日下部保雄の悠悠閑閑

通勤散策

九品仏の浄真寺。夕方だったのですでに閉門の時間でした。写真にはないけど、この右側でネコさんたちが人間を遊んであげてました

 肩を痛めて、それを口実に半年以上、フィジカルトレーニングをさぼっていた。おまけに7月には1週間以上入院していたこともあり、スッカリ体がなまってしまった。退院直後はすぐに戻るだろうとタカをくくっていたが全く復活しない……いやそれどころか日に日に低下しているような気さえする。

 朝晩の簡単なストレッチでは到底足りず、どうしたものかと案じて、この道のスペシャリストに聞くと有酸素運動をしなさいとアドバイスをもらった。家人もほっといてモノグサ老人になっては困ると察したのかウォーキングをしようと言い出した。つまり有酸素運ね。本でも読もうと思っていたので気が乗らなかったのだがスゴスゴとついて行った。

 わが家のまわりは比較的フラットな地形だがそれでも緩やかな丘はある。まず目標は隣の駅の九品仏。私鉄なので各駅の間隔は短く、すぐに着いちゃうなと思っていたら敵もさるもの、遠回りで30分ほどかけて九品仏の浄真寺に到着。浄真寺は3年ごとに行なわれるお面かぶりの行事が有名で広くてきれいなお寺だ。お面かぶり次はいつだろう?

浄真寺の名物行事、二十五菩薩来迎会。通称「お面かぶり」。江戸時代から続く伝統行事で3年に1度開催。写真は2017年の5月5日のことで、コロナでしばらく開催されていません。今度はいつになるのでしょう

 探検がてらのウォーキングは夕方にスタートしたので浄真寺の門は閉まっていたが、いつもたむろしているネコさんたちが人間を遊ばせていた。こちらも遊んでもらいたかったけど先を急ぐんでパス。遊ばせ上手なネコさんたちでした。

 浄真寺のあとはその名も「猫じゃらし公園」を回って暗渠沿いに自由が丘に出て約1時間の散策。商店の様変わりが早いのがこの界隈の常だが、コロナでまた変わってしまい、一瞬どこにいるんだか分からなくなったほどだ。

自由が丘南口にある喫茶店に入って糖分補給。名物モンブランですがスパゲティが来たかと思った

 おしゃべりしながらのウォーキングは楽しかったが思ったよりひどく疲れてしまった。驚くほど体力が落ちていたのだ。びっくりというかわれながら呆れる。

 これはいかん。と思ったところに「通勤時のウォーキング」と神の声。家人が何度もこの言葉を繰り返す。耳の奥で魔法の言葉のようにリフレインするのだった……。

 通勤経路は目黒線の奥沢から不動前までの5駅で、距離はさほどないがさすがに徒歩通勤は無理。電車通勤の友人からはひと足先の駅から乗るという話を聞いていたので1駅ぐらいならとやってみることにした。

 奥沢駅から1つ先だと大岡山駅になる。その名の通り丘の上にある。線路沿いの道は交通量が多く、歩行者が電柱に隠れるようにして歩くダラダラ坂だ。考えただけで心が萎える。しかし「窮すれば通ず」で線路を挟んだ反対側、東京工業大学のそばにもあるはずと細い道を探したらあった、あった! 坂はもっときつくなるが広いし交通量はない。テクテクと上っていく。右手の目黒線と大井町線が地下に入っていくのが見える、メカニカルな光景に思わず見とれてしまうが秋風がうっすらとかいた汗を冷やし、早く歩けよと言われているようで大岡山駅まで急いだ。

目黒線の下りを通過していく電車。手前の線路は大井町線。春は桜がきれいです

 というわけでウォーキングをはじめて、少しすっきりした昨日今日でした。

 歩くとクルマでは分からないところが見え、小鳥のさえずり、虫の鳴き声、それに匂いなど、季節の移り変わりが肌で感じられていいなぁと改めて実感している9月の東京でした。

久しぶりのムク。そのうちしゃべりだすんじゃないと思うときがあります
日下部保雄

1949年12月28日生 東京都出身
■モータージャーナリスト/AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員/2020-2021年日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員
 大学時代からモータースポーツの魅力にとりつかれ、参戦。その経験を活かし、大学卒業後、モータージャーナリズムの世界に入り、専門誌をはじめ雑誌等に新型車の試乗レポートやコラムを寄稿。自動車ジャーナリストとして30年以上のキャリアを積む。モータースポーツ歴は全日本ラリー選手権を中心に活動、1979年・マレーシアで日本人として初の海外ラリー優勝を飾るなど輝かしい成績を誇る。ジャーナリストとしては、新型車や自動車部品の評価、時事問題の提起など、活動は多義にわたり、TVのモーターランド2、自動車専門誌、一般紙、Webなどで活動。