日下部保雄の悠悠閑閑

浜松エアフェスタとシトロエン「C5 X」

浜松基地上空にやってきたブルーインパルス

 3年ぶりの開催となる浜松エアフェスタに行ってきた。ブルーインパルスの妙技はもちろんのこと、T-400救難基本操縦練習機とのコンビネーションによるUH-60J救難ヘリコプターの救難訓練を見ることができた。また、大きなC-2輸送機のほかにも、後継機が何かと話題になっているF-2戦闘機やF-15戦闘機、E-2C早期警戒機、ブルーインパルスが使用しているT-4練習機が展示されていた。これらの機体が空を飛ぶのかと思うと不思議な気がする。

 ブルーインパルスは現在は宮城県にある松島基地をベースとしているが、以前は浜松基地を本拠地として活動し、浜松市民との交流も深かったと聞く。たまたま乗ったタクシーの運転手さんも、親近感のこもった口ぶりでブルーインパルスの話をしてくれた。

浜松基地。基地内から見るのはチャンスがないので記念にパチリ
F-2戦闘機。中等練習機のT-4と比べると戦闘機らしい獰猛さがあります。退役の時期を迎えて純国産のF-3の声も聞こえますね
UH-60J救難ヘリコプターがまさに救難準備をしているところ。一見戦闘ヘリに見えますが目的が違います

 ブルーインパルスは2020年の新型コロナの流行時に激務を続ける医療従事者を励ますため東京の空を飛んだのは記憶に新しい。わが家のベランダから見たブルーインパルスは、自分も含めてささくれだった心を癒やしてくれた。

 今回、3年ぶりに開催される浜松エアフェスタは、間近にダイナミックなアクロバット飛行が繰り広げられるはずで、ワクワクしながら浜松へ向かった。

 当日の浜松上空は好天に恵まれ、遠方から飛んでくるブルーインパルスの編隊がくっきりと見え、瞬く間に上空に現れ、再び密集編隊のまま基地上空を航過する。さらに背面飛行や花のように開くアクロバットなど、青空に繰り広げられるエアショーに、どの見学者も開放された笑顔を浮かべていた。

スモークを吐いて見事な編隊飛行。T-4は中等練習機。コンパクトで機動性が高いのが特徴。パイロットの技術を磨くのに最適な機体

 上空で反転するT-4のキャノピーがキラリと光り、生きものの輝きのように感じられた。見事に編隊のまま激しく機動して降下と上昇と繰り返すがそれ自体が意思のあるもののようで美しい。アクロバット飛行は基地上空で行なわれるものの、広い大空を縦横無尽に飛び回るので基地の周辺ならどこでも見える。観客は浜松市全体と言った方がいいかもしれない。

背面飛行しています。操作が逆になる背面飛行は、低空だと特に技術が必要なような気がします

 いつまでも見ていたいが次の予定があったのと、帰りの混雑を恐れて、ブルーインパルスに心を残しながら浜松を後にした。

 今回の往復には乗ってみたかったシトロエンのC5 Xを選んだ。これがびっくりだ。4805×1865×1490mmのDセグメント車だが、1.6リッターターボの直4エンジンはまるでふくよかな大排気量V6のような味わいで、シトロエンらしいゆったりとした余裕を感じさせる。

シトロエンC5 X。あまりの快適さにとろけそうでした

 そしてさらにかつてのシトロエンそのものだったのはサスペンション。フロントはストラット、リアはトーションビームというなんの変哲もない形式だが、走り出すとまるでハイドロサスが蘇ったかのような柔らかい乗り心地! プログレッシブ・ハイドローリック・クッションというダンパー・イン・ダンパーの採用でまるで路面の凹凸を包み込むような味わいがある。エンジンと言い、サスペンションと言いこんな豊かな乗り心地はシトロエンの真骨頂だ。

 大海原を巡航するクルーザーのようで、すべてがゆっくり動いているように感じられた。最近、重いクルマばかり乗っているので1520kgという車両重量も新鮮だった。運動は重量に制約されるのを改めて思い出させてくれた。タイヤは205/55R19という大径で細いタイヤのコンビネーションも素晴らしい。

 おかげで東京と浜松の往復はとてもリラックスでき、ブルーインパルスの余韻に浸れました。

 後日借り出したDS 4も走行モードを「コンフォート」にすると、C5 Xに似たシトロエンの乗り味があり、個性豊かなシトロエン一族が帰ってきたようでうれしい。

シトロエンC5 Xのバックスタイル。浜松基地近くのコンビニで空を見上げながらブルーインパルスとの名残惜しい時間となりました
日下部保雄

1949年12月28日生 東京都出身
■モータージャーナリスト/AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員/2020-2021年日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員
 大学時代からモータースポーツの魅力にとりつかれ、参戦。その経験を活かし、大学卒業後、モータージャーナリズムの世界に入り、専門誌をはじめ雑誌等に新型車の試乗レポートやコラムを寄稿。自動車ジャーナリストとして30年以上のキャリアを積む。モータースポーツ歴は全日本ラリー選手権を中心に活動、1979年・マレーシアで日本人として初の海外ラリー優勝を飾るなど輝かしい成績を誇る。ジャーナリストとしては、新型車や自動車部品の評価、時事問題の提起など、活動は多義にわたり、TVのモーターランド2、自動車専門誌、一般紙、Webなどで活動。