日下部保雄の悠悠閑閑

氷上ドライビング@女神湖

桟橋からの湖上。今年は氷が厚くコースも大きくとれていました

 毎年恒例となっている女神湖のiceGUARD 7&PROSPEC WINTER Driving Park。暖冬、コロナウイルスで2年続けての開催断念だったが、今年は女神湖のオープニングイベントとして開催できた。凍結した湖をスタッドレスタイヤで走るとサーキットだと100km/h以上で起きることが氷上では20km/hで起きる。面白くて安全、何回も走りたくなる。私が開催してきたドラスク関係では女神湖でのイベントが一番長くなり、もう十数年になるだろうか。

 Driving Parkとしたのは、学生時代に仲間と真剣に合宿して昼に夜にジムカーナやラリーの練習をしてそこで得られたものが大きかった。その再現を手伝えないかとスクールと走行会をミックスした形にした。インストラクターの役割はコーチでもありヒントをくれる友人だ。

 今年の女神湖は早くから凍結が始まり状態はすこぶる良い。氷の厚さは30cmにもなりコースは大きく作ってもらえた。

 コースは3種類あり、①ブレーキゾーンにはスラロームを加えて速度のコントロールをトレーニングでき、②アクセルゾーンは円旋回が2か所、8の字が2か所。③ハンドリングコースは前半高速、後半トリッキーなコーナーが続くテクニカルなコースを作ってもらった。

スタッフの誘導で湖上のコースに進みます。先頭の軽トラは緊急用車両、というかイントラが乗ってきました

 参加車はアルトからロードスター、ポルシェまでバラエティに富んでいる。早朝、日が昇り切る前に三々五々女神湖センターに集まり、下まわりを洗車した後に湖に降りてグループごとに整列する。

 コロナ対策でブリーフィングはすべて湖上だ。氷上に立った瞬間、今日の滑りやすさを体感することになる。油氷がいたるところに顔を出し油断するとすぐに転ぶ。下からジワジワと這い上がってくる冷気の中、皆さん真剣に聞いてくれた。

朝の女神湖センターからのコースの光景。見ているだけで凍えそうな湖上ですが、ブリーフィングも行なわれました

 参加者はリピーターが多く、初めて氷上を走るドライバーはほとんどいない。それだけに速度のコントロールに慣れており、最初から雪の中に埋まってしまうクルマは出なかった。

 スラロームコースで曲がり切れずに雪の壁に当たるクルマも見られたので、パイロンの間隔を調整して走りやすくした。走りやすくなった分、ハンドル操作が追い付くようになり、徐々に速度コントロールしながら早いタイミングでハンドル操作ができ、きれいなスラロームが完成していく。

コースの青い部分は完全に要注意。それぞれ任意のコースに入って持ち時間内でインストラクター付きで思い思いに練習します

 円旋回では4WDの独壇場だ。ただ最初にフロントタイヤのグリップをうまく捉えられないと、逆に後輪から押し出されてズズーとアンダーステアとなってしまう。

 いきなりアクセルターンでテールをスライドさせるのは難しい。少しでも氷の上に雪が乗っているところでフロントタイヤをグリップさせて円旋回の姿勢を作り、アクセルを躊躇なく踏めればグルグルとドーナツターンができる。だんだん慣れてくると長い時間ターンを繰り返すことができるようになるので、姿勢の捉え方とアクセルワークの両方を体得できるいい練習になる。

 スバルは初期が入りやすいが、すぐにフロントが押し出される傾向にある。低重心フラット4の特徴なのだろうか。その分振り回してしまえばコントロールはしやすそうだ。

 FRとFFはサイドブレーキが使える場合は、その引くタイミングと引いている時間をアドバイスするとクイっと鋭角的に旋回するようになった。サイドブレーキが使えない場合はひたすら待ちのドライビング。グリップの限界を知り、ハンドルを切りすぎでアンダーとなったら、それを戻してグリップを回復するまで待つことを練習してもらう。これ、意外と大事でデリケートなのです。

ミッドシップのMR-Sも円旋回を巧みに回っています。アクセルワークがうまい!

 ハンドリングコースは最初の直線と長い高速コーナーで速度をキチンと落とさないと続くRがきつくなっているコーナーでアウトの雪壁のお世話になる。このコースの後半は完全なアイスバーンになっているので、滑り始めると止まらなくなり雪壁のお世話になってしまう。

 通常のコーナリングラインは無視して、小まわりと雪の路面、つまりグリップするところを探して走るとミスが少なくなる。一輪でも雪に乗っていると意外とグリップするものだ。

 これは公道でも応用でき、アイスバーンよりも圧雪を選ぶと安定して走れる。

新型アクア E-Fourも登場。スタンバイ4WDでフロントのアンダーが出そうになりながらバランスとって曲げてました

 1日湖上にいて、いろんなクルマ、いろんなドライバーの走りを見てこちらも勉強になった。帰り際に「楽しかったです!」と言ってもらえたのが嬉しく、東京へも道のりもウキウキだった。来年も皆さんに会えるように頑張ります。

日下部保雄

1949年12月28日生 東京都出身
■モータージャーナリスト/AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員/2020-2021年日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員
 大学時代からモータースポーツの魅力にとりつかれ、参戦。その経験を活かし、大学卒業後、モータージャーナリズムの世界に入り、専門誌をはじめ雑誌等に新型車の試乗レポートやコラムを寄稿。自動車ジャーナリストとして30年以上のキャリアを積む。モータースポーツ歴は全日本ラリー選手権を中心に活動、1979年・マレーシアで日本人として初の海外ラリー優勝を飾るなど輝かしい成績を誇る。ジャーナリストとしては、新型車や自動車部品の評価、時事問題の提起など、活動は多義にわたり、TVのモーターランド2、自動車専門誌、一般紙、Webなどで活動。