日下部保雄の悠悠閑閑
試乗会三昧の秋
2020年11月2日 00:00
最近試乗会が多く、いろいろと飛び歩いているのでPCの前に座っている時間がない。という言い訳は通用しないだろうな、編集担当には……。というわけで、いろいろ乗せてもらった試乗車の中で2台を紹介しておこうと思う。
まずRAV4の特別仕様車、Adventure“OFFROAD package”に特設コースで試乗した。
このモデルは北米でTRD仕様として人気を博しているパーツを使って、日本でも特別仕様として販売されることになったモデルだ。RAV4を生産する高岡工場側からの提案もあって、日本オリジナルのアクセントも入っての特別仕様として実現したという。タイヤはファルケンのオフロードタイヤでサイズは225/60R18となり、標準の19インチから18インチにインチダウンしている。オフロード走行ではインチダウンをよく行なうが、なるほど本格的だ。
サスペンションもショックアブソーバーとバネが変更されており、タイヤ外径が少し小さくなった分を差し引いても最低地上高は10mmアップした210mm。この10mmは結構大きく、強化ショックアブソーバーの減衰力はフロントがリアに比べて少し強くされているので、突起であおられることも少なくなっている。外装も強固なルーフレールなどの装着もあり、ひと目で標準車とは異なる。なかなかの迫力だ。
特設コースには22度バンク路とモーグル路、20度の登坂路が用意されていた。車高が高くなっているのでアプローチアングルも余裕ができ、難なくバンクに上った。並みでない姿勢にひっくり返りそうな恐怖感がある。杞憂に終わるのは分かりきっているものの、それでも22度のバンク角は気持ちわるく、ちょっとお尻がムズムズする。マルチテレインセレクトはノーマルで充分だ。
モーグルでは対角線上のタイヤが浮いた状態になり、トルクが抜けて動けなくなる。強引にアクセルを踏んでいるとやがてブレーキをつまんだりしながら脱出できる。しかし、マルチテレインセレクトをROCK&DIRTにすると、空転状態を感知すると同時にアクセルの動きに鈍感になって、コントロールしやすく、こちらも無理なく抜け出せる。
このような場面で走るチャンスはあまりないと思うが、経験していると慌てないで済む。ディーラー試乗会などのチャンスがあればトライしてみることをお勧めする。
210mmの最低地上高はありがたく、外から見ていると顎や腹を擦りそうで擦らないのがよく分かる。また、タイヤの空転状態やモード違いによるトラクションも理解しやすい。
登坂路はではまさに天を仰ぐような勾配だがノーマルモードで難なく上り、下りはダウンヒルコントロールで勝手に4輪を制御して急勾配を下りていくことができる。これまでも何回か経験しているが、やはり最新の4WDはすごいなと思う。
この特別仕様車はAdventureに比較して15万円アップの346万円に収まっており、装備の割には抑えられた価格だ。
もう1台はアウディのA4。ビッグマイナーチェンジで外板のプレスも変えて、おとなしかったA4の自己主張が少しだけ強くなった。試乗したのはA4 35 TFSI advanced。2.0リッターの直噴ターボで150PS/270Nmのエンジンを積んだFFだ。久しぶりのA4だけにどれだけ変わったんだろうと思いながら乗り込んだが、その走り味は実になめらか。改めて欧州車のコツコツと積み重ねられた進化に感心した。
乗り心地は路面のザラツキを正直に伝えて少しゴツゴツとしたフィーリングだが、乗り心地がわるいかといえばそんなことはなく、上下振動にはならずにドライバーは揺さぶられない。
エンジンの回転フィールもトルクの厚みを感じ、惚れ惚れとするような懐の深さだ。レスポンスも適度に鋭いが、過敏でないところが好ましい。
全幅1845mmとそれほど小さいクルマではないのだが、ハンドルの操舵力も絶妙で、狭いワインディングロードもピタリと路面に張り付くように走る感触がなんとも言えない気持ちよさ。ついついペースが上がってしまう。フロントヘビーのFFの感触がなくニュートラルなステア特性を持っている。
そういえばその昔、沖縄で乗ったA4に感激したのを思い出した。今回の完熟A4はその時の驚きに匹敵する。A4 35 TFSI advancedの車両本体価格は523万円。試乗車はオプション分64万円分が乗り、乗り出し価格600万になろうとするが、価格には理由があった。魅力的なクルマに出会えて帰りの道も軽やかだった。