日下部保雄の悠悠閑閑
1件のリリースからの妄想
2020年9月28日 00:00
TOYOTA GAZOO Racing(TGR)からプレスリリースが来た。TGRがトミ・マキネン・レーシング(TMR)のトミ・マキネンとアドバイザー契約を結んだというニュースだ。ビックリだ!
内容は2021年1月からトミ・マキネンがトヨタと「もっといいクルマ作り」を目的としたアドバイザー契約を結んだというモノで、その目的はラリーに限らず広範囲なGR車両開発やモータースポーツ戦略などに活かすということだった。
じゃ、これまでやってきたTOYOTA GAZOO Racing ワールドラリーチームはどうなるんだろうという疑問が湧くが、この部隊はケルンにある、ルーツをTTE(TOYOTA TEAM EUROPE)とする現在のTOYOTA GAZOO Racing Europe(TGR-E)に移すということだ。
TMRでラリーに関わった機材と人材はTGR-Eに移行することでWRC活動の継続的な運営ができる。WRCのオペレーションはすべてTGR-Eから行なわれるので、TMRに残った施設の一部やスタッフはローカルのフィンランドと隣国エストニアで活動を続けるという。これまで苦労したTMRのスタッフがWRCの仕事を安定的に続けられることは喜ばしい。
TMRはいち早く勝利することを目的にした効率優先のコンパクトな組織で、参戦年の2017年より好成績を上げ、2018年には早くもマニュファクチャラーズタイトルを獲得した。トミ・マキネンは誰もが予想しなかったほどの成果を上げている。
一方、TGR-Eは前身のTMG時代はF-1、現在はWECのオペレーションを行なって、LMP1でル・マン3連勝という実績がある。
TGR-Eでの具体的な展開はまだ発表されていないが、すでに周到な準備がされているに違いない。この改編はトヨタのWRC活動に大きなターニングポイントになると思う。
すべて周知のことだが、リリースからの妄想である。
さて、WRCに大きな期待を担って登場したGRヤリスでの2021年のWRC活動は見送られてしまった。来年は現行ヤリスWRカーで参戦するという。もっとも予定通りGRヤリスが来年走ったとしても2022年にはWRCの車両規定が変わり、トップカテゴリーはハイブリッドカーが義務付けられるので活動期間は1年のみになってしまう。
ご存知のようにハイブリッドカーの開発は膨大な時間とコストがかかり、TGR-EのWECでのLMP1のハイブリッドカーの技術と知識は将来のWRカーに効率よく、素早いフィードバックが期待される。おそらくGRヤリスをモチーフとした2022年モデルの青写真ができていて、来年からテストされることになるんだろうな。
GRヤリスに戻る。モリゾウさんはGRヤリスで初参戦のS耐 富士24時間レースで見事結果を出しているが、この素晴らしい素材がラリーで走らない姿は自分には想像できない。ぜひGRヤリスに広い道が開かれることを期待している。ロートルは心配してしまうのだ。
育成ドライバーの勝田貴元選手の来年の活動も気になる。世界に羽ばたいてほしい。
ところでトミ・マキネンと言えば、ドライバー時代の三菱ワークスでの圧倒的な速さが強く印象に残り、マルボロカラーの赤いランサーエボリューションがすぐに目に浮かぶ。1996年からWRCで4年連続のタイトルホルダーはWRC史に残る記念碑だ。そのランエボシリーズにはトミ・マキネンのWRC4連覇を記念して、エボVIに“エボ6.5”ともいうべきトミ・マキネンエディションも正式にラインアップされた。マキネンはその時代、ラリーアートの顔でもあった名選手だ。
閑話休題、トミ・マキネンの勝つためのセッティングは、チーム内のほかのドライバーにとってはなかなかの難物だったという話を聞いたことがある。真偽のほどは分からないが、どんなセッティングだったのか興味深い。
TMRでのヤリスWRカーの活躍を見ると、トミ・マキネンはドライバーとしての力量とチーム運営能力が両立しているのが素晴らしい。TTEの設立者だったオベ・アンダーソンといい、トヨタはいい人材に恵まれている。
ところでラリーとは全く関係ないが「みなとみらい」で取材をしていたら水陸両用バスらしき乗り物を見かけた。横浜では観光用でも普通に走っているのだろうか?乗ってみたい。