日下部保雄の悠悠閑閑

中山サーキットでレースをしてきた

F1日本GPの日にささやかに開催されていた、われらの大いなる岡山GP! その日の中山サーキットでのスプリントレース。240ZにH510、ホンダS800、ロータスエラン、SR311、510クーペ、KB110、いろいろです

 久しぶりに岡山の中山サーキットにやってきた。倉敷在住の同窓生、日下総一郎君が「耐久やらない?」と声をかけてくれ、喜んで岡山行きのJALに乗ったのだ。飛行機に乗る前に「何に乗るの?」と聞いたらロータスエランだという。オーナーは元三菱のドライバーだった古茶重さん。以前、岡山国際で乗ったエランそのものだが、中山は昭和の匂いを色濃く残すクラブマンサーキットで岡山と比べると低速でコーナーが多く、路面も滑りやすい。

 午前中の予選はかろうじてドライだったが、エランでの初コースでどのギヤを使えばよいか迷う。

エラン。決勝は雨でした。ラインを外すとよく滑ります

 予選の結果は2番手だったが、トップの伊藤俊哉/三好正己組の赤い510ブルーバードとは1秒強の差がついている。この短いサーキットでこりゃ難しそうだ。古茶さんはスプリントレースで疲れたから1時間耐久の真ん中ちょっとだけ乗るからとか言ってるし……。

 おまけに決勝では雨が降ってきて路面はさらにニュルニュルだ。しかもウォーミングラップで1本しかないワイパーがほとんど拭いていないことに気が付いた。グリッドでブレードを曲げてもらったりしてだいぶよくなった思ったら、ワイパーのタンブラースイッチからワッシャーが飛んでいった。よほどワイパーには縁がないようだ。その昔、BMWでレースをやってた時もワイパーが壊れたことがあった。あの時は何にも見えなくてサイドガラスの景色からブレーキポイントを探るほどで怖かった。あれに比べれば晴れてるようなものだ。

エランのコクピット。とてもシンプルで、あるのは回転計と油温計、油圧計、水温計ぐらい。トランスミッションは86用を改造した5速です
そのエランに収まった私。小さなスライド窓からアドバイスをくれるのはオーナーの古茶さん
天才チャップマンの傑作、Xボーンフレームに前側にはサスペンションとパワートレーン、後側にはチャップマンストラットが組み込まれてます。FRPボディは乗っているだけ、そこにドライバーが入れてもらってます

 レースは懐かしいル・マン式スタート。コースの反対側から助っ人がクルマにタッチしてからエンジンスタートという方式。以前のル・マン式スタートでエンジン始動に失敗した苦手意識があった。今のクルマと違って大径キャブレター車は下手に全開にするとプラグがかぶってしまい、スタートでもたつくどころかエンストしてしまうことすらある。

 嫌だなぁと思っていたらまたやっちまった。イグニッションスイッチを押してエンジンがかかったつもりでアクセルを踏んでもビタ一文動かない。スミスのタコメーターを見ると0を指している。慌ててイグニッションを押すと幸いに元気よくロータスユニットはかかり5番手ぐらいでレースに加わることができた。

ロータス製の1.6リッターDOHC、2弁の半球形燃焼室にWEBERキャブから燃料が吹き込まれ、まっすぐ排気マニフィールドに流れる。美しい

 先頭グループについていくと何周もしないうちに前にいたクルマがハンディキャップを消化するために次々とピットロードに入っていき、何のことはない先頭になってしまった。

 一人旅だが雨の中山はよく滑り、路面を見ていないとすぐにブレーキはロックしたがるし、ハンドルは言うことを聞かなくなる。慎重に大胆に、と言い聞かせながら周回を重ねる。

 いろいろギヤを試したりするが雨だとエランは3速までしか入らない。4速にも入るがすぐにシフトダウンするのでタイムロスの方が多いような気がする。

 中盤、古茶さんにハンドルを託すが、なんせ狭いコックピットでドライバー交代も容易ではない。ホッと一息する間もなく古茶さん、本当に帰ってきた。またドライバー交代。もう慣れてロスタイムはそれほどなかった。

 周回を重ねるとピットからトップを快走する赤い510が出てくるのが見えた。中山の1コーナーはコンクリートウォールを挟んで内側はピットレーンの延長、外側は第1コーナーになっている。本コース側のさらにインを攻めると逆バンクになっておりよく滑る。赤い510の前に出ようと色気を出してインのラインを狙ったら、予想以上にリアが流れ出した。エランはフロントミッドシップで運転しやすいのだが、流れ出すと速い。つまりスピンした。またやっちまったのである。もう覚悟を決めて途中からギヤを1速に入れて1回転したところで前を見たら、ちょうど赤い510がコースを加速していくところだった。予選1秒差とはいえウェットの中、軽いエランならチャンスはあるかもしれない。が、ことはそう簡単ではない。510は3速(多分)の伸びが速いのだ。間隔が広がったり、縮まったり……。おや、縮まるな。510はテールハッピーでコーナーの中盤で時折大きくテールスライドする。エランも常に小刻みに修正舵を入れていないと飛んでいきそうだが、510はもっとピーキーそうで苦労している。

 特に左ヘアピンの最終コーナーは滑りやすく、アクセルを踏むポイントが遅れている。時として510のテールにエランのノーズが飛び込みそうになる。久々にレースした感があって面白い。

 終盤に差し掛かったある周。周回遅れのグループが最終コーナーに広がりそうな光景が目に入った。あれ、チャンスかも……。自由なラインを取れない510は苦しいラインを強いられ、リアが大きく流れ出した。その鼻先をかすめてエランがホームストレートに出る。バックミラーには何も映らない……。

 実はこのバトルはエランが周回遅れを取り戻した瞬間で、2位には変わらなかったのでした。とっても真剣に遊んでくれた伊藤俊哉さん、ありがとうございました。

 鈴鹿で開催されていたF1日本GPの裏の裏、岡山県の中山サーキットではこんな草レースを楽しんでいた旧車グループがいたのでした。

一緒に遊んでもらった赤いH510と。2.0リッターに50φのWEBERキャブ。ロータスと同じく倉敷のCHECKメンテナンスです
日下部保雄

1949年12月28日生 東京都出身
■モータージャーナリスト/AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員/2020-2021年日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員
 大学時代からモータースポーツの魅力にとりつかれ、参戦。その経験を活かし、大学卒業後、モータージャーナリズムの世界に入り、専門誌をはじめ雑誌等に新型車の試乗レポートやコラムを寄稿。自動車ジャーナリストとして30年以上のキャリアを積む。モータースポーツ歴は全日本ラリー選手権を中心に活動、1979年・マレーシアで日本人として初の海外ラリー優勝を飾るなど輝かしい成績を誇る。ジャーナリストとしては、新型車や自動車部品の評価、時事問題の提起など、活動は多義にわたり、TVのモーターランド2、自動車専門誌、一般紙、Webなどで活動。