日下部保雄の悠悠閑閑

アウディ「Q3」とボルボ「XC40」

アウディ Q3 TDI quattroに乗った

 注目の2台のSUVに試乗した。1台はフルモデルチェンジしたアウディ「Q3」、もう1台はボルボ「XC40」の2021年モデルだ。

 Q3は8月に受注を開始してからすでに800台以上の予約が入っており、今年のアウディ ジャパンのヒットモデルになりそうだ。

 サイズは全長4495mm、全高1610mmと日本にもなじみがあるが、全幅は1840mmと欧州サイズで結構幅広い。

 エンジンはガソリンの1.5リッターターボと2.0リッターディーゼルターボの2種類あるが、前者はFF、後者はquattro(4WD)の設定になっている。

 試乗車はディーゼルだった。ドライバーの前面にはフルデジタルの画面が広がり、見せ方が「うまいなぁ!」と思わせてくれる。未来感の見せ方はアウディが先んじていたが、徐々に小さいサイズにも広がり、その操作性なども上手になっている。こちらが慣れたのかもしれないが、試乗前に確認しておくことが少なくなったような気がする。

 ディーゼルエンジンのパンチ力は規制が厳しくなるに従って徐々に削がれている感じがするが、それでも低速での力強さはガソリンにはない魅力がある。音と振動は停車している時以外は気にならないし、実は停車している時も車内にいる限りは許容範囲だ。走りはクワトロということもあり、安定性の高い設定でどっしりと走る。

給油口。左の青いのはアドブルーの注入口です

 居住性では後席のレッグルームは広がったので、窮屈な感じはなくなった。

Q3 TDI quattroの後席です、ホイールベースが長くなり、レッグスペースが広がりました

 もう1台のクワトロはスポーツバックだ。こちらは流行のルーフを低くしたクーペフォルムを特徴としている。

 SUVのQ3に対して全高は1565mmと45mm低くなっている。後席のヒップポイントからルーフまではQ3の976mmからマイナス48mmの928mmとなっているために普通のQ3に比べると解放感が少なくなるが、170cmの私でもルーフにあたることはない。アウディではセダン並みという。

Q3 スポーツバック。確かにルーフが低いけど、ヘッドクリアランスはセダン並み

 ドライバーズシートでは確かにヘッドクリアランスは少ないが、こちらも圧迫感を感じるほどではない。

 動力性能に変わりはないが、運動性能はグイグイと曲がっていくように感じたのだが、足まわりは変わっていないという。重心高が下がったためだろうか。ちなみにタイヤは2モデルともブリヂストンのALENZA、サイズは235/50R19で同一だ。

流れるように落とし込まれたスポーツバックのCピラー

 ところで最近のトレンド、SUVのクーペ化は昭和生まれにはよく分からんです、実は……。スペースのゆとりや力強さがSUVの魅力だと思っていたが、どうもそうではないらしい。クーペルックのSUVが多くデビューし、多くの人が魅力を感じていることは販売台数にも現れている。でもやっぱり分からん……。

 さてボルボは2019年以降、発売するすべてのボルボ車に電気デバイスを搭載していくが、PHEVに続きコンベンショナルエンジン車にも48Vマイルドバッテリーを搭載することになった。ネーミングもT4、T5からB4、B5に変わった。

 そのXC40 B5 R-Designに試乗した。シンプルでカジュアルだが、質感も疎かにしていないところが好ましい。ボクシーなボディは結構大きい。全長こそ4425mmだが全幅は1875mmと兄貴分のV60よりも大きく、全高も1660mmとQ3よりもひとまわり大きい。

XC40。外観上の変更はあまりありません

 エンジンは4気筒2.0リッターのガソリンターボにクランクシャフトをベルトでつないだISGM(インテグレーテッド・スターター・ジェネレーター・モジュール)を搭載し、0.5kWhのリチウムイオンバッテリーを車体後部に配置する。エネルギーを回収しつつ、必要に応じてエンジンをアシストする。

 乗ってみるとT5との違いはほとんど分からないが、メーター内のひそやかに置かれたバッテリーマークに注目していると、エネルギーをやり取りしているのが分かる。でもなんでこんなに慎ましいんだろう。

隣の席からなんとか撮ってもらった回生中のバッテリーインジケーター。ブレーキ中ですが大変慎ましいです

 スタート時などはモーターのアシストがあり(10kW/40Nm)、モワーと出力の立ち上がるエンジンだけよりもスムーズで負荷が少ないように感じる。エンジン停止してからの再始動もISGMらしくスムーズで音、振動が小さい。

 ブレーキをかけた時などこまめにエネルギー回生を行なっているが、乗員にとって嬉しいのは滑らかな走りの質感と燃費計を見た時のちょっとした楽しみだろう。

 で、久しぶりのXC40は初期モデルより突っ張った感じがなく、より自然体で乗れるようになった。タイヤはコンチネンタルのエココンタクト6、サイズは235/50R19で大径のタイヤを履くが、これがしなやかでタイヤ全体で入力を受け止めているような心地よさがある。

 トルクオンデマンドの4WDは後輪にタイミングよくトルクをかけ、安定性が高い。動力性能は250PS/350Nmあるので不足するはずもなく、4WDシステムとのバランスもちょうどいい。道具としての使いやすさが増した。

 一方、197PS/300NmのB4は滑らかなのは変わらないが、グンとおとなしくなった。タイヤも同サイズながらメークが違うこともあり、タイヤのパフォーマンスが勝っている感じだ。標準サイズにダウンすると好ましい味になるんじゃなかろうか? そんな走りが上質になったB4とB5でした。

 ところでXC40はディーラーオプションの防災バッグを積んでいた。昨今の自然災害の大きさを反映してのことだろうが、安全に対するボルボのアプローチでもある。使わないで済むに越したことはないが。

ボルボの防災バッグ。これからデリバリーされるどのボルボにも搭載されるとのこと

日下部保雄

1949年12月28日生 東京都出身
■モータージャーナリスト/AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員/2020-2021年日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員
 大学時代からモータースポーツの魅力にとりつかれ、参戦。その経験を活かし、大学卒業後、モータージャーナリズムの世界に入り、専門誌をはじめ雑誌等に新型車の試乗レポートやコラムを寄稿。自動車ジャーナリストとして30年以上のキャリアを積む。モータースポーツ歴は全日本ラリー選手権を中心に活動、1979年・マレーシアで日本人として初の海外ラリー優勝を飾るなど輝かしい成績を誇る。ジャーナリストとしては、新型車や自動車部品の評価、時事問題の提起など、活動は多義にわたり、TVのモーターランド2、自動車専門誌、一般紙、Webなどで活動。