日下部保雄の悠悠閑閑
クルマ離れもなんのその。大盛況だった東京オートサロン 2020
2020年1月27日 00:00
毎年、来場者が増え続ける東京オートサロン。2020年は多かった2019年の来場者数をオーバーして、33万6000人を超えた。昨年より約6000人来場者が増えている。半日あるプレスデーを有効に使うべく朝早くから出かけ、開場オープン直後に入ったものの、すでに会場は結構混み始めており、9時30分から始まったTOYOTA GAZOO Racingのプレスカンファレンスは、通路をふさぐほどの盛況ぶり。GAZOO Racing Companyの友山社長から「GRヤリス」の発表が行なわれたからだ。GRヤリスはGRスープラに続き、スポーツカーブランド「GRシリーズ」のグローバルモデル第2弾となる。
日本未発売の2ドアハッチバックの「ヤリス」をベースにして、新開発の3気筒1.6リッターターボ+4WDのパワートレーンを搭載し、本気度がうかがえる。GRヤリスはヤリスWRCの投影で、ラリーカーの匂いがプンプンして心惹かれるものがある。実戦に出るまでにはまだトラブルシューティングが必要だろうし、公認申請などクリアすべきことは沢山あると思うが、早く走る姿が見たい。完成度の高いスバル WRX STIや三菱自動車 ランサーなどとの競争は激しいものになるだろう。しかも価格は400万を切るところからスタートしており、競技出場を目指すユーザーにとっても魅力的な価格だ。
GRヤリスはヤリスをチューニングするというよりも、新たに造り直したような車両なので、通常の生産ラインで造るのは無理だ。トヨタはGR専用のコンパクトで柔軟性のある生産工程を開発し、要所は経験深い熟練工が組み立てていく方式をとっている。先祖返りの生産方式のように思えるが、超高効率のトヨタ生産方式を作り上げたあのトヨタが開発した少量多品種の生産システム、それでコストも下げられるなら凄いことだ。LC生産などでの経験の積み重ねが生きていると思う。
プレゼン会場にはモリゾウさん(豊田章男氏)が突然登場するなどのサプライズもあり、大いに盛り上がった。一緒に登場した大勢のタイのコンパニオンにもスポットを当てて紹介するなどの配慮もモリゾウさんらしい。
さて、軽自動車ではフルモデルチェンジしたスズキ「ハスラー」やその競合となるダイハツの「TAFT コンセプト」が注目だった。スポーツカーからワゴンまで、ないのはセダンと多人数乗車のミニバンだけという軽自動車業界で、最近、注目を集めるのはこれらのクロスオーバーモデルだ。
夏には発売されるというTAFT コンセプトは名前の通り硬派な印象を受け、先行するハスラーとはちょっと趣を変えている。タントに始まったDNGAの第3弾になるが、タントの完成度が高かっただけに期待できる。ネーミングにふさわしい手応えのあるものだと嬉しい。ダイハツブースにはエンジン組み立て体験などもあり、クルマ好きにさらに興味を持ってもらおうというコーナーも設けられていた。
と、東京オートサロンの一部を切り取ってみたが、毎年自動車メーカーからの出展が増え、東京モーターショーとは違ったプレゼンの場となっている。また、2020年のモータースポーツ参戦体制発表を行なうメーカーも多く会場は華やかだ。
タイヤメーカーも大きなブースを出しており、活発な活動をしている。新スポーツタイヤを発表したブリヂストンを筆頭にダンロップ、横浜ゴム、TOYO TIRESなどの日本メーカーだけでなく、海外メーカーも活発だ。
東京オートサロンの出展社はユーザーとの距離が近いだけに、“B to C”の商品群を持つパーツメーカーも活発に出展している。東京モーターショーが将来のモビリティについての提案なのに対して、東京オートサロンはすぐ目の前の事案だけに、来場者の気合も入る。
金曜日、土曜日の1日あたりの来場者は約12万7000人。幕張メッセの敷地面積、展示物の大きさを考えるとかなりの人口密度になる。14時までがプレスデーの金曜日にしても、約9万人の来場者があったという。438社という出展者数も過去最高で、クルマ離れとは何かを改めて考えてみた時間だった。