日下部保雄の悠悠閑閑

北海道の雪道試乗会

千歳ではボルボの試乗会が行なわれた

 2020年は女神湖が凍結しなかったので、氷上走行をすることができなかったのは残念だったが、寒い時は寒いところに行くのは変わらない。

 まず、1月に千歳で行なわれたボルボの試乗会に顔を出させてもらった。ビッグイベント「さっぽろ雪まつり」の雪さえ事欠いている今年の冬だったが、会場となった千歳モーターランドの特設コースには人工降雪機が備えられており、ここは雪がシッカリ積もっている。SUVで走破するような雪のモーグルコースや急勾配の下り坂が設定されていて、4WDの「V60 クロスカントリー」では容易に走破できた。ドライブモードを変えるとヒルディセントコントロールも使えるので、もっと条件の厳しい場面でも平気で降りてこられるだろう。

ヒルディセントコントロールで坂を下りる

 ボルボの4WDは、当初から使われていたハルデックスカップリングの最新世代のもの。基本的には駆動力配分は前輪100:後輪0から始まるのだが、ボルボでは後輪にも常にわずかに駆動力をかけており、後輪がスリップしそうになった時点ですかさず駆動力を増大させるのでタイムラグがない。前後駆動力配分も50:50になる。滑りやすい厳しい条件になると、このわずかなタイムラグが一瞬のスリップを発生する原因になるが、こんな場面でも心強い。

モーグルを通過するボルボ

「V60」は全高1435mmで背の低いワゴンモデル。最低地上高も145mmとオンロードモデルとしては常識的な高さだ。これがV60 クロスカントリーでは全高が70mm高くなって1505mm、最低地上高も210mmとグンと取っているので、腹を擦りにくくなっている。今回のモーグルコースでも安心して走れた。ホイールベースは2875mmでV60の2780mmと5mmしか変わらないので、本格的なSUVと同じような走り方はできないが、ツーリングワゴンではためらうような場面でもグイグイと進める安心感がある。このほかにも、モードによって変わるハンドリング特性なども試すことができたのも有益だった。

 雪景色にボルボはよく似合っている。

暮れなずむ千歳のコースで集合したクロスカントリー

 話は逸れるけれど、ボルボの雪上試乗は海外でも何度か経験させてもらったが、国内で印象深かったのは冬の稚内だった。雪上走破性などを楽しんだのはもちろんだが、稚内は戦前に樺太航路で繁栄したところ。過去の遺産や先人の天を衝く志が感じられ、静かに迫るものがあった。

 その稚内から日本海沿いにまっすぐ南下するコースは雄大で、しばらく走っても沖に浮かぶ利尻島や焼尻島の見える位置が変わらないことに感動。今調べてみると「日本海オロロンライン」と言うそうだ。天気のいい日は素晴らしい景観なので、もしチャンスがあればぜひ! 日本にもこんなところがあるのかと驚くと思う。

 大きな観光名所があるわけではないが、あるがままの自然と少しだけ人の手で切り拓かれたところが溶け込める、それこそが北海道の魅力だと思う。

 さて、その翌週は何かと縁のある旭川を訪れた。その旭川さえも雪が少なく、しかも暖かい。いつも凍っていて滑りそうになるホテルのエントランスもきれいに掃かれている、歩道と車道の間に溜まっているはずの雪もわずかだ。目指すテストコースにも雪が少なくて、コース整備もままならない状態のようだ。

 心細い思いが続いたが、2月に入った途端に降雪と寒気がやってきた。旭川にいると寒さに慣れてしまうのか、少しばかりのマイナス気温では暖かいと感じるようになってしまう。

 氷点下も10度以下になるとさすがに防寒具をしっかり着ないと厳しいが、それでも旭川の人はそれほど厳重な防寒具を着ているように見えないし、足取りも軽やかだ。やはり地元の人は強い。

 また話が飛ぶが、冬靴は時間が許せば北海道で買うことにしている。そもそもすべてがスノーシューズだし、種類も豊富なのでありがたい。今はそんなことしなくてもネット通販で簡単に手に入るのだろうが、昔ながらの習慣で荷物になるのを覚悟でときおり靴屋に足を運んでいる。

 さて、横浜ゴムの勉強会・試乗会のレポートは橋本君がしてくれると思うが、その最後に奴田原文雄選手のドライブによる「ADVAN LANCER」の同乗試乗が行なわれた。試乗コースは今回が初お披露目となった、圧雪の新ハンドリング路だ。本番車だけに1人しか乗れないので、同乗できた人はラッキー。豪快なラリー車の走りを満喫したと思う。純白の雪に黒赤のADVANカラーはよく映えていた。

奴田原文雄選手がドライブした「ADVAN LANCER」

 奴田原選手は堅実で速いドライバー。どんな条件でも成績を残す才能の持ち主で、何度も全日本のタイトルを取っている。特に難しいモンテカルロラリーのグループNで優勝したのは記憶に強く残っている。

 ラップを重ねるに従って、コースはだんだん磨かれてアイスバーンが多くなったが、ハンドブレーキを駆使しながら絶妙なアクセルワークですべてのラップをクリアした。その奴田原選手による最終コーナーの走り。タイヤは「iceGUARD 6(アイスガード シックス)」。もちろん市販品のスタッドレスです。

クレストに向かって姿勢を変えるADVAN LANCER

 コ・ドライバーシートでのインプレはまたそのうち。でもやっぱり走りたいなぁ……。

日下部保雄

1949年12月28日生 東京都出身
■モータージャーナリスト/AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員/16~17年日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員
 大学時代からモータースポーツの魅力にとりつかれ、参戦。その経験を活かし、大学卒業後、モータージャーナリズムの世界に入り、専門誌をはじめ雑誌等に新型車の試乗レポートやコラムを寄稿。自動車ジャーナリストとして30年以上のキャリアを積む。モータースポーツ歴は全日本ラリー選手権を中心に活動、1979年・マレーシアで日本人として初の海外ラリー優勝を飾るなど輝かしい成績を誇る。ジャーナリストとしては、新型車や自動車部品の評価、時事問題の提起など、活動は多義にわたり、TVのモーターランド2、自動車専門誌、一般紙、Webなどで活動。