日下部保雄の悠悠閑閑

洗足池散策、そして緊急事態宣言

洗足池の春は桜がキレイで、池に映る姿も美しい

 久しぶりに大田区にある洗足池まで散歩に行ってきた。歩いて30分ぐらいだ。中学時代は叔母の家から洗足池のそばにある大森六中に通っていたのでなじみがある。当時から佇まいは変わらず、住宅街の中にあるひっそりとした池で一角に勝海舟の碑があった。

 生意気な中学生時代は江戸城開城の功労者、勝海舟が「なぜここに?」と不思議に思ったが、成長してから徐々に勝海舟と洗足池の因縁を知ることになった。

 勝海舟が大田区の池上本門寺に本陣を構えた西郷隆盛との江戸城開城についての交渉の際に洗足池に立ち寄り、この地が気に入って後年別邸を建て洗足軒と名付けたが、そこは通っていた大森六中のある場所だったという。

カモメが多数飛来して遊んでいく。遠方にいるのは鴨だろうか

 勝海舟はどのようなルートで往還して洗足池に魅了されたのだろう。クルマのない時代、籠か馬で移動したと想像するが現在のルートとは大きく変わっていたに違いない。当時の道の状況やルートにも興味が湧く。どんな風景を見ながら移動していたのだろう。

 近くには大田区管轄の勝海舟記念館もあり、今も隣接した敷地で工事が始まろうとしていた。なかなか趣のある建物は昔の清明文庫、自分の中学時代は鳳凰閣と呼ばれており、現在は隣接して新しい記念館も増設されている。残念ながら行った時は閉館していたが勝海舟を偲ぶさまざまな展示品があり、次の機会に訪れてみよう。

 洗足池には鴨やカモメが羽を休め、周囲の喧騒から切り離されたような空間はホッとする。

杭の上が好みらしく、日向ぼっこしながら毛づくろい

 で、お正月明けで現実に戻り、そろそろ稼働をという時に緊急事態宣言が出され、ますます緊張感が必要になった。個人的には集団で移動することはほとんどなく、事務所に行っても三密にならないので正直戸惑うばかりだ。

 そして正月明けに大学の同期会会長から発せられた緊急のお願いは緊迫したものだったので、改めてその一部を紹介しておこう。

 発信者の会長は医療関係者だ。

 日本は世界から見れば感染者は少ないと思われている。実際にそうなのだが、使用可能なコロナ用病床は満床に近づきつつあり、つまり医療崩壊が間近に迫っていることを示唆している。

 新型コロナウイルスについては前回の緊急事態宣言で感染者が抑えられたタイミングで時間の余裕ができ、その正体は少しずつ解明され、治療薬も症状によって効果があることが分かってきた。

 個人的には新型コロナウイルスは重篤な肺炎を引き起こすと考えていたがそれだけではないようだ。

 免疫系が暴走して(サイトカインストームと呼ぶらしい)毛細血管に至るまで血栓を作って人体を攻撃し、多臓器不全を起こすこともあるという怖い病気だ。

 これに対する効果がある治療薬も見つかっているが、治療するには毎日血液検査をして、CTによって肺の状態を確認する必要がある。いずれにしても入院しなければこれらの治療は受けられない。

 もし、よく言われるようなECMOを使って肺を休めなければならないとすれば、24時間体制で管理するのに10名のスタッフが必要とされ、そもそも操作できる医師も限られているという。

 これだけ医療従事者が新型コロナウイルス対応に追われると、他の重篤な病気やケガで救急車を呼んでもたらい回しになって治療をうけられないかもしれない。

 メッセージは後半では政府のセーフティネットにもおよび、未来からの借金を返済するためにも早く新型コロナウイルスの収束を実現し、次世代の負担を減らすよう呼びかけている。

 そのためにワクチンは現在、人類が持っている新型コロナウイルスに対する数少ない武器の1つで、接種可能な人から受けるように促していた。

 このようなメッセージに接すると、現場の緊張感が伝わり、同時にコロナ患者を受け入れている病院、看護師や医者の逼迫した様子も目に浮かぶ。医療従事者にはただただ頭が下がるばかりだ。

 早く自動車にかかわる業務を再開したいがもどかしさだけが残る昨今だ。

近くの奥沢神社で初詣。神社でクロネコは縁起がよいというのでおすそ分けです。これは初詣に行った次男が撮ってくれました

日下部保雄

1949年12月28日生 東京都出身
■モータージャーナリスト/AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員/2020-2021年日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員
 大学時代からモータースポーツの魅力にとりつかれ、参戦。その経験を活かし、大学卒業後、モータージャーナリズムの世界に入り、専門誌をはじめ雑誌等に新型車の試乗レポートやコラムを寄稿。自動車ジャーナリストとして30年以上のキャリアを積む。モータースポーツ歴は全日本ラリー選手権を中心に活動、1979年・マレーシアで日本人として初の海外ラリー優勝を飾るなど輝かしい成績を誇る。ジャーナリストとしては、新型車や自動車部品の評価、時事問題の提起など、活動は多義にわたり、TVのモーターランド2、自動車専門誌、一般紙、Webなどで活動。