日下部保雄の悠悠閑閑

Hi, Mercedes Bクラス!

メルセデス・ベンツの新型Bクラスに試乗してきた

 メルセデス・ベンツのBクラス試乗会に行ってきた。Aクラスに半年遅れてやってきたBクラスは6月にプレスリリースが発表され、すでに予約受注が行なわれているので、この稿が上がる頃にはデリバリーが始まっているはずだ。予約受注が好調なのはメルセデスに対する信頼度を物語っている。

 ベースとなった4代目Aクラスは2018年秋に日本に導入され、さらに5月にはディーゼルモデルの試乗会も行なわれている。充実した対話型インフォテイメントシステム「MBUX」の「Hi, Mercedes!」は衝撃的だったし、ディーゼルエンジンで重くなるフロント荷重のハンドリングへの落としどころも興味深かった。

 Bクラスの実車を見た最初の印象は、随分スリムになった、というものだった。Bクラスと言えば、ラゲッジルームが有効活用できるが、ズングリとしたイメージが強く、実用性が前面に打ち出された感じだ。

 新型では薄いヘッドライトでスリムになったデザインが特徴。ボディラインも随分スッキリした。リアエンドも大幅にイメージチェンジしてスポーティになっている。驚くことにCd値は0.24と非常に小さいが、それと気づかせないデザイン力もなかなかのものだ。

Bクラスのリアデザイン

 試乗当日はあいにくの梅雨空だが、雨の中もスプラッシュ音などが分かるので晴れた日とは違った面を見ることができる。

 試乗グレードは「B 180」。AMGパッケージではないので、タイヤはピレリ「Cinturato P7」の205/55R17だ。P7と言えばハイパフォーマンスタイヤの元祖で、自分もずいぶんとテストさせてもらったものだ。当時の印象はグリップとコントロール性のバランスの高さが印象に残っている。その伝統あるネーミングを持つP7も今やコンフォートタイヤに分類されており、時の流れを感じる。

 ドライバーシートに座ってから、再度スイッチ類を確認しておく。最近のクルマのコントロール類は何も知らないと後で困ることになるので、使用したいスイッチやパネルをチェックしておくためにこの手順が必要だ。試乗会場のスタッフはなかなか出発しないクルマを不思議に思っているかもしれないが、アナログ世代にはちょっと時間が欲しいのだよ。

Bクラスのインパネ。横長のディスプレイは見やすく、車内が華やかになる

 インテリアではAクラス同様の横長ディスプレイが目を引く。スピードメーターなどとの一体型で、それだけでも華やかでカッチリとして見え、またディスプレイの上面が抑えられているので前方視界が明るい。Aクラスと違うのは助手席側のダッシュボードパネルの形状が異なっていて凹みがあることぐらいだが、カジュアルなAクラスに対してBクラスは購買層に合わせて質感を上げている。大きなディスプレイもHUDも見やすく、情報を得るための視線の移動量が少ない。

少しえぐられたようになっている助手席のダッシュボードパネル

 ドライビングポジションではAクラスよりシートが高い位置に置かれてSUV感覚になっている。したがってAクラスでは足首の位置が高くなるところが、足が自然な位置に配置できる。

 もともと、初代のAクラスはFUEL CELLも念頭に置いて設計され、フロアがサンドイッチ構造になっていて高かった。アイポイントが高い割には足首が伸びないというポジションだったが、その後プラットフォームを刷新しても、初代の名残なのかフロアが高めだった。それが着座位置の高い新しいBクラスでは自然なポジションに落ち着く。

 さて、Bクラスは全高ではAクラスより140mm高く、前後席とも居住空間のボリュームは大きくなっている。ホイールベースは2730mmと共通なので、ウワモノの作り方を変えて実用性を上げている。全幅は1800mm、全長も4420mmでAクラスと共通だ。

コンパクトカークラスには珍しく「Mercedes-Benz」の文字が入ったサイドシルプレートが装着されていた

 1.4リッターのガソリンターボはAクラスと共通の新エンジンで100kW(136PS)/200Nmの出力を持ち、トランスミッションに7速DCTを組み合わせる。

 エンジンの出力やレスポンスなどは十分で、Bクラスのキャラクターに合っている。トランスミッションはトルコンタイプのような滑らかさはないが、ダイレクトな感触を好むドライバーには向いている。

 試乗中も通常ではトントンとシフトしていくが、場面によっては低いギヤで引っ張る時もあり、DCTの特性を理解していないと面食らうかもしれない。また、スポーツモードを選択すると低いギヤでシャキシャキ引っ張るので、このモードにふさわしい走りができる。

 乗り心地は比較的ユッタリとしているので、スポーティなAクラスよりも家族向きだ。ロールは確かに大きくなるが、チョット速いペースぐらいでは安定した姿勢は変わらない。

 折からの雨だったが、水を跳ね上げるようなスプラッシュノイズはよく抑えられており、静粛性はこのクラスの中では高いレベルだと思う。

 遅れて発売されるディーゼルモデルはAクラスに搭載されるエンジンと同じもの。Aクラスではガソリンよりも120kgほど重かったが、さてBクラスのハンドリングはどうだろう。

 走りで感じるのは、メルセデスのラインアップの中でしっとりとしたCクラス以上のFR系とは違った感触を持ち、ステアリングのスワリなどがもう少し滑らかな感触だと好ましい。メルセデスの味はFFもFRも統一感があるといいと思うのだがどうだろう。

 目玉の「Hi, Mercedes!」はつい話かけたくなり、適当にしゃべりかけてもかなりの精度で答えてくれるのは楽しい。Aクラスよりもさらに親和性が高くなっているように感じたが気のせいか?

 インテリジェントドライブは、レーンキープなどもう少し車線維持の能力が高いとよいのだが、ドライバーの疲労をかなり低減してくれるのは間違いない。

 試乗車の車体価格は384万円だが、レーダーセーフティパッケージやナビゲーションパッケージなどなどフルフルのパッケージオプションを装備した試乗車は約500万円のプライスタグがぶらさがっていた。

試乗車はオプションのパノラミックサンルーフが着いていた。オプション価格は16万3000円

日下部保雄

1949年12月28日生 東京都出身
■モータージャーナリスト/AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員/16~17年日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員
 大学時代からモータースポーツの魅力にとりつかれ、参戦。その経験を活かし、大学卒業後、モータージャーナリズムの世界に入り、専門誌をはじめ雑誌等に新型車の試乗レポートやコラムを寄稿。自動車ジャーナリストとして30年以上のキャリアを積む。モータースポーツ歴は全日本ラリー選手権を中心に活動、1979年・マレーシアで日本人として初の海外ラリー優勝を飾るなど輝かしい成績を誇る。ジャーナリストとしては、新型車や自動車部品の評価、時事問題の提起など、活動は多義にわたり、TVのモーターランド2、自動車専門誌、一般紙、Webなどで活動。