日下部保雄の悠悠閑閑

スーパー耐久の公開練習を見に行った

Aパドックからコカ・コーラコーナーを見る。Aコーナーの方が自分にはなじみがあります。ここで見ているだけでもいろいろな癖が見てとれます

 そろそろ3月も目前。モータースポーツの開幕もすぐそこだ。活況を呈するスーパー耐久の公開練習日に富士スピードウェイを訪ねた。

 公開練習は富士24時間レースでの夜間走行も視野に入れて行なわれた。第1戦は3月20日の鈴鹿だが、公開練習ということで現場の雰囲気はのんびりしたもの。

 スーパー耐久は5クラス+4クラスの計9クラスの車両が走り、年々人気が高まっていて、今年の年間エントリーは61台と多く活況を呈している。総合優勝はなく、多くのクラスで優勝者が出るのはアマチュアレースにとっていいことだ。

 私が参加していた頃はS耐の前身であるN1耐久。その当時も毎回予選落ちが出るほどの人気があったが、主流はVTECシビックだった。それほどお金をかけないでもできたが年間経費は結構な額になり、とてもスポンサーがなければできなかった。現在のS耐車両を見ると上のクラスはかなり大変だろう。

 話が脱線した。現在のS耐が活況なのはGT3車両からフィットまで、数多くの車種が走れる土俵があるからだと思う。ベースとなっていたST-1~ST-5のクラス以外にST-XやST-Z、ST-TCRがあり、さらにST-Qクラスが加わってモータースポーツファン以外の注目を集めることになった。

 そう。モリゾウさん率いるルーキーレーシングがカーボンニュートラルを目指した水素カローラを駆ってレースに参入したことで、経済誌まで取材に訪れるようになった。

 世の中にないクルマを走らせるのは主催者と参加者、そして参加する当事者の合意がなければ混乱する。ST-Qクラスは将来的な実験車両で順位もつかないという合意でスタートしたために、周囲の理解も得られたように感じた。昨年暮れからはST-Qクラス内で順位がつけられるようになり、今年は静かなバトルが繰り広げられるはずだ。車両はレースだから速さを求めるのは当然だが、その中でもFIAも合意する厳格なルールの元に開発され、本来の排気量に近いクラスの速さに収まっている。

 その水素カローラではモリゾウさんもドライバーを務め、順調に仕上がって昨年はレースごとにいろいろなテーマを持って参入した。ラップタイムも確実に速くなっており、今年の公開練習では2分フラットぐらい。シーズン中には切れそうな気配がする。

 そして今年は5台の車種が登場する。ルーキーレーシングからは水素カローラとともに1.4リッター3気筒ターボを86に搭載した後輪駆動、しかもカーボンニュートラル燃料を使うレーシングカーが走る。これが結構速くて、3気筒特有のボコボコという排気音を残して富士スピードウェイをST-Qクラストップの1分52秒ぐらいのタイムで周回していた。ちなみにトップタイムはGTRやAMG GTのST-Xクラスで1分39秒台と速い。

ピットには入れなかったけど、86に新規の1.4リッター3気筒ターボを積み、カーボンニュートラル燃料で走る。結構速くてビックリ!

 ST-QクラスのセカンドタイムはオリジナルのNA2.4リッター水平対向エンジンを搭載したBRZで、こちらもカーボンニュートラル燃料を使う。後半の走行枠からカーボンニュートラル燃料を使う予定になっていた。86の1秒落ちぐらいでラップを刻んでいた。

こちらはオリジナルの2.4リッターの水平対向4気筒を積んで同じくカーボンニュートラル燃料で走るBRZ。エンジンは違えど86と1秒以内で走ってました

 空気が乾いて気温が低いという理想的な条件だったが、それぞれの燃料はどんな特性を持っているのだろうか。

 マツダはデザインを引っ張る前田常務も乗るディーゼルターボのMAZDA2が走る。燃料は軽油の代わりに生物由来のユーグレナを使う。タイムはST-5クラスに混じって快調そう。

 全てのST-Q車両がカーボンニュートラルの燃料を使い、実戦の場で鍛えていく今シーズンは注目材料が多い。

 メーカーがモータースポーツでクルマを開発するのは自動車の黎明期からのセオリーだが、現在にその姿を見ることができるとは思わなかった。しかもS耐は根っからのアマチュアの場。不思議な光景でもあり、長くその接点が続いてほしいと思った。

 そして5台目のST-Q車両は何だろう? まだ発表になっていない。噂のGT3か、興味津々である。

 で、もう1つ。ST-2クラスにはホンダの社員ドライバーが走らせるシビックタイプRがいる。パドックを訪ねて、広報でチーム代表の木立さんや小林さんにごあいさつ。今年は努力が認められて、社内の応援をもらえるようになったという。モータースポーツが認められるのはうれしい。ましてや自動車メーカーなんだからなおさらだ。

ホンダR&Dチーム。シビック TYPE Rでフル参戦予定

 そのホンダR&Dチーム、富士24時間ではゲストドライバーで桂伸一君とフジトモちゃんがハンドルを握る。降りてきたばかりのドライバーとクルマの話をするのは楽しい。目指せ! 表彰台!

Car Watchの編集長にインタビューを受ける、降りてきたばかりのフジトモちゃんでした
今回のアシになってくれたホンダのヴェゼル4WD。快適なシートは新たな発見でした
日下部保雄

1949年12月28日生 東京都出身
■モータージャーナリスト/AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員/2020-2021年日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員
 大学時代からモータースポーツの魅力にとりつかれ、参戦。その経験を活かし、大学卒業後、モータージャーナリズムの世界に入り、専門誌をはじめ雑誌等に新型車の試乗レポートやコラムを寄稿。自動車ジャーナリストとして30年以上のキャリアを積む。モータースポーツ歴は全日本ラリー選手権を中心に活動、1979年・マレーシアで日本人として初の海外ラリー優勝を飾るなど輝かしい成績を誇る。ジャーナリストとしては、新型車や自動車部品の評価、時事問題の提起など、活動は多義にわたり、TVのモーターランド2、自動車専門誌、一般紙、Webなどで活動。