日下部保雄の悠悠閑閑

成長期

鷲神社は由緒正しい神社で、威厳のある社殿に心清められます。次々と七五三の親子連れが訪ねてきました

 日本では子供を授かると安産のお願いに神社へお詣りし、無事誕生するとお礼と健やかに育つようにお宮詣りをする。さらに誕生してから一生食べるのに困らないようにと「お食い初め」の儀式があり、女の子は3歳と7歳に、男の子は5歳で七五三が待っている。

「子供たちが健やかに育ちますように」と、神様のご加護をお願いする昔からの儀式だが、わずか3週間でこのすべてを経験するとは思いもよらなかった。もちろんジジサマとしてである。

 最初にお詣りしたのは水天宮。もともとは久留米藩で重要な神社だったが、江戸時代に江戸屋敷に分霊として祀られた。本来なら武家屋敷内の神社なので庶民はお詣りできないが、幕府の許可を得て日程を決めて開かれるようになったという。庶民にとっても安産の神様として大いに賑わった。この度量の大きさに当時は「情け有馬の水天宮」ともてはやされたという。

 お宮参りが済んで、今度は安産のお守りをいただこうと社殿に向かった(こちらも1人のみ入れた)。ところがこちらの勘違いで図らずもお祓いしてもらうことになり、「いいのかジジで?」という焦りと疑問が湧く。「代理の方でも大丈夫ですよ」の言葉に励まされ、アウェイの中、緊張の儀式が済み、冷や汗をかきかき無事お札をいただけたのでした。

 翌週はお食い初め。すっかり手順を忘れていたが、親たちは手際よく歯固めの石、赤飯、お吸い物、煮物、香の物、鯛を順次赤ちゃんの口の端に触る。最近はベースキットをネットで注文できるようで便利になったものだ。こちらで用意したのは大人が楽しむお酒だけ。

お食い初めセットです。大きな鯛はスーパーで安かったです。そしておいしい!

 本人は「ナニされるんだろう」と、不信気に眉間にしわを寄せていたが無事終了。「君は一生食べるに困らないぞ」。後は大人達が御相伴にあずかったのは言うまでもない。

 さて最後は5歳になった男の子の七五三のお祝い。鷲(わし)神社でお祓いしてもらった。鷲神社はいわれによると文保2年(1318年)に中興する、とあるから鎌倉時代末期に建立された由緒正しい神社。御祭神は日本武尊、誉田別命、国常立命とあり、ありがたさに自然と頭を垂れる。そんな大人の関心を知ってか知らずか、当人は遊びながらもなんとかジッとしており、千歳飴やメダル、折り紙などをたくさんもらって無邪気に喜んでいた。何しろヤンチャボウズなのでホッとしたのはこちらの方だったのだが……。

大人の思惑に関係なく、晴れ着で遊ぶ当人です

 日本の伝統的な行事と並行して最新のクルマたちにも多数触れた。いわゆる電動車である。

 メルセデス・ベンツ Eクラスは48Vマイルドハイブリッド、日産 キックスはe-POWER、つまりシリーズハイブリッド。アウディ e-tronはバッテリーEVだ。

 メルセデス・ベンツのE 200 スポーツは1.5リッターの直4ターボに48Vマイルドハイブリッド。スタートから滑らかに加速する。Eクラスにターボとはいえ1.5リッターとは小さなエンジンだと思っていたが、予想を覆すシットリした走りで、高速クルージング含めて自分の使い方では全くストレスを感じなかった。マッタリとした走りはやはり信頼のメルセデスだ。車両本体価格は769万円でした。

メルセデス E 200 スポーツ(富津ブリストルヒル ゴルフ&レジデンスにて)その味はメルセデスならでは

 一方キックスはFFでパワートレーンはe-POWERのみ。HR12DEエンジンは出力を5%、バッテリー出力も14%アップしている。ノート e-POWERでは低速でのエンジンの発電ノイズが大きかったが、キックスではEV走行の幅を広げて静粛性が格段に高くなった。合わせて車体剛性も上がり、ショックアブソーバーを見直すなど遮音性、乗り心地も大きく進化してコンパクトSUVとしての満足度は高い。価格は275万9900円だ。

キックス。進化したe-POWERは静かで快適でした

 最後にアウディ e-tron スポーツバック。SUVのクワトロである。サイズは4900×1935×1615mm(全長×全幅×全高)とぐんと大きくなる。出力95kWhの大きなバッテリーを搭載し、WLTCモードで405kmの航続距離を持つ。さすがにこれだけ大きなバッテリーを積むと重量2.5tを超え、走りはそれにふさわしい落ち着いたもの。なじみやすいインターフェースと走りの質感で、老舗自動車メーカーの開発したEVらしい仕上がり。こちらは1stエディションで1346万円とプレミアムEVらしい価格になっている。

e-tron。いよいよやってきたバッテリーEV。欧州メーカーは厳しい燃費規制で急速にEVに傾注しており、その技術進化に注目したいところ

 さて、日本の通過儀礼を越えた子供たちが成長した時、日本のクルマ社会はどんな姿をしているのだろう? FCEVはどれだけ増えているだろう? EVは日本でどれだけ定着できているだろう? そしてICEの将来の姿は? いろいろ想像するのは楽しいゾ。

日下部保雄

1949年12月28日生 東京都出身
■モータージャーナリスト/AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員/2020-2021年日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員
 大学時代からモータースポーツの魅力にとりつかれ、参戦。その経験を活かし、大学卒業後、モータージャーナリズムの世界に入り、専門誌をはじめ雑誌等に新型車の試乗レポートやコラムを寄稿。自動車ジャーナリストとして30年以上のキャリアを積む。モータースポーツ歴は全日本ラリー選手権を中心に活動、1979年・マレーシアで日本人として初の海外ラリー優勝を飾るなど輝かしい成績を誇る。ジャーナリストとしては、新型車や自動車部品の評価、時事問題の提起など、活動は多義にわたり、TVのモーターランド2、自動車専門誌、一般紙、Webなどで活動。