日下部保雄の悠悠閑閑
プロトタイプの86とBRZに乗ってきた
2021年7月26日 00:00
袖ヶ浦フォレストレースウェイで86とBRZのプロトタイプに乗ってきた。すでに年頭から北米モデルがチラチラと姿を見せていたので新鮮味は薄れたが、実際にハンドルを握れるのは格別だ。
ピットロードに並べられた新旧の86はシルエットがよく似ており現行型もプロトタイプの群れの中に溶け込んでいた。タイヤも積める実用性の高い4座FRクーペを作るとこんな形になるのかもしれない。
改めて現行の86に乗るとやはり楽しく、作り手側のこんなクルマを世に出したいという夢を再確認した。水平対向2.0リッターのキレの良さとお尻からクイクイと動く感じは懐かしくも新鮮だ。
試乗するとプロトタイプの86とBRZ、両車は意外なほどキャラクターが異なっていたのに驚いた。
現行86のクイックな味はプロトタイプの86で継承されていた。フロントの入りが早く、リアは少し固められてスライドさせやすい。86のユーザーがパワフルな次世代の86になってもすんなりドライブできるだろう。
一方のBRZはコーナーで各輪への荷重がバランスよく乗る感じ。前後のロール特性もスマートだ。基本的に86もBRZも同じ路線にあるが、スポーツカーをダイレクトに伝えたい思いは86に、安定性と楽しさの両立はBRZにつながっている。
この味を実現するステアリングレスポンスにフォーカスすると、86は従来と同じ鋳鉄のナックルアームを使ってダイレクト感を重視し、BRZはアルミのナックルとしてバネ下重量の軽減を重視した味付けになっている。アルミナックルは合計3kgの軽量化になる。
このようにキャラクターに差をつけることができたのは車体剛性が飛躍的に上がり、エンジンパワーも上がったことでダンパーの減衰力の違い、バネ常数の違い、スタビライザーの違いなど微妙な変更をダイレクトに感じ取れるようになったからだ。車体の曲げ剛性は60%、ねじり剛性は50%アップが図られているので、ドライバーとクルマとの一体感はいっそう高まった。さらにルーフにはアルミが使われておりスチールよりも30%、2kgの軽量化が図られている。生産にはアルミのひずみなどに配慮しながら開発された新技術が使われている。たかが2kg、されど2kgである。ルーフの重量は意外とハンドリングに効くのだ。
トランスミッションは6速MTと6速ATでどちらも面白かったが、特にATのプログラムが進化して、マニュアルに近い感覚で絶妙にシフトしてくれる。サーキットのスポーツ走行でも満足感は高い。十分にスポーツ感覚を楽しめるので2ペダル派には朗報だ。
エンジン特性も異なっている。86はレスポンスが早く、高回転域まですっぱりと回る。一方、BRZは低回転では穏やかな反応になっており、中速回転域から力を出している。前車は多少のショックは許容し、後者は雪道でも走りやすい制御を入れたことで特性の差が現れた。
今どき珍しい94×86mmというビッグボアの2.4リッターエンジンも驚きだったが、決して想像されるような高回転型ではなく、低回転からトルクがありレスポンスよくシュンと伸びて使いやすいエンジンだった。最高回転数はこれまでと同じ7500rpmをキープしている点も注目だ。NA大排気量エンジンはやはり気持ちがいい。
このエンジンは重くなっているかと思ったら、これまでの2.0リッターと比較すると単体では5kg、オイルクーラーなどを含めても1.5kg軽くなっている。
いろいろと進化したプロトタイプだが正式発表まではもう少し待たなければならない。実際にユーザーはどちらを選んでどう料理するんだろう。そんな遊び心を持たせるのが86でありBRZだ。
繰り返しになるが、同じ車体、エンジンでもBRZと86ではキャラクターが異なっており、GRとスバルのスポーツクーペに対する考え方を知ることができ面白い試乗会だった。
来年新型車になるだろう86/BRZレースはどんな仕様に統一されるのか、こちらも興味がある。