日下部保雄の悠悠閑閑
KYOJO CUP最終戦
2022年12月19日 00:00
同業の藤島知子さん、通称フジトモ。トモちゃんに最初に会ったのはイベントスタッフとして来てもらった時だった。1日中、男性スタッフに交じって笑顔を絶やさず作業をしてくれていたのが強く印象に残っている。その時に乗っていたRX-7は見た目が走り屋仕様だったから、いつもの笑顔でドアを開けて出てきた時はそのギャップに驚きだった。
それから数年後にはジャーナリスとして多くのメディアで頭角を現し、ドライバーとしても活動するようなって久しい。今は岡崎五朗さんとTVK系の「岡崎五朗とクルマで行こう」でキャスターも務めているのでご存じの方も多いに違いない。
そのトモちゃんがシリーズで出ているのがKYOJO CUP。関谷正徳さんがバックアップしているKYOJO CUPは女性レーシングドライバーだけで争われるレースで、テクニックだけでなく、レース後の反省会も交えてマナーも教えているので年々レベルが上がっている。
使う車両はVITAというカウルをかぶったフォーミュラカーのようなレース専用車。レース専用車と言ってもエンジント&ランスミッション込みの吊るしで375万円と、安価でランニングコストも安いのが魅力。古くからのレーシングカーコンストラクターであるWEST RACING CARSが開発制作したマシンだ。
パワートレーンは、ヴィッツの1.5リッターNAエンジンにトランスミッションは5速MT。メンテナンスが簡単なスぺースフレームで安全性にも配慮した設計になっている。
KYOJO CUP参加車はWEST RACING CARSで封印されたエンジン、トランスミッションを搭載してイコールコンディションが保たれている。タイヤもDUNLOPのロード用をモディファイしたワンメイクで、いじれるのはホイールの銘柄とショックアブソーバーのみという。リアウイングの角度調整ねじがあったのでこちらも変更できるのかもしれない。
車両重量はドライバー込みで650kg以上となっており、重量が軽くパワーの限られたレースには向いているレギュレーションだ。
KYOJO CUPの初年度は2017年で、今年で6年続けられており、車体・パワートレーンは変えられていない。性能の安定性とメンテナンスの容易さがVITAの魅力で多くのドライバーに愛されている。それゆえにKYOJO CUPだけでなくVITAは東西で人気があるマシンだ。
そのKYOJO CUPの最終戦が富士スピードウェイで開催された。参加台数は20台。最終戦はポイントが高いので各選手真剣だ。トモちゃんはこのところ忙しい毎日で少しバテ気味に見えたが、予選は無理せずに13番手につけていた。2分1秒6のタイムだったが、トップグループは条件によっては1分57~8秒で走るという。
レースはその日の午後に行なわれた。スタートグリッドでは各選手とも気合が入っており男女の差などはない。
フォーメーションラップが終わってレッドシグナルが消灯、一斉にスタート! その直後に中団グループで接触があり、コースサイドアウト側で多重クラッシュが発生し4台がリタイアしてレースは中断となってしまった。トモちゃんはその後ろでブレーキをかけたように見え、クラッシュ現場からは回避できた。幸いだったのは誰もケガしなかったこと。アクシデントがスタート直後の加速中だったので胸がざわついたがホッとした。
再スタート後も残りの16台はアクシデントにめげることなくレースには一層の拍車がかかった。性能の均衡が図られているだけに各車簡単には離れない。富士特有の長いストレートではスリップストリーム(今はドラフティングって言うんだっけ?)を使って、ぎりぎりのブレーキングで順位を入れ替える。ストレートエンドでは4ワイドになることもしばしばだ。全く目が離せないレースが各所で展開される。レベルが高いことに改めて感心した。
トモちゃんは目標だったシングル、8番手でフィニッシュしたが、中団、後続の各グループもいたるところで激しいバトルが繰り広げられレース全体から目が離せなかった。
レースは終盤にトップに立った猪爪杏奈選手が初優勝。シリーズチャンピオンは翁長実希選手が獲得した。彼女はスタートでほんのわずか動きだすのが早く、ドライブスルーペナルティを受けていたが、チャンピオンにふさわしい走りだった。
この中からやがてGTドライバーが誕生してもおかしくないと感じたKYOJO CUPだった。トモちゃんお疲れさまでした!