日下部保雄の悠悠閑閑
COTYの特別賞と2022年のWRC
2022年1月3日 00:00
2021-2022 COTYの実行委員会からFIAの3大世界選手権を制したトヨタ自動車 TOYOTA GAZOO Racingと本田技研工業に日本カー・オブ・ザ・イヤー特別賞が授与された。
今年のイヤーカーを選ぶCOTYで知られるが、特別賞は大きな話題となった事案や人物についてCOTY実行委員会で協議して決定される。WEC/WRC/F1のチャンピオンはまさに特別賞にふさわしい。世界を見渡しても、1つの国で3大タイトルを取ることは珍しいと思う。
TOYOTA GAZOO Racing はヤリス・ワールドラリーカーを駆ってWRCのドライバー、コ・ドライバー、そしてコンストラクターのトリプルチャンピオンを獲得し、加えてル・マン24時間も組み込まれる世界耐久選手権でのチャンピオンとなったことを称えて。
本田技研工業はレッドブル・ホンダのマックス・フェルスタッペンが初となるドライバーチャンピオンを獲得したこと。ホンダエンジン搭載車としてはアイルトン・セナ以来、実に30年ぶりのタイトルとなった。最終ラップの激戦はレース史に残るものだった。ホンダは今シーズンでF1から撤退を表明しているだけに最高の勝利だったに違いない。コンストラクターズタイトルはメルセデスに譲ったもののホンダエンジンはシーズン最多の11勝を挙げたことでもその強さが分かる。
TOYOTA GAZOO Racingとホンダには改めて心よりお祝いしたい。この偉業をCOTY実行委員会がすぐに表彰したことは素直に嬉しい。
で、話題は2022年のWRCについて。すでに今年のWRCはワールドラリーカーではなくラリー1というカテゴリーになるのは前々回でも紹介したとおり。ラリー1はFIA指定のハイブリッドユニットを搭載し、自由度の大きなパイプフレームが使われる。想定してた量産フレームを使うチームはなさそうだ。また、コスト削減でセンターデフを廃止。シーケンシャルシフトの5速トランスミッションに限定、サスペンショントラベルも270mmに規制されるなど、クルマの作り方、走らせ方も大きな影響を受ける。
さらにハイブリッド。システムはプリウスのような燃費優先のシステムではなく、エネルギーマネージメントを競うパワーゲームに使われる。
100kWのハイブリッドバッテリーを使うのはなかなか難しい。スタートしてから充電できるのは各レグスタートに限定され、競技中、バッテリーに充電するのは自ら回生するしかない。
ハイブリッドシステムの電気をどこで動力に変え、どこで回収するかチームの戦略も難しそうだ。
ドライバーの責任も大きくなる。強いブレーキを短時間で掛けた時と、長時間ブレーキを掛けるのでは回生量が異なり、後者の方がチャージできる。しかしラリーはエコドライブではない。タイムを競う競技だ。
それでもチームは精密な戦略を練り、バッテリーの効率的な使い方ができるよう計算をするだろう。セクションのこのポイントでバッテリーはここまで残し、エクストラパワーの100kWが有効に使えるステージで全開なんていう指示がありそうだ。
ドライビングではコーナーでブレーキをあてながら大きなドリフトアングルを作る方が回生量の点で有利になるんだろうか?
そしてグラベルはまだイメージの余地があるが、ターマックでは直線的にガッと入ってブレーキをかけ、回転半径を小さくしてガバッと加速するタイプのドライバーは不利になりそうだ。
開幕はターマック/雪のツイスティなモンテカルロ、そして高速圧雪のスウェディッシュに続く。ラリー1の走り方は? また各チームの戦略は? 誰もが頭脳戦にかかわらざるを得なくなりそうだ。
考えると奥が深いが、反面ドライバーの腕とマシンの速さで競った時代のラリーが懐かしい。誰かこの難しそうなラリーを解説してください。