日下部保雄の悠悠閑閑

東京オートサロン2022

東京オートサロン開催中の中ホール。奥には大手メーカーが陣取っています

 オミクロン株に置き換わったCOVID-19がこれほどの急拡大で感染者を出すとは思わなかった。その感染力には驚くばかりで、ウイルスの生き残り戦略はしたたかだ。

 一方で爆発的に感染者が増加した英国。今は減少傾向にあり(といってもすごい数だと思う)、ピークアウトの宣言を出してもうマスクを外してもいいという国もある。欧州に遅れて感染者が増加する傾向のある日本はどのように対応していくのか。確かにオミクロン株はすぐそこにも来ている感触が気味悪い。重症化リスクは減ったとはいえ、感染しないことに越したことはない。せっせと消毒とマスクをしよう。

 まだ蔓延防止法が出される前の1月中旬、東京オートサロンに駆け足で行ってきた。とはいうものの、間抜けなことになんとプレス申請が遅れて、半ば諦めていた。ところが哀れに思ったか旧部下が招待券を都合してくれた。プレスと違い取材の自由は利かないが、うれしい心遣い感謝! ありがとう! 2年ぶりに行けたよ!

 TASの感染対策は厳重だ。あらかじめ指示されていた厚労省のCOCOAによる陽性者との接触情報のアプリを更新し、紙チケットに替えスマホに電子チケットを入れ、さらに当日は入り口で千葉市のコロナ追跡サービスに登録した。もともと入場制限が厳しく、例年よりも来場者は絞られている。

 9時開場までの時間、きっと寒いだろうなと思ってハットにコート、マフラーという場違いな格好で並んでいるとなんとなく落ち着かない。東京オートサロンは尖ったクルマの祭典で、来場者はもちろん出展社もカジュアルな服装だが、広報部はジャケットのことが多い。つまり年初の賀詞交換会の意味合いもある。その中途半端な気持ちが服装に表れた。案の定、クルマのニュースの横倉さんには新年のあいさつ代わりに「すごいことになってますね」と見透かされた。

 ま、そんなことはともかく、急いで会場を回ると例年以上にTASでの発表が多かった。予定されていたプレスカンファレンスは変異株の急速な拡大で多くが直前でオンラインになったため、いつものプレスが押し掛ける光景は見られなかった。いずれにしてもプレスパスがない以上、取材には制限がある。TOYOTA GAZOO Racingはちょうどいい時間に行けなかったので、GRヤリス GRMNなどを横に見ながら通過。こちらはオンラインで後日拝見した。豊田章男社長とGRカンパニーの佐藤プレジデントとの掛け合いの中にGRヤリスや近い将来のGT3など、ざっくばらんなトークからはこれまでのプレスカンファレンスとは違って踏み込んだ中身がくみ取れた。

TOYOTA GAZOO Racingブース。間が悪くて中には入れなかった。ちょっと急いでいたので残念ながら通過ですが、後日オンラインでプレスカンファレンスを見ました。面白かった

 日産はプレス申請していたジャーナリストでもフェアレディZの国内デビューには別の申請が必要だったようで、入場できないプレスが溢れていた。影も見られなかったことはちょっと残念。こちらもオンラインで拝見。

 三菱はラリーアート復活の狼煙を上げたラリーアートカラーのアウトランダーや、軽EVが展示してあり活気があった。次世代のラリーアートを早く見たい。

 ホンダはステップワゴンのコンセプトモデルと、カモフラージュされたシビックタイプRを間近で見ることができた。ステップワゴンはシンプルな面構成が特徴で、押し出しの強いデザインに疲れたユーザーには選択肢の1つになりそうだ。シビックタイプRは昨年から予告されていたが、すでに完成の域だったスーパーハッチバックのタイプRがさらに何を見せてくれるのか? 早くハンドルを握りたい。

ステップワゴン。シンプルな面にファンが付きそう。いつもミニバンはレイアウトで楽しませてくれます
シビック タイプR。カモフラージュしていても精悍さが伝わってきます。一体どんな走りを見せてくれるのだろう

 そしてスバルブースまで来たところで「アレ?」と視界に入ったのが、スポーツプロトタイプのSTI E-RA CONCEPTだ。現STIで元スバル広報部長の岡田さんが声をかけてくれ(怪しい格好をしていたので躊躇したみたい)、このスポーツカーの開発にも携わっている森さんを連れてきてくれた。森さんには重要な場面でお会いすることが多い。

 E-RAはEVでのクルマの面白さをどうやって伝えていくかを命題にしたマシンで、2シーターのプロトタイプ。車体はカーボンコンポジットで、60kWhのリチウムイオンバッテリを搭載し、800kWの出力を出す。モーターはヤマハとの共同開発。大出力4モーターでスバルらしく4輪を制御する。電気は精密制御ができるが、ドライバーとの一体感のある集合体とするのはなかなか大変だ。

 しかし、今年中には国内サーキットでのお披露目をして、走る姿を見せてくれるという。目標はニュルブルクリンク北コースで6分40秒(400秒)を切ること。これはとんでもない速さだ。バッテリサイズを考えるとレーシングスピードでタイムアタックできるのは1~2周だろう。EV時代もドライブする楽しさをスバル流にどのように開拓していくか興味深い。

STI E-RA CONCEPT。4輪モーターのレーシングカー。今年中には走る姿を見せてくれるようです。楽しみ!

 いいもの見たな、という感激が熱いうちにソソクサと帰ろうとしたら、竹岡圭ちゃんから呼び出し電話が鳴った。その昔、東海ウォーカーで連載したときの担当者Tさんがいるから急いで来いと、旧交を温めたときの写真です。

怪しい格好をした私と圭ちゃんの間に入っているのが旧交を温めた東海ウォーカー時代の担当者Tさん。その友人、そしてSさんでした。出演ありがとう
日下部保雄

1949年12月28日生 東京都出身
■モータージャーナリスト/AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員/2020-2021年日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員
 大学時代からモータースポーツの魅力にとりつかれ、参戦。その経験を活かし、大学卒業後、モータージャーナリズムの世界に入り、専門誌をはじめ雑誌等に新型車の試乗レポートやコラムを寄稿。自動車ジャーナリストとして30年以上のキャリアを積む。モータースポーツ歴は全日本ラリー選手権を中心に活動、1979年・マレーシアで日本人として初の海外ラリー優勝を飾るなど輝かしい成績を誇る。ジャーナリストとしては、新型車や自動車部品の評価、時事問題の提起など、活動は多義にわたり、TVのモーターランド2、自動車専門誌、一般紙、Webなどで活動。