日下部保雄の悠悠閑閑
アウトランダー
2022年2月21日 00:00
三菱会心のヒット作となったアウトランダー。袖ヶ浦フォレストレースウェイとオートランド千葉の2種類の路面で走らせることができ、その進化に三菱がアウトランダーにかける意気込みを感じた。オンロードでもオフロードでもそれぞれの路面でS-AWCによるアウトランダーの特性を体感できたからだ。
車両重量2.2tにもなるPHEVがその重さを感じさせない動きができるのは4輪の駆動力制御が進化したからだ。
そして高速道路でのロングドライブと雪道での走破性を体験するチャンスがやってきた。4輪制御をさらに深く知るチャンスだ。
新アウトランダーはバッテリー容量が20kWと大きく、エンジンをかけることなく電気だけでWLTCモード83kmの走行を可能としているが、いきなり乗り出した高速道路では回生も限られているので、エンジンで発電しながらモーターで走ることがほとんどだ。条件によってはエンジン駆動にもなるがモーター駆動の場面が圧倒的に多い。
ロングドライブを経ていよいよ雪道に入る。履いているタイヤはブリヂストンのブリザック。SUV用のスタッドレスタイヤだ。ここからはドライバー交代で助手席に移動して観察、観察。他人の運転は興味深く勉強になることが多い。
S-AWCはなかなか賢く、NORMALモードはオールマイティだ。オンロードから滑りやすい路面までこのモードでほとんどカバーできる。
電動4WDは急勾配の上り坂でも前後にトルク配分をしながらグイグイと曲がっていく。除雪のいき届いたスキー場に向かうならNORMALモードでも大概は間に合いそうだ。
標高が高くなると圧雪とアイスバーンが混じった路面になる。ドライバーは慎重にグリップのいい路面を選んでいる。ところどころ雪に乗って少しアンダーとなる場面もあるが、横滑りを感じることはない。
目的地の奥志賀までたどり着くと外気温度計は-12度。シートヒーターにヌクヌクと暖められた体で外に出るとさすがに寒い。それになんとも美しい雪山の夕景を見ることができた。何度見ても素晴らしい。素晴らしすぎて写真撮るの忘れたけど……。
よく晴れた翌日、今度は雪道を自分でドライブした。臆病なのでVDC(横滑り防止装置)はONにしたままだ。NORMALからSNOWにダイヤルを回す。
このモードの真価がよく分かったのは、それまでの圧雪から路面が変わりブレーキゾーンからコーナーの前半にかけてシャーベットとアイスバーンが混じった路面が出てきた時だ。想定ではブレーキングからフロントタイヤがグリップするまでラインに乗っているはずだったが路面変化を読み切れず、わずかに想定ラインよりアウトに膨らもうとした。SNOWはモーター出力を低めに制御するだけでなく、アンダーステアを消す方向にブレーキ制御を早めに行なう。膨らみかけたトレースラインはそのままの姿勢を維持することができた。いろんな路面が混じる雪道でも安心している走れるのがSNOWモードだ。ただ重量は約2.2tあるので無理は禁物。タイヤグリップの限界を超えることはできない。
試しにウェットダートや舗装で安定感が高いと感じているGRAVELモードにするとトラクションが高く、ターンインがうまくできない。極端に滑りやすくグリップ変化の大きな路面では微妙な回頭性は苦手だった。前に進もうとする力が強く、GRAVELモードの狙いはもう少しグリップの高い路面でマッチする。さらにグリップの高い路面に合わせたTARMACモードでも雪道では微妙にノーズが入りにくい。
それぞれのモードは当然のことながら路面に合わせられてセッティングされているのがよく理解できた。道幅が狭く路面変化が多い積雪路だからこそ分かることも多い。
待望の積雪路で三菱が培ってきた4輪制御の現在を知ることができた。ランサーEvoに使われた初期のS-AWCはドライバーがクルマに合わせることで早く旋回できたが、逆に合わせられないと走りにくかった。しかしアウトランダーは多くの人が4輪制御の恩恵を感じることができる。三菱が粘り強くこの技術を磨いてきたことが報われた。
多くのことが経験できたスノードライブだった。それにきれいな雪の中にいると久しぶりに滑りたくなった。いやスキーの話です。