日下部保雄の悠悠閑閑

「レンジローバー イヴォーク」雑感

アマンダ・ヒルズで行なわれた「レンジローバー イヴォーク」の試乗会に行ってきた

 2011年に発売され、プレミアムコンパクトSUVというジャンルを確立したランドローバーの「レンジローバー イヴォーク」がモデルチェンジされ、その試乗会に行ってきた。開催場所は厚木のアマンダ・ヒルズ。日産のテクニカルセンターを横目で見ながら、もう少し奥に入った静かな丘にある。森に囲まれた結婚式場で、そこに新型イヴォークが待っていた。

 イヴォークのデザイン力の高さはずば抜けており、独特のクーペスタイルは世界でも80万台以上が販売された人気車種でもある。日本も例外ではなく年間1300台以上、累計1万台以上の販売実績がある。

 新型のデザインも一見したところ変わらなく見えるが、角の取れた洗練されたデザインに7年という時の流れを感じる。ドアハンドルは「レンジローバー ヴェラール」で初めて取り入れられたデプロイアブル・ドアハンドル(通常はドアハンドルがドアに埋め込まれ、解錠すると顔を出す)を採用して、滑らかなボディが印象的だ。サイズは全長4380mmに全幅1905mmというスクエアなボディで、先代とほぼ同サイズに収まっている。

デプロイアブル・ドアハンドルは普段は埋め込まれていて、イヴォークの滑らかなボディラインと1つになっている

 そして、7年の時間はあらゆる面でイヴォークを成長させた。試乗したのは2.0リッターターボチャージャーのガソリンエンジンだったが、ラインアップには48Vのマイルドハイブリッドやディーゼルエンジンも揃っている。

 フルモデルチェンジでエンジンを除いてすべてを一新したイヴォークは、ホイールベースも20mm延長した2680mmとなった。サスペンションも見直されてこれまで履きこなせていなかった大径タイヤもほぼ完全にモノにしている。成長の証はステアリング操作の滑らかさにも感じられて、ロールも少なく自然な姿勢変化だ。

 バネ上の動きも小さく、路面の凹凸に対してサスペンションがよくついてくるのが好ましい。荒れた路面を通過する際もドタバタする動きはなくなった。なかなか上質な乗り心地でプレミアムSUVにふさわしく、静粛性もかなり向上している。つまり、快適なドライブができたというわけだ。

 アマンダ・ヒルズから30分ほど離れた丹沢山系の東に位置する宮ケ瀬に特設コースが設定されていた。人工的に作られたモーグルコースと橋渡りだ。ここでオフロードビークル、イヴォークの実力の一端を垣間見ることができた。

特設のモーグルコース

 特設コースでは2.0リッターディーゼルターボのD180に乗ることができた。少し前のディーゼルはアクセルレスポンスがわるいのが通例だったが、今やほとんどの最新ディーゼルはそれを感じさせない。イヴォークのインジニウムディーゼルエンジンもその例にもれず、トルクバンドの山に乗ればシャープな吹け上がりを見せる。ただ、初速0km/hからの全開操作では、少しタイムラグがあるが十分許容範囲だ。

 モーグルコースでは7つの路面モードが選べる最新のテレイン・レスポンス2が備わっているが、あえてオートを選んで挑んでみた。ちなみに選べる走行モードは「オート」「コンフォート」「ダイナミック」「エコ」「草/砂利/雪」「泥/轍」「砂」に分けられる。

状況によってエンジン、トランスミッション、ディファレンシャル、シャシーなどのシステムを最適化するテレイン・レスポンス2

 モーグルの段差はイヴォークには少しきついかなと思ったが、アプローチアングル(22.2度)もデパーチャーアングル(30.6度)もまったく問題なくクリア。タイヤが浮いてしまうような場面でもアクセルを踏んでいれば、やがて悠然と走破できる。

 このコースでは直前視界が確保できるドライブアシストを使ってみた。これはセンターに配置された10インチモニターに車両直前の様子が映し出される。フロントタイヤがどこを通ればいいか感覚ではなく視覚的に理解でき、さすがにオフロード育ちのレンジローバーらしい装備だ。映像なので最初は違和感があり、誘導員の合図をあてにしながらの走行だったが、慣れてくると積極的に使えるようになった。

直前視界が確保できるドライブアシストを使ってみた

 もう1つ、橋渡りでは30km/h以下で作動するクリアサイト・グランドビューと呼ばれるシステムを使ってみた。あたかもエンジンの下にカメラが配置されたかのように見えるので、これもレンジローバーらしいシステムだ。こちらは路面に置かれた2本のレールの上にフロントタイヤを乗せて走るもので、フロントグリルとドアミラーにあるカメラを使って合成映像を映し出すものだ。通過する直前の映像を見ていることになるが、フロントタイヤがレールの上を走る様子が分かりやすく、理解しやすい。

 この活用法はいろいろとありそう。車止めへのアプロ―チなどを考えると現実的だ。

エンジンの下にカメラが配置されたかのように見えるクリアサイト・グランドビュー

 このほかのカメラ技術では、おなじみとなったカメラ映像に切り替えられるルームミラーがある。自分は焦点が合いにくいのでちょっと苦手だが、視野角50度に設定されているので現実的だ。特にイヴォークは小さなリアウィンドウからの視界が限られるので実用性は高そうだ。

 これら以外にも、環境に配慮した新素材のシートなど、話題は盛りだくさんのイヴォークだった。次回は48Vのマイルドハイブリッドを試してみたい。

日下部保雄

1949年12月28日生 東京都出身
■モータージャーナリスト/AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員/16~17年日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員
 大学時代からモータースポーツの魅力にとりつかれ、参戦。その経験を活かし、大学卒業後、モータージャーナリズムの世界に入り、専門誌をはじめ雑誌等に新型車の試乗レポートやコラムを寄稿。自動車ジャーナリストとして30年以上のキャリアを積む。モータースポーツ歴は全日本ラリー選手権を中心に活動、1979年・マレーシアで日本人として初の海外ラリー優勝を飾るなど輝かしい成績を誇る。ジャーナリストとしては、新型車や自動車部品の評価、時事問題の提起など、活動は多義にわたり、TVのモーターランド2、自動車専門誌、一般紙、Webなどで活動。