日下部保雄の悠悠閑閑

レクサス、三菱自動車、2台のマイナーチェンジモデル

IS300。三国峠側から富士と山中湖を望む

 レクサスのオールラインアップ試乗会は快晴に恵まれた富士スピードウェイを起点にして行なわれた。中でも秀逸だったのは最近ビッグマイナーチェンジをしたレクサスの小型セダン「IS」だ。デビューは2013年ですでにモデル末期と思われていたが、リア部分の外板も変えるなどデザインにも大きな手が加わった。特にリアエンドのデザインが変わったことで特徴的なサイドウェーブデザインとよくなじむようになったと思う。

 試乗したのは2.0リッターターボの「IS300」。ステアリングホイールは小径できびきびと反応する。ただしクイック過ぎずにちょうどよく、操舵力も重すぎず軽すぎずちょうどいい。シットリしたフィーリングで自分にはジャストフィットだ。

 例えば直進時の切り始めからコーナーで保舵するまでの一定のリズムができ、途中で修正することがほとんどない。

 試乗したのは明神峠から三国峠に向って急峻で曲がりくねった山道が続くコース。富士スピードウェイから山中湖に抜ける峠道で明神峠側からは下方に富士スピードウェイが、三国峠側に抜けると富士山と山中湖が見える絶景ポイントもある。その昔のラリー車ではパワー不足でウンウンと唸って入って上っていたが、今は軽自動車でもスイスイだ。その代わりステアリング操作もアクセルワークも忙しい。

試乗で訪れた三国峠の絶景ポイントで。今年は富士山にあまり雪が付きません

 IS300の心臓部はクラウンなどにも搭載されている2.0リッターターボ。新世代の省エネ型ターボでパンチ力はないが、レスポンスに優れて排気量の大きな自然吸気エンジンのようなフィーリングだ。

 そして素晴らしいのはボディ剛性。徹底的に見直された車体はねじれ剛性も非常に高く、ステアリングの追従性が抜群にいい。サスペンションもよく動いて19インチタイヤを完璧に履きこなしている。その19インチタイヤも縦バネ、横剛性ともによくバランスが取れている。サスペンションと一体になった軽快なフットワークが素晴らしい。

 ホイールとハブとの締結はナットではなく欧州車のようにスタッドボルトとしているが、この締結力も剛性アップに大きな貢献をしていると言われる。

 そして「よくぞここまで」と思うほどきもちのいいハンドリングは使い古された言葉だがFRの醍醐味だ。

 IS300はノーズの軽さもあって、ISシリーズの中でベストハンドリングの1台。TNGAでなくともここまで仕上げられたことにも感嘆した。

 さてもう1台、三菱自動車の「エクリプス クロス PHEV」も改めて実力を見直したモデルだ。アウトランダーで蓄積されたPHEVのパワーユニットを搭載するが、コンパクトサイズのSUVに搭載されたことでさらにスポーティなセッティングになった。

エクリプス クロス PHEVは想像以上に楽しかった。三菱自動車のPHEVと4WDへのこだわりが感じられた

 三菱車にはいろいろとなじみが多い。初代ギャランA II GSでやっとラリーでも成績が残せるようになり、ランサーターボや4WDコルディアターボ、スタリオンターボなどなど、いろんな車種で全日本ラリーに参戦し、学びがたくさんあった。懐かしい思い出だ。

 三菱自動車のラインアップからランサーエボリューションのようなスポーツモデルが消えて久しいが、三菱魂はSUVが継承しており、4WD技術も、そしてそれがもたらすスポーツドライブもSUVに凝縮している。

長尾峠から見たエクリプス クロス PHEVと富士山。ラリーを始めた頃はあまりに長く、果てしなく続く峠道に日本海まで行ってしまったのかと思った、マジで……

 昨年はアウトランダーPHEVで19年モデルへの制御の進化を雪道で知ることができ、今度はエクリプス クロス PHEVでターマックの実力を改めて知った。

 エクリプス クロス PHEVはガソリン車の1.5リッターターボに対して、アウトランダーPHEVと同じ2.4リッターのNAエンジンを使う。駆動力を担うのは前60kW、後70kWのモーターで、その使い方はEVの先駆者だけに制御が細やかだ。

 ドライブモードもノーマル、ターマック、グラベル、スノーとあり、ターマックではキビキビと走り、S-AWCでグイグイとクルマを曲げる。パワフルなコーナリングだ。

 当初のアクティブヨーコントロール(AYC)はクルマ側で曲がってもらう感じがあったが、現代のツインモーター制御ではドライバーの狙った通りのラインに乗せることができる。

 グラベルではトラクション重視の駆動力コントロールとなるので、ドライバーが自分で姿勢を作って旋回したり、トラクションを掛けたい時に向いている。

 13.8kWhのバッテリーは床下に置かれているので低重心で、しかも前後にモーターを搭載しているので前後重量配分が60:40となり、ガソリン車よりも改善されている。そのため操舵時のクルマの姿勢変化や、コーナリング時の安定性は抜群で、ボディ剛性のアップに伴って楽しいハンドリングだった。これはぜひスノーロードで試してみたい1台だ。

 年末に乗った2台のマイナーチェンジモデルでした。

日下部保雄

1949年12月28日生 東京都出身
■モータージャーナリスト/AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員/2020-2021年日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員
 大学時代からモータースポーツの魅力にとりつかれ、参戦。その経験を活かし、大学卒業後、モータージャーナリズムの世界に入り、専門誌をはじめ雑誌等に新型車の試乗レポートやコラムを寄稿。自動車ジャーナリストとして30年以上のキャリアを積む。モータースポーツ歴は全日本ラリー選手権を中心に活動、1979年・マレーシアで日本人として初の海外ラリー優勝を飾るなど輝かしい成績を誇る。ジャーナリストとしては、新型車や自動車部品の評価、時事問題の提起など、活動は多義にわたり、TVのモーターランド2、自動車専門誌、一般紙、Webなどで活動。