日下部保雄の悠悠閑閑

イベント盛りだくさんの近ごろ

写真はフォルクスワーゲンのTDI試乗会で乗ったゴルフ ヴァリアント。この角度からだとさらに精悍に見える

 暑い夏が過ぎて一気にイベントごとが増えた。

 われらが大先輩であるAJAJの山口京一さんの回顧録トヨタ編を皮切りに、三菱ふそうの大型トラックの自動運転のシンポジウム、シトロエンとフォルクスワーゲンの試乗会、メディア対抗ロードスター4時間耐久、懇談会、取材もろもろ、そしてわが町のお祭りと盛りだくさんだ。

 山口京一さん、通称ヤマキョウさんは2時間講演をこれまで3回、BMW GROUP Tokyo Bayに始まり、マツダのR&D、そして今回のトヨタ メガウェブで行なってきたが、その記憶力、写真の整理とその豊富さ、弁舌の滑らかさなど、到底ヤマキョウさんでなければできない内容だった。BMWではBMWの話、マツダではマツダの話題、トヨタではトヨタの先輩たちの奮闘、当意即妙な話題づくりに事欠かない。ヤマキョウさんは常に謙虚に自動車と向き合い、国産車が黎明期だったころは極東の未知のクルマを海外にレポートしていた。そのお話を目の当たりに伺うことはAJAJ会員どうしでもなかなか聞けない話で、貴重で大切な体験だった。つい写真を撮るのを忘れるほど内容が濃かったのです。

 次回はホンダ編が11月末に行なわれる予定だ。

 三菱ふそうは大型車の自動運転についてのシンポジウムで、AJAJの清水和夫君がモデレーターを行なって開催された。三菱ふそうは川崎に近代的な本社をオープンし、ますます存在感を高めようとしているところで、とかく乗用車に注目が集まりがちな運転支援システムについて、経済産業省、国土交通省、識者、メーカーと多方面からお話を聞くことができた。三菱ふそう車は「スーパーグレート」で日本の大型トラックとしては初めてレベル2を実現することになるが、ダイムラーの知見など、協業できる強みを生かして着々と自動運転への道を進めている。

三菱ふそうの自動運転シンポジウムでも興味深い話を聞けた

 ダイムラー、つまり日本では三菱ふそうだが、次に進むべきはレベル3を通り越したレベル4を目指すという。最終的な判断が人に任せられるレベル3は逆に実用化するのが難しいという見解だった。レベル3は次のレベル4の本格的な移行に際して通過点として考えられているようだ。あくまでも目標はレベル4にあるという。

 実際に日本では大型トラックの隊列走行が新東名高速道路などで検討されており、部分的なレベル4は予想より早いタイミングでトラックから実用化されるかもと思わせた。

 特に自重も積載量も大きく、使用環境が乗用車とは違った大型トラックにおいては、乗用車とは違った視点に立って組み立てる必要がある。

 いずれにしても各界の声を聞くことができたのは大きな経験だった。清水君、ご苦労さまでした。

 一方、自動運転とはがらりと変わってシトロエンの試乗会。シトロエンC3 エアクロス SUVは、ネーミングもしゃれているシトロエンらしいCセグメントSUV。全幅も1765mmに収まっているので日本の道にもマッチングがいい。全高は1765mmあるので立体駐車場では入れないところもあるが、昨今のハイト系軽ワゴンよりも低いというのは複雑な気持ちである。

シトロエン C3 エアクロス SUVはキュートなコンパクトSUVだった

 感触はフランス車らしくソフトなもので、あらゆる動作が1枚クッションを入れたようで心地よい。個人的にはグリップが高くキビキビ走る17インチタイヤよりも、バランスに優れた16インチの方がシトロエンとのマッチングがよかったと感じたが、好みの問題だろう。

C3 エアクロス SUVの16インチタイヤ。メーカーはブリヂストンだった。サイズは195/60R16

 残念ながら乗れなかったが、C5 エアクロス SUVには魔法の絨毯の乗り心地を銘打ったハイドロニューマチックに代わる新しいショックアブソーバーが装着されており、いずれこちらもハンドルを握ってみたい。

 試乗会場が近かったので、はしごしてフォルクスワーゲンのTDI試乗会にも足を伸ばした。シャランとゴルフのディーゼルである。

 シャランは登場から月日が経っているので振動や音など古さも目立つが、ディーゼルとの組み合わせで得た粘り感のある走りは、シャランのマルチパーパスぶりに拍車がかかった。6速DSGとの組み合わせは、滑らかさではゴルフ TDI(今回乗ったのはヴァリアント)の7速DSGには及ばないものの、大きなトランクに荷物を満載でき、73Lの軽油の燃料タンクはきっとアシの長い頼もしいワゴンになるだろう。

フォルクスワーゲンのTDI試乗会ではシャランにも乗った

 エンジン出力はシャランが130kW/380Nm、ゴルフ ヴァリアントが110kW/340Nmで、同じ2.0リッターディーゼルターボでもボディ形状によって出力が変えられている。ゴルフ ヴァリアントの燃料タンクは50Lだが、高速ではアシの長さに定評があるので、どちらもロングツーリングに期待が持てそうだ。

 日本車ではすっかり影が薄くなってしまったステーションワゴンだが、大きなラゲッジルームがもたらす利便性はなかなか捨てがたい。

シャランの大きなラゲッジルーム

 定番のフォルクスワーゲンと、わが道を行くシトロエン。どちらの試乗もクルマづくりの哲学のようなものに触れることができ興味深かった。

 メディア対抗の顛末などはまた後日話をしたいと思う。

日下部保雄

1949年12月28日生 東京都出身
■モータージャーナリスト/AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員/16~17年日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員
 大学時代からモータースポーツの魅力にとりつかれ、参戦。その経験を活かし、大学卒業後、モータージャーナリズムの世界に入り、専門誌をはじめ雑誌等に新型車の試乗レポートやコラムを寄稿。自動車ジャーナリストとして30年以上のキャリアを積む。モータースポーツ歴は全日本ラリー選手権を中心に活動、1979年・マレーシアで日本人として初の海外ラリー優勝を飾るなど輝かしい成績を誇る。ジャーナリストとしては、新型車や自動車部品の評価、時事問題の提起など、活動は多義にわたり、TVのモーターランド2、自動車専門誌、一般紙、Webなどで活動。