日下部保雄の悠悠閑閑
東京モーターショー 2019
2019年10月7日 00:00
2年に1度の東京モーターショー。2019年は10月24日の特別招待日から始まり11月4日まで開催される。ご存知のように、東京モーターショーは国際格式のメジャーモーターショーとしてはすでにそのポジションを失って久しい。かつては海外から多くのメーカーがこぞって参加して華やかだったが、アジアでの国際モーターショーのポジションが中国に移ってから何年だろうか。
モーターショーも、普段接することがないクルマを見に行くというスタイルからは急速に離れていっている。今ではインターネットなどで検索すれば詳細を知ることもでき、インポーターによっては積極的に顧客イベントを行なうところも増えている。決して安くない出展に伴うコストも障害になっていると言われるが、インポーターの場合、本国メーカーの意向が大きいようだ。
個人的には東京モーターショーは国内メーカーの技術の発露であってほしいと思っており、海外メーカーが撤退する中でも国内メーカーの頑張りはなかなか頼もしかった。日本メーカーがどの方向に向かっているのか知る手がかりにもなるからだ。
しかし、前回の東京モーターショーは天候に災いされて来場者は77万人強に減っており、東京ビッグサイトに移ってから最低人数だった。
今年、東京モーターショーはこれまでの慣習にとらわれずに、自動車を軸とした未来を提案する展覧会に変身しようとしている。
会場も、東京2020オリンピック・パラリンピックによる東京ビッグサイトの使用制限エリアの影響もあるが、有明エリアからメガウェブの青海エリアまで拡大して体験ゾーンが広がる。
豊田章男自工会会長もデジタルでクルマを見ることができる今、展示するショーとしてはモーターショーは転換点に来ているのは明らかだと語る。一方で、コンシューマー・エレクトロニクス・ショーの「CES」がこれまでのモーターショーに代わって新型車の発表が行なわれることが多くなっている。CESでは名称の通りさまざまな産業が未来の生活につながる出展をしている。
今年の東京モーターショーも多くの産業の協力を得て、自動車メーカー以外からの出展があり興味深いものがある。メガウェブは「FUTURE EXPO」として未来の世界観を体験できるが、クルマだけに限らず、スポーツ観戦から地方観光までを体験することができ、ここでも自動車メーカーの枠を外れていることが分かる。また、有明と青海をつなぐ遊歩道は小型モビリティを体感できるエリアになっており、自工会会員の枠を越えて行なわれる。
来場者数は会期を通して100万人を目指すという。他の多くのメジャーイベント、例えば駅伝やよさこいなどが100万人を集客している。東京ディズニーランドも9万人/日で、東京モーターショーも9万人/日の集客を目指しているので、ほぼ同じ規模となる。日本の基幹産業である自動車が引っ張るイベントで100万人を目指すという数字にこだわるのはそんな意味がある。
もっと言うならば、モーターショーでクルマを展示するだけで自動車の未来を体現するのには限界があるとして、他の産業と共に自動車の位置付けをしていくことを目指しているというところだ。
これまでのやり方を踏襲するのではなく、来場者を多様化して未来に期待を持ってもらうという主旨がある。
もちろん、モーターショーの本筋のメーカーからはこれまで通りワールドプレミアもあり、コンセプトカーも展示され、AJAJ会員による解説入りのツアーもある。
また、今年の東京モーターショーは高校生以下の入場料は無料で、まだ免許証を持っていない未来のドライバーも楽しめるイベントが組まれている。
当初は会場も分散され、どうなることかと思っていた東京モーターショーだが、モーターショーという名前に違和感を覚えるほどのEXPOに変身し、なかなか興味深いイベントになりそうだ。新しいEXPOの第1歩の東京モーターショーが近づいている。楽しみである。