日下部保雄の悠悠閑閑

メディア対抗ロードスター4時間耐久レース

スタート前のピンクパンサー号。ピンクパンサーチーム全員集合で、まわりが女子ばかりで小さくなってます

 さて、先週の続きの話をしよう。メディア対抗ロードスター4時間耐久レースである。このレースはNA型の頃から現在のND型までのロードスターをマツダで管理して、年に1回のレースの時に貸し出すシステムでレースの公平性が保たれている。当初は各メディアが管理していたが、車両がイコールコンディションにならないという声が出てきたために、現在のような方式になっている。そして、2019年にメディア対抗レースは記念すべき30周年を迎えた。長年にわたってこのレースを支えてきてくれたマツダに感謝したい。

 自分はメディア対抗レースに参加してからはほぼホリデーオートからの参加だったが、記憶では過去1回だけ、ピンクパンサーチームで参加したことがある。ピンクパンサーチームは基本的に女性ジャーナリストで構成されるチーム。竹岡圭ちゃんがリーダーで、元モーターマガジン編集長の清水猛彦さんが監督を務めている。もう10年以上前に、メンバーが1人足りなくなったて、圭ちゃんに頼まれて助っ人に入った。この時は保子さんだと言い張るように言われ、レースではフジトモに三つ編みを付けられ、あろうことか化粧までさせられた。清水和夫君がカメラを持って嬉しそうに寄ってきた光景は自分にとっての黒歴史だ……。

 そして今年、エントリーしていたホリデーオートが休刊になったためチームは解散。さらにピンクパンサーチームはやはり1人足りなくなりそうで再び声がかかった。圭ちゃんへの仁義もあって、今年はピンクパンサーチームの助っ人をすることになった。ただし「三つ編みも化粧もなし」という条件を出したのは言うまでもない。一部では保子さん登場という話もあったが、今年はあくまで“保雄”なのである。

朝ののんびりした時間のピンクパンサー号

 9月7日の筑波は台風の影響もあってひどく蒸し暑く、取材でうつされた風邪に辟易としながらピンクのNDに乗り込む。4時間を延べ5名のドライバーで乗るのが義務付けられ、使える燃料は60Lかっきり。そう、このレースは速く走ることも求められるが、燃料は60Lしか使えないので、戦術的なエコランでもある。自分のパートはスタートとラスト当てられ、それぞれ50分のドライビングが限度とされる。

 スタートは後方からだったので、前にはタップリと色とりどりのND、ND、ND……。そして目の前にはCar Watch号。ローリングスタートでは数台は抜こうと決めていたが、はやるピンクパンサーは計測ラインを超える前にCar Watch号の前に頭が出てしまったようで、1分のピットストップペナルティを受ける。そんなこととは知らないから、レースを作るにはできるだけ前に出て、先頭グループにいたほうがいいと思いつつ、それでも燃費セーブのためにエンジン回転数は可能な限り抑え、ない頭を絞りつつ走る。そうこうするうちにトップ集団が決められたペナルティピットストップをとったため、とうとう3位まで上がってしまった。ここで1分間のピットストップペナルティを消化して次に引き継ぐ。

 しかし、序盤で燃費に多少無理をさせてしまったため、後半は燃費回復のためにセーブした走りを強いられることになる。圭ちゃん、フジトモ、池田美穂さんとつなぎ、いよいよ最終パート。もう順位は分からないが、燃費計をチェックするとフィニッシュまで燃料が持ちそうもない。今年のレースは晴れているうえ、セーフティカーによる隊列走行もなかったので、総走行距離が長くなり燃料には厳しいのだ。

 4500rpmまでと指示を受けたが、当然ラップタイムは上がらずストレスが溜まる。これまで燃料をセーブしたチームはアンカードライバーが飛ばしていくが、我慢、我慢。それでもピンクパンサーの燃料は厳しく、4000rpmまでに落とすが、ここまでくるともはやドライブである。通常NDでの筑波は2~4速を使うが、燃費ドライブでは3~6速である。長いことレースをやっているが、筑波で6速に入れたのは初めてだと思う。

 やっとフィニッシュできそうなラインまで燃料を残した時点で、燃料計のワーニングランプは点きっぱなし。コースサイドにはガス欠で止まってしまったNDがぼつぼつ現れ、その数は周回ごとに増えていく。NDはガス欠でバッバッときたらすぐに止まってしまうので、ヒヤヒヤしながら「早くチェッカーが出ないかな……」と思ったが、こういう時はなかなか出ないものだ。やっと持ちこたえて完走したが、トップから4周遅れの176周で13位だった。まずは無事にゴールまで運んだのでよしとしよう。保子さん、いや保雄君はホッとしたのでした。

無事にフィニッシュしてお疲れ様フォト。みんなホッとしてます

 素晴らしかったのはMORIZO選手率いるトヨタイムズが、トップと同周回の2位に滑り込んだこと。彼らは燃料を持たせてもらった最終スティントのドライバーが飛ばし、自分は3回も後ろ姿を見たので、終盤にスパートする戦術を練っていたのが分かる。マツダ役員チームの人馬一体ロードスターも、やはり同周回の4位に入ったことにも注目だ。このレースは毎年レベルが高くなっているので、まさにチームワークの勝利と言ってよいだろう。

 3位に入った昨年までのチームメイトだった瀬在君、木下君おめでとう! そして優勝したピストン西沢さん、えらい! さらに何よりも、このようなレースの楽しさを守ってくれたマツダには感謝ばかりである。

徳間書店の東海ウォーカーで執筆していたころの編集者 外岡さん(左)とその友人が応援に来てくれた。ありがとう!

日下部保雄

1949年12月28日生 東京都出身
■モータージャーナリスト/AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員/16~17年日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員
 大学時代からモータースポーツの魅力にとりつかれ、参戦。その経験を活かし、大学卒業後、モータージャーナリズムの世界に入り、専門誌をはじめ雑誌等に新型車の試乗レポートやコラムを寄稿。自動車ジャーナリストとして30年以上のキャリアを積む。モータースポーツ歴は全日本ラリー選手権を中心に活動、1979年・マレーシアで日本人として初の海外ラリー優勝を飾るなど輝かしい成績を誇る。ジャーナリストとしては、新型車や自動車部品の評価、時事問題の提起など、活動は多義にわたり、TVのモーターランド2、自動車専門誌、一般紙、Webなどで活動。