日下部保雄の悠悠閑閑

北海道の旅 その1

飛行機から見えた北海道の大地

 ひと足早い夏休みを取って北海道を旅してきた。

 北海道は冬季には行くことが多いが、雪のない時期に訪れることはまれだ。そして、いろいろと思い出の多い地域でもある。

 冬季のテストで散々通った旭川を起点とし、旭山動物園と旭川ロープウェイに乗ることだけを決めて、後はのんびりとした旅にしようと細かいことは決めていなかった。

 暑い東京を逃げ出して涼を取れれば十分だと思ったが、結果としては北海道も想定以上に暑かったし、やはりあちこち出かけて観光してきた。どうにも貧乏性は治らないらしい。

 まずは旭山動物園に向かう。何年か前に冬の北海道で2時間ほど時間ができたのを幸いに、旭山動物園に超特急で出かけたことがある。見学時間は実質1時間もなかったと思うが、動物との距離が近く、手を伸ばせば届くようなところにユキヒョウ(?)が寝ている姿は感動的だった。

こちらはユキヒョウ(?)ではなく、なんとなく手持ち無沙汰に見えたトラ

 今回はレッサーパンダが吊り橋の上で寝ており、なかなかカワイイ。この吊り橋を通って通路の反対の木に行くこともできるので、レッサーパンダたちのストレス解消には役立ちそうだ。もっとも、折からの暑さでレッサーパンダも「やってられねーよ!」という感じでグタグタだった。

暑さでだらけていたレッサーパンダ

 シロクマのモグモグタイムでは飼育員からもらう魚を水中でくわえ、水の上に顔を出してモグモグと食べている。最初はなんで顔だけ出してるんだと思っていたが、考えてみれば水の中では食べられないので当たり前だ。野性のシロクマはアザラシなどを捕食する北極で生態系の頂点に立つ動物だが、地球温暖化で絶滅の危機にひんしているというのも悲しい。

シロクマのなんとも間抜けなモグモグタイム

 旭山動物園は今回も時間切れで全部を見ることはできなかったが、オジロワシやシマフクロウの鳥類にも会えたし(なぜかおなじみのカラスも檻に入っていて新鮮だった)、ひょうきんなアザラシも自在に泳ぎまわって、見ていて飽きない。アザラシは網を破って魚や貝を大量に食べるので漁師さんからは嫌われ者だが、アザラシと折り合いを付けるのは難しいのだろうか。アザラシも年々数を減らしているという。

いつも後ろを向いていて、どっちが前だか分からないシマフクロウ
気持ちよさそうなアザラシ

 翌日は十勝温泉の「カミホロ荘」に宿をとっていたので、まずは近くの美瑛に行ってみる。「セブンスターの木」や「ケンとメリーの木」など定番の観光スポットを見て回ったが、以前訪れた時よりも当然のこと、随分大きくなっている。そして観光コースに入っているようで外国人観光客がかなり見物していた。セブンスターの木はセブンスターのCM、ケンとメリーの木はスカイラインのCMに使われていたので、われわれにとっては「あ~! あれね!」と懐かしいが、外国人の目にはどう映るんだろうか?

堂々とした「セブンスターの木」
「セブンスターの丘」にある白樺並木は、大きくなって森になろうとしているかのよう
「ケンとメリーの木」(ポプラ)。前はもっと小さかった

 さまざまな花が美しく植えられているコンパクトな「ぜるぶの丘」や広大な「四季彩の丘」も訪れた。花の名前はラベンダーとひまわりぐらいしか分からないが、さまざまな花が絢爛と咲き誇るさまにはさすがに心を奪われる。北海道ならではの風景だ。

美しい花に彩られたぜるぶの丘

 四季彩の丘は中国からの観光客が多く、広い敷地をトラクターで引かれた客車に乗って花畑に見入っていた。

四季彩の丘。外国人観光客がたくさん!

 カミホロ荘は大雪国立公園内の十勝岳のそばにある。山小屋の風情があって、標高1200mはさぞや涼しいだろうと思いきや、ここでも熱波は押し寄せており、部屋はムッとしていた。場所柄クーラーがないので、虫よけのために開閉が制限される窓を開けて涼を入れ、扇風機を回す。やっと人心地が付いたが、ここでも異常気象の影響が出ているのかと心配になる。

 カミホロ荘は露天風呂から見える満天の星空、そして夕景が楽しめるはずだったが、心配した通り曇天で星は1つも見えなかった。残念! 学生のころ、山で見た降るような星を楽しみにしていたが、夢はお預けになってしまった。先にとっておくことにする。

十勝岳温泉のカミホロ荘。一夜明けると快晴だった

 このカミホロ荘への宿泊は初めてだったが、もっと麓にある白銀荘は冬季のラリータイヤテストで何回も来たことがある。雪が多く、登坂がきついツイスティなコースは、ラリー用スタッドレスに必要なトラクションやコーナリンググリップを確認するにはちょうどよかった。ラリー車も2輪駆動から4輪駆動の「ギャラン」や「ブルーバード」の時代になっており、4WD用ラリータイヤの開発が始まったときでもある。

 冬の十勝岳でもやせ細ったキタキツネが近くまで現れ、食料をねだっていたのが思い出された。過酷な自然の中でも、動物たちは懸命に生きていた。

 さて、北海道のノンビリ旅はもう少し続く。念願の旭岳ロープウェイに乗ったこと、嬉しいハプニングに遭遇したことは次回にお伝えしよう。

日下部保雄

1949年12月28日生 東京都出身
■モータージャーナリスト/AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員/16~17年日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員
 大学時代からモータースポーツの魅力にとりつかれ、参戦。その経験を活かし、大学卒業後、モータージャーナリズムの世界に入り、専門誌をはじめ雑誌等に新型車の試乗レポートやコラムを寄稿。自動車ジャーナリストとして30年以上のキャリアを積む。モータースポーツ歴は全日本ラリー選手権を中心に活動、1979年・マレーシアで日本人として初の海外ラリー優勝を飾るなど輝かしい成績を誇る。ジャーナリストとしては、新型車や自動車部品の評価、時事問題の提起など、活動は多義にわたり、TVのモーターランド2、自動車専門誌、一般紙、Webなどで活動。