日下部保雄の悠悠閑閑

シーズン初のスノードライブ!

今シーズン初のスノードライブ。なじみのあるコースでウキウキしています

 雪のシーズンがやってきた。今シーズン最初の雪道は北海道。ブリヂストン最新のスタッドレス、VRX3の雪道試乗だ。氷上はすでに東京近郊のスケートリンクで経験済みなので今回は本物の雪上体験だ。実は昨シーズン、北海道千歳で雪上試乗ができるはずだったが、当日は雪が溶けてオンロード試乗になってしまった。急遽オンロード試乗に変わったわけだが、それはそれで貴重な体験。北海道の人でも冬季に走る道はドライ路面が70%というからスタッドレスのオンロード性能を体験できたことはありがたかった。

 VRX3の積雪路での試乗記は本稿に譲るとして、ザクっとした印象は市街地のアイスバーンと圧雪の入り混じった路面での運転のしやすさと、パターンから想像する以上の雪上安定感性が印象に残った。

ブリヂストンのメイン商品VRX3。写真のサイズは225/65R17

 試乗したコースは北海道での最高峰、旭岳への長い上り坂が続くワインディングロード。

 実は以前にも紹介したことがあるがこのコースには愛着がある。もう時効になっていると思うのでツラツラ思い出してみると、冬季のテストをこの旭岳で行なっていた時期があり、毎年何回も来ていた。

 これも以前のコラムで紹介したが、その時お世話になっていた宿屋が勇駒別温泉の湧駒荘で、のちに冬季オリンピックのソチ大会でスノーボード銀メダリストになった竹内智香選手の生家だったと知ったのは、そのソチ大会の後のこと。われわれが湧駒荘で合宿していた頃はまだ幼児で旭川市内に住んでいたというから会ったことはないが、少しでも縁のある人が頑張っている様子はうれしいものだ。

その昔、お世話になった勇駒別温泉 湧駒荘。遠い記憶ではおいしい食事でもてなしてくれたのを思い出しますが、最近よさが分かったのはとろりとした温泉。絶品でした

 数年前に何十年ぶりかで旭岳を訪れた時も湧駒荘に寄って日帰り温泉を使わせてもらったが、滑らかでとろみのあるようなお湯は絶品だった。改めて温泉のよさを知って、贅沢をしてたんだと今さらながら思い至った。

 当時、テストは皆が寝静まる夜、雪温が安定する夜中に行なわれたが、気温は下がる時には-30度にもなってしまう。うっかり素手で金属に触ろうものなら手が張り付いて離れなくなってしまうので油断は禁物だった。もっともこんなに温度が下がるとタイヤはどんなゴムでも同じになってしまうので、低温すぎるのも問題なのだが。

 当時のルートは現在は使われなくなった旧道で、もっと狭く低速で森の中を抜けていく道だった。キラキラと舞う粉雪がライトに照射されて幻のように美しく、木々の間を走るように見えたのはヤマネだったのだろうか。夢の中のような光景は今も目に焼き付いている。

 時折、地元のラリードライバーに遭遇したがさすが道産子、速かったです。

旭岳ロープウェイ近く、-6度の世界。すべてが凍り付いてしまいそうです

 新しいバイパス道路を走っても時折、当時の面影を連想でき感慨深い。現在の新道は片道1車線だが広くて走りやすいコースで、来やすくなっている。

 標高が高いため雪質がよいのも特徴で、ロープウェイのあるスキー場には外国からわざわざ訪れるファンも多い。

 市街地のスタッドレスタイヤで磨かれたアイスバーンと、除雪された道と圧雪が交互に出てくる国道、麓の圧雪、そして軽い轍や氷結路と次々と表情を変えていくのがこのコースの特徴だ。このような千変万化の雪で今シーズンの走り始めができたのは久しぶりだと思う。

 非降雪地域の住人が描くほど雪はロマンチックなものでないのは重々承知だが、雪を見ると心躍るのは何年たっても変わらない。

旭岳へのストレート。北海道ならではの長い直線です
日下部保雄

1949年12月28日生 東京都出身
■モータージャーナリスト/AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員/2020-2021年日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員
 大学時代からモータースポーツの魅力にとりつかれ、参戦。その経験を活かし、大学卒業後、モータージャーナリズムの世界に入り、専門誌をはじめ雑誌等に新型車の試乗レポートやコラムを寄稿。自動車ジャーナリストとして30年以上のキャリアを積む。モータースポーツ歴は全日本ラリー選手権を中心に活動、1979年・マレーシアで日本人として初の海外ラリー優勝を飾るなど輝かしい成績を誇る。ジャーナリストとしては、新型車や自動車部品の評価、時事問題の提起など、活動は多義にわたり、TVのモーターランド2、自動車専門誌、一般紙、Webなどで活動。