日下部保雄の悠悠閑閑

ラリー北海道

シュコダR5 コバライネン。ロングSSでバーストしてしまい下位に沈んでしまいました。それでも2年連続シリーズチャンピオンを獲得

 久々に帯広便に乗った。以前はスプリントの喧嘩レース、JTCCのエントラント団体JTEAのお手伝いをしていたので毎年行っていたし、N1の十勝24時間レースに参加していた時代も足しげく通ったものだ。

 JTEA時代はやり手の旅行代理店、富士通トラベランスと一緒に飛行機の手配もしていたので、十勝ラウンドでは当時就航していたJASのペンシルジェットMD11(好きでした)を就航したばかりのエアバスに機材変更してもらったこともある。大人数のJTEAメンバーはMD11では収容しきれなかったからだが、何でも可能性は探るもんだなと富士通トラベランスの担当者が教えてくれた。

 帯広便に反応して最初から脱線してしまった。久しぶりの帯広便はラリー北海道観戦のため。旧知の横浜ゴムの野呂さんと同行した。実は全日本戦は何十年ぶりの観戦だ。いや、正直言うと観戦したことはないような気がする。いつもハンドルを握っている側だったし、取材する立場だったりしたからだ。

通りすがりの観客です(?)。左から横浜ゴムの野呂さん、筆者、K-oneの小菅さん

 しかし常に関心を持って注目していたのでどんな様子かは把握していた気になっていたが、やはり実車を見たい。幸いなことに最近のJAF戦は昼間が主戦場だし、ギャラリーステージも設けられているのでスポットは少ないが観戦には困らない。

 ラリー初日。皆がレッキを終えて帯広駅前広場からセレモニアルスタートを切り、愛国のサービスパークに入った頃にはわれわれはもう飲んだくれていたのは言うまでもない。

 翌日5時起きでサービスパークに向かう、途中、北海道に起点を置くコンビニチェーンのセイコーマートに寄って朝食をゲット。セイコーマートは大手コンビニとは品揃えが少し異なり、オリジナルのものも多くあるのでユニークだ。

 併催のアジパシ組はゼッケンが早いのですでにサービスをスタートしており、途中ですれ違う。全日本組はまだ残っていて、旧知の奴田原君やK-ONEスポーツの小菅さんらと旧交を温める。

 奴田原君は昨年からランサーエボXからADVANカラーのプライベートGRヤリスにスイッチ。ワークスともいえるGRチームに果敢に戦いを挑んでいる。GRチームのエースドライバーは勝田範彦選手(ちなみにそのお父さんの勝田照夫選手とは同じラリーで一緒に走りました)。またスバルの新井敏弘選手もいつも奴田原選手と激しく競り合っている。

 でも今年も圧倒的に速いのは、昨年からシュコダ・ファビアR5に乗り換えたH.コバイライネン選手。ご存じのように彼はF1経験もあり、SUPER GTでは優勝もしているトップドライバー。車両の改造範囲が異なることもあって昨年、今年とブッチぎって速い。今年もシリーズチャンピオンが確実視されている。

アドバンヤリスを駆る奴田原選手の陸別SSでのコーナリング
愛国サービスパークでのアドバンヤリス。センターデフ交換したそうです

 そうそうサービスパークで竹岡圭ちゃんにも会った。というか応援に行くよと事前に言っておいたのだが。圭ちゃんはもともとレースのマネージャーでウチの会社にいて独立してタレントからジャーナリスト、ドライバーと幅広く活動をしていることは皆さんご存じだと思う。彼女は別カテゴリーのFJクルーザーでの参加だ。小柄な彼女にFJクルーザーはいかにも大きい、「早めのブレーキ!目指せ完走!」と伝えて陸別のSSに向かう。

FJクルーザーで参加の圭ちゃん。クロスカントリークラスで2位に入賞、おめでとう!

 ここは丘から最終コーナーが見える。コバライネンのシュコダは高速グラベルに戸惑っているのか、タイムを見ると今ひとつキレがない。観戦ポイントでもアウトに大きく膨らんでいた。奴田原君は固い走りでそれほど離されていない。勝田選手も同様でほぼ同タイムでフィニッシュしている。新井選手はスバルを大きく振り回していつもながら豪快だ。

新井選手のスバル。いつもの新井さん、豪快に振りまわしてました

 陸別はコースが短いので差はつきにくいが、昨今の高速ラリーをコンマ秒で戦っているだけに気は抜けないだろう。

 この日は合計7つのSSを終えて愛国に帰ってくるが、われわれはひと足早く愛国のサービスエリアでラリー車を待つ。

 夕方三々五々と帰ってくるが、コバイライネン選手はやはり高速グラベルのリズムに乗れなかったようで苦戦したうえにコースオフした際にバーストしてしまい、途中でタイヤ交換して大きく遅れて勝負権はなくなった。

 奴田原君もGRヤリスのキモであるセンターの多板クラッチに問題を抱えて、途中FFになりながらもサービスに帰ってきた。奴田原君は少し悔しそうだが、いつもと同じように冷静だ。この後センターデフ部分を交換してパルクフェルメに入っていた。長いグラベルラリーではいろいろなところにトラブルが出る。GRヤリスもその過程にあって次第に熟成されていくはずだ。

左はGRヤリスの開発者、尚彦さん。いつも優しく対応してくれます

 レグ1を終わってトップを走る勝田選手は、2位の新井選手を12.6秒離している。新井選手と奴田原君の差は0.1秒、なかなかしびれる。

 最終日はサービスで見送った後、不覚にも寝落ちしていまい、午後にラリー車が帰ってくるまでイベントに協力してくれた自衛隊車両などを見学して過ごす。

 勝田選手は手堅く逃げ、興味は新井、奴田原の一騎打ちだった。レグ2は3つの短いSSで最終的には奴田原勲がコンマ2秒、新井選手に先んじて逆転2位となった。2人とも激闘お疲れさまでした。

 今のところ、GRヤリスの中ではGRチームの勝田選手が一歩抜け出しているが、近いうちに車両の完成度が高くなってさらにシビアな競争ができるようになることを期待しています。

 全日本選手権、僕らのころとは様変わりしていたけど、やはり古巣に帰ったようで嬉しかった。また復帰するのかとも聞かれたけど、さすがにそんな根性はありません。

陸上自衛隊の自走式地対空ミサイルです。正式名称は分かりません。8発の中距離ミサイルを持ち指揮車とともに行動します。自衛隊員が親切に説明してくれました
日下部保雄

1949年12月28日生 東京都出身
■モータージャーナリスト/AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員/2020-2021年日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員
 大学時代からモータースポーツの魅力にとりつかれ、参戦。その経験を活かし、大学卒業後、モータージャーナリズムの世界に入り、専門誌をはじめ雑誌等に新型車の試乗レポートやコラムを寄稿。自動車ジャーナリストとして30年以上のキャリアを積む。モータースポーツ歴は全日本ラリー選手権を中心に活動、1979年・マレーシアで日本人として初の海外ラリー優勝を飾るなど輝かしい成績を誇る。ジャーナリストとしては、新型車や自動車部品の評価、時事問題の提起など、活動は多義にわたり、TVのモーターランド2、自動車専門誌、一般紙、Webなどで活動。