。アルファ ロメオも、ベルトーネ時代のジウジアーロがデザインしたと言われる実験的作品「カングーロ」や、ザガートの手による「TZ」シリーズなど数多くの名車を生み出していた。TZはロードカーとレーシングカーがオーバーラップしていた時代のアルファ ロメオ最後の作品だ。

 写真のミニチュアは1965年のル・マンに参加した「TZ2」。時折引っ張り出して眺めては、悦に入っている。鋼管スペースフレームのTZをベースとしてレース専用車として開発された、1.6リッターFRのレーシングカーだ。ちなみに、この年にAutodelta SpAから1台だけエントリーしたBussinello/Rolland組の41号車は217ラップして、ベアリング・トラブルでリタイヤしている。

TZ2のミニチュア。当時はレギュレーションでスペアタイヤは必携で、登録ナンバーも付いていた

 アルファ ロメオは戦前、手作りに近い手間暇をかけた高級スポーツカーを作っていたが、戦後はスポーティで高性能な量産メーカーとして生まれ変わった。「ジュリア」もその流れの中で「ジュリエッタ」の上級車として1962年にデビューし、アルファ ロメオの代表作の1つとなった。

 アルファ ロメオも時代の流れに翻弄されたが、戦後のアルファ ロメオを代表するジュリアが待望のFRで復活したのは喜ばしい。日本導入は2017年だったが、2019年にディーゼルが加わってジュリアのラインアップが広がった。このディーゼルは「ステルヴィオ」にも搭載される。

復活した「ジュリア」。個性的な顔で意外とノーズが長い

 フィアットグループは古くからディーゼルに注力しており、今では一般的になっているコモンレールディーゼルを初めて量産化したことでも知られている。日本メーカーも、スズキのように欧州輸出向けにフィアットから供給を受けていたところもある。

 ジュリアとステルヴィオに搭載された最新の2.2リッターディーゼルターボは、アルミブロックで圧縮比は15.5:1。したがって、軽量にできておりガソリンエンジンと比べても遜色がなく、車両重量でもほぼ同じ装備のガソリン車と10kgしか変わらない。軽量化の努力は、カムシャフトの中空化やフライホイールの軽量化などにまでおよんでいる。ちなみにエンジンブロックは27kgと軽く、前世代のディーゼルより半減しているという。

 ターボチャージャーは電子制御バリアブル・ジオメトリー(いわゆる可変翼)を使い、軸受けにもボールベアリングを採用して抵抗を極力下げて、低回転からのレスポンス向上を狙っている。ディーゼルはどうしても微低速回転からのレスポンスが鈍くなる傾向があるのでその弱点を回避しようというものだ。

 ジュリアのエンジン出力は140kW(190PS)/3500rpm、450Nm/1750rpmと大きなトルクで、アクセルの動きに機敏に反応する。ディーゼルの中でもトップレベルのレスポンスを誇る。アルファ ロメオらしく技術にこだわりを見せるのは伝統だろうか。

ジュリアの2.2リッターディーゼルターボエンジン。最高出力は190PS/450Nm

 Dレンジで走るとアクセルを踏みこんだ場合は4000rpmぐらいでシフトアップする。イエローゾーンは4500rpmからだが、シフトをマニュアル操作しないとそこまでは回らない。

 さらにDynamicモードにすると、エンジン回転数を高めに保って変速制御するので、ディーゼルの太いトルクをさらに味わえる。アクセルに対して常にスタンバイ態勢にあるが、無理やり感がないので、日常でも積極的に使えそうだ。

 排出ガス浄化には一般的なディ-ゼル酸化触媒(DOC)、DPF、そして選択式還元触媒(SCR)でAdBlueを噴射する方式をとっている。

 ジュリアのハンドリングはクイックで、ロック・トゥ・ロックは2回転と3分の1で済んでしまう。最初はクイックすぎるかなと思っていたが、慣れてしまうと操舵量が少なくて山道も楽に運転できる。4輪のタイヤがしっとりと路面を掴むのが巧みで、サスペンションも路面の凹凸にうまく反応して姿勢を収める。リアの安定性が高いのはもちろんだが、操舵輪であるフロントもグイグイと曲がっていくので、前後のバランスがよくとれている。タイヤはピレリのランフラットだったが、横剛性が高いのはもちろん、突き上げもまろやかで乗り心地もよく、ジュリアとのマッチングは抜群だった。

 カーナビは装着できないが、iPhoneなどのスマートフォンとつながるので、それほど困ることはない。それでもというユーザーのために、現在オプションを検討中とのことだった。

ジュリアよりさらに濃い顔のSUV「ステルヴィオ」

 一方、ステルヴィオはスポーツブランド、アルファ ロメオらしい乗り味でSUVらしからぬステアリングの反応。グイグイと走りたくなる感覚だった。エンジンは基本的にジュリアと共通だが、ステルヴィオの方が220kg重いため、ブーストなどの電子制御部分の変更で、154kW(210PS)/470Nmに出力アップされている。ZFの8速ATとの相性もよく、スポーツカーのように軽快に走る。

ステルヴィオのエンジン。ジュリアと同じ2.2リッターディーゼルターボエンジンだが、最高出力は210PS/470Nmにアップされている。そのためか、ジュリアと比べるとエンジンカバーのアルファ ロメオの文字が赤くなっている

 でも、どちらが好みかと言えば、背の低いジュリアの方がボクにはなじむな。世の中の販売シェアは8割がたSUVだと言われても、なかなかその気になれないのは世代のせいであろうか。

日下部保雄

1949年12月28日生 東京都出身
■モータージャーナリスト/AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員/16~17年日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員
 大学時代からモータースポーツの魅力にとりつかれ、参戦。その経験を活かし、大学卒業後、モータージャーナリズムの世界に入り、専門誌をはじめ雑誌等に新型車の試乗レポートやコラムを寄稿。自動車ジャーナリストとして30年以上のキャリアを積む。モータースポーツ歴は全日本ラリー選手権を中心に活動、1979年・マレーシアで日本人として初の海外ラリー優勝を飾るなど輝かしい成績を誇る。ジャーナリストとしては、新型車や自動車部品の評価、時事問題の提起など、活動は多義にわたり、TVのモーターランド2、自動車専門誌、一般紙、Webなどで活動。