日下部保雄の悠悠閑閑

大井松田カートランド

カートの名門、大井松田カートランド

 お世話になっている大井松田カートランド。最近はコロナ禍もあって開催できていないが、レンタルカートを利用していつもお世話になっているスタッフを交えてチーム対抗の耐久レースを楽しんでいた。参加メンバーは全日本クラスのカーターからレーシングドライバー、少しかじったことのあるメンバー、そして全くの素人だ。大井松田育ちでレースMCの實方君の采配でドライバーによってハンディを配分したり、ピットストップの回数を決めたりとなかなか楽しいレースだった。

 大井松田カートランドは1978年にできた名門コースだ。ここで腕を磨いて4輪レースに巣立っていったドライバーは少なくない。GRドライバーの立川祐路選手も大井松田を大切にしている1人。以前、大雨で崖崩れが起きコースが一部ふさがれたときも率先してイベントを開催しようと努力したという。

 大井松田はコースもコンパクトなので、今は大きなレースは開かれていないが、かつてカートが盛んだったころは200台以上が集まる大会も開かれていた。

 また、レンタルカートの制度を充実させ、手軽にカートの面白さを伝えることでカートを身近なものにした実績は大きい。レンタルカートはエンジンも小さく、車体も頑丈に作られているので速度もちょうどよく、耐久性もあり多くのドライバーがカートの面白さに魅了された。

 閑話休題。カートと言えば、オートテクニック誌のライターをやっていたころに初めてカートに乗った経験を思い出す。最初はサスペンションがなく後輪のみにブレーキのきくカートの感覚が分からず、スピンのてんこ盛り。その切っ掛けはSUGOカートコースのオープニングレースに参加するためだった。真夏のコトである。初級のSLクラスとはいえ、プロが作るカートはパワーロスをなくすためにクラッチがなく、スピンすると即エンスト。そのたびにカートから降りて押しがけだ。一発でかかればいいけど、かからない方が圧倒的に多く、レースでは最後には汗まみれでヘロヘロになって押してもエンジンがかからずリタイアしてしまった。初心者とはいえ情けない。

 そんな苦い記憶もあり、また前回の雨で全く話にならなかったカートの乗り方をいつか克服したいと思っていた。

 ある日、何と小学生の孫がカートに乗ってみたいとメッセージを送ってきた。幸い春休み。大井松田の夏苅専務に相談してみたらお昼休みの時間なら走れるというありがたい返事。当日は7分間を1枠として3枠ほど取ってもらった。7分間、意外とちょうどいい時間だ。もしかしたら自分も走りのヒントを得られるかもしれない。

初めてのフルフェイス。なかなかヘルメットのあごひもがかけられません。ガッチリ締めて安全に

 孫にとって最初の4輪車がレーシングカート。当然ながらオッカナビックリでノロノロと走り出す。初めてアクセルで加速、ブレーキで減速、重いハンドルを切って曲がる……。きっと別の世界が広がっていたんだと思う。

初めてのカート。本人大緊張。サッカーのようにうまくいくのか

 こちらは先導しながら様子を見たり、後ろに回ってはブレーキができるかなどを見たり、心配の種は尽きない。生まれて初めてのカートの7分間の時間は長かったのか、短かったのか?

親子3代、カートでコースイン。孫たちはどんな思いでスタートを待ってたんだろう

 次の枠では少し慣れてきてちょっとペースが上がった。「よしよし」と思ったら何とヘアピンでスポンジバリアに埋まってしまった。速度は低いとはいえ、当方少し慌てる。

 スタッフに出してもらってパドックに戻った本人はケロッとしていたが、次の枠はもういいと……。初めてのカートに懲りるのは早いだろうとお父さん、つまり息子が運転する2人乗りカートに同乗させ走らせてみた。地面すれすれに流れる景色、あらゆる方向からやって来る重力。トータル21分間のカート体験に何を感じただろう。

 結局、カート乗りの一端を身に付けるという自分のテーマにはたどり着かなかったが、親子3代で過ごせた貴重な時間は忘れられそうもない。

お父さん、つまり長男の運転する2人乗りカート。こちらは弟を乗せて話しかけながら走っています。弟君、ハンドルをしっかり握って手が真っ赤でした
日下部保雄

1949年12月28日生 東京都出身
■モータージャーナリスト/AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員/2020-2021年日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員
 大学時代からモータースポーツの魅力にとりつかれ、参戦。その経験を活かし、大学卒業後、モータージャーナリズムの世界に入り、専門誌をはじめ雑誌等に新型車の試乗レポートやコラムを寄稿。自動車ジャーナリストとして30年以上のキャリアを積む。モータースポーツ歴は全日本ラリー選手権を中心に活動、1979年・マレーシアで日本人として初の海外ラリー優勝を飾るなど輝かしい成績を誇る。ジャーナリストとしては、新型車や自動車部品の評価、時事問題の提起など、活動は多義にわたり、TVのモーターランド2、自動車専門誌、一般紙、Webなどで活動。