日下部保雄の悠悠閑閑

試乗会三昧

ダイハツ「ロッキー」

 年末にかけて試乗会が多くなっているが、この週も試乗会のハシゴをしてきた。最初はダイハツ「ロッキー」&トヨタ「ライズ」である。先日の東京モーターショーでダイハツブースにさりげなく展示されていたコンパクトSUVで、ダイハツ版とトヨタ版があるが基本は同じものだ。開発はスモールカーを得意とするダイハツ側で行ない、ダイハツの新規車両開発の基幹となるDNGAの考え方で誕生したプラットフォームの第2弾となる。DNGAではこの夏にフルモデルチェンジした「タント」が第1弾だ。

 5ナンバーサイズのロッキー/ライズは3995×1695×1620mm(全長×全幅×全高)で、ダイハツにとってはステップアッパー、トヨタにとってはダウンサイジングのSUVと位置付けられるが、それでなくともダイハツが久しぶりに作るコンパクトなSUVはちょっとワクワクする。

トヨタ「ライズ」

 エンジンは3気筒の1.0リッターターボで72kW(98PS)/140Nmの出力を発生しつつ、重量は上級グレードで1tを切る980kg。4WDでも1050kgと軽量に仕上がっている。背が高くて重くなるSUVで軽いボディにはちょっと驚いた。

 そして、さすが軽自動車メーカーと感心したのは室内の広さ。軽自動車は全幅1480mm、全長3400mm以下の中最大の室内の広さを確保しており、実際に軽ワゴンの後席レッグルームはかなり広い。ロッキー/ライズもレッグルームはコンパクトカーとしては相当広く、室内幅もワイドに感じさせてくれる。さらに軽自動車の限られた寸法の中でギリギリ稼ぎ出しているラゲッジルームは、全長の長いロッキー/ライズでは後席を使用した場合でも449Lのスペースが稼ぎ出せる(アンダーボックスを使用した場合)。荷室の奥行きは755mmあるので、結構積載性は高そうだ。さらに2段階に使える大きなアンダーボックスは使い勝手がよく、軽自動車メーカーらしい。

軽自動車メーカーらしいキャビン活用で、後席が広い

 試乗したのはFFだが、コンパクトSUVらしく軽快でスイスイとフットワークよく走る。16インチと17インチのタイヤでは、前者は当たりがソフトだがもう少し横剛性がほしく、後者は多少ザラついた印象はあるがバランスがよい感触だった。

 乗り心地は大抵の路面でフラット感があるものの、後輪が同時に凹凸路に入ると少しバタつくところがある。ロードノイズの遮断などよくまとまっており、コンパクトカーらしからぬ静粛性を持っている。

 リアサスは一般的なトーションビームだが、ジオメトリーを見直し接地力が高まった。ちなみに、4WDのリアサスも長年使っていた3リンクからドディオン式のト―ションビームになったというので、乗り心地や接地性に期待が持てる。

 安全面ではオプション装備になるものもあるが、いわゆる先進安全技術にも積極的。このクラスのネガな部分は少なく、過不足ないクルマに仕上がっている。欲を言えばインテリアにももっと遊び心を感じさせるデザインがほしいところだ。

アウディ「A1」

 続いてアウディ「A1 スポーツバック」。こちらはコンパクトハッチバックで、アウディのエントリーモデルの8年振りのフルモデルチェンジだ。ホイールベースは95mm長くなって2560mm、その恩恵は後席とラゲッジルームにもたらされている。日本でも人気があり、累計で3万台、全世界で90万台の実績がある。4040×1740××1435mm(全長×全幅×全高)のサイズは日本で使うにはなかなか魅力的だ。フルモデルチェンジでもデザインはアウディのアイデンティティが貫かれており、どこから見てもアウディだと分かる。

A1も後席が広い

 試乗したのは35 TFSI Advanceというグレードで、4気筒1.5リッターターボ搭載車だ。現在はこのモデルのみで、2020年の第2四半期に3気筒1.0リッターターボのベースグレードが導入される。

 35 TSFIは215/45R17サイズのタイヤを履いており、グリップとハンドル応答性などのハンドリングはなかなかスポーティでガッチリした安心感がある。エンジンも滑らかでアウディらしい。トルクもレスポンスも優れている。運動性能に少しも安っぽいところはなくクラスを超えている。

 乗り心地はリアが硬めで荒れた路面では少し突き上げる場面があるが、同じプラットフォームを使っている「ポロ」はもう少し強めだったように思う。また、試乗した路面の材質によるが、箱根の路面ではロードノイズは大きめでザラつた音が入ってくる。しかしそのような部分はあるものの、アウディのクオリティを感じさせるコンパクトハッチバックだった。

 2020年の第2四半期に導入予定のベースグレードも期待が持てそうだ。

芦ノ湖からの富士山。癒される景色

 アウディ試乗会の箱根ターンパイクから、十国峠で開催されている「MAZDA3」のSKYACTIV-Xをはじめとする試乗会に足を伸ばした。いつもならターンパイクから十国峠まではすぐなのだが、台風の被害で県道20号が土砂崩れに遭い復旧に時間がかかっているので、一旦海岸沿いの国道135号まで下りて、熱海から上らなければならない。この復旧までには当分かかりそうで、年内は終わりそうもない。伊豆スカイラインを使う観光客は少なくないので、ウィークエンドの135号はかなり混雑するだろう。

「MAZDA3」に搭載されるSKYACTIV-Xエンジン

 さて、待望のSKYACTIV-Xには4WDとの組み合わせで乗った。エンジンはマツダ特有の高圧縮比による硬質な音に磨きがかかり気持ちよく、トルクも全域であるのでレスポンスも優れている。24VのHV用バッテリーを持ち、マイルドハイブリッドと組み合わされる。圧縮比15:1(!)のSKYACTIV-Xには大量の空気を送り込むためにスーパーチャージャーも必要としているが、空気だけを押し込むのでパワーを上げるためのスーパーチャージャーとは違う。

 スタート時は初期にはディーゼルのようなガラガラ音があるが、チョット回転が上がるとすぐに気にならなくなる。また電気のサポートがあってスタートは実に滑らかで、レシプロエンジンのヨイショとスタートするかったるさはない。加速時にはターボのようなパンチ力はないが気持ちのよいエンジンフィールで、振動もよく抑えられている。

 半面、アクセルOFF時の回転落ちはそれほどよくないので、スポーツエンジンのようなキレのよさは期待値ほどには感じられなかった。

 乗り心地は、4WDとの組み合わせでは路面の凹凸に対して追従性に優れ、心地よい。大きな段差乗り越しでは少し突き上げ感があるが十分滑らかな乗り心地だ。

 ハンドリングはなかなか秀逸だ。ステアリングを切った時にスッと入る感触や、その後の過敏過ぎないライントレース性などスッキリとしたハンドリングで、余分な操作は要求されない。マツダが採用しているGVCとのコンビネーションとはますます磨きがかかっている感触だ。

SKYACTIV-Xには遅くまで試乗していてクルマの写真がないため、駿河湾の夕景

 SKYACTIVーXを開発したマツダのチャレンジには心から敬意を表したい。ただ同グレードで約40万円の価格差を考えると、向上した燃費や心地よいエンジンノート、そして新技術に対してユーザーがどこまで許容してくれるか大変関心があるところだ。

最後にみるみる成長しているムクの近況を。遊びたくてしようがないらしく、帰ると足に絡みつきながら走り回っています。サスケさんはめんどくさがりながらもかわいがってくれてます

日下部保雄

1949年12月28日生 東京都出身
■モータージャーナリスト/AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員/16~17年日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員
 大学時代からモータースポーツの魅力にとりつかれ、参戦。その経験を活かし、大学卒業後、モータージャーナリズムの世界に入り、専門誌をはじめ雑誌等に新型車の試乗レポートやコラムを寄稿。自動車ジャーナリストとして30年以上のキャリアを積む。モータースポーツ歴は全日本ラリー選手権を中心に活動、1979年・マレーシアで日本人として初の海外ラリー優勝を飾るなど輝かしい成績を誇る。ジャーナリストとしては、新型車や自動車部品の評価、時事問題の提起など、活動は多義にわたり、TVのモーターランド2、自動車専門誌、一般紙、Webなどで活動。