日下部保雄の悠悠閑閑
新城ラリー
2023年3月13日 00:00
全日本ラリー選手権に参戦する新生KAYABA Rally Teamは、スノーの次はターマックの新城ラリーに挑んだ。残念ながら初日にコースアウトでDAYリタイアとなり、修復して出走したDAY2も本来の実力を発揮できなかったが、多くの経験ができたと思う。ラリーシーズンは始まったばかり。徐々にステップアップしていってほしい。
このユニークなRally Teamは社内スタッフで運営され、ドライバーも社内から公募される。モータースポーツ部に転籍してからKYBワークスカーのハンドルを握るが、さすがに百戦錬磨の全日本に挑戦するのは大胆過ぎる。今年は習熟期間でラリチャレや地方選手権から始めて、2024年に全日本選手権に参加する予定となっている。
KYBがサポートしているもう1台のGRヤリス、いつものADVANカラーの奴田原文雄/東駿吾組はJN2のトップ、総合でも5位に入った。安定感、速さともますます磨きがかかっている。
圧倒的な速さで優勝したのはJN1クラスのヘイキ・コバライネン/北川紗衣組のシュコダ・ファビアR5。タイムを見ると安定して速くてクルマもクルーも第一級だ。
勝田範彦/木村祐介組のヤリスラリー2は、まだホモロゲーションが取れないのでオープンクラスでのデビュー参加。惜しくも最終SSでリタイアしたが車両/クルーとも実戦参加で大きな収穫が得られたに違いない。
光ったのはFFのWRC4クラスでJN1に挑戦したプジョー・208 ラリー4の新井大樹/金岡基成組。見事にJN1で4位に入った。世界で活躍してほしいドライバーの1人だ。
そして同業者の清水和夫君はJN6のヤリスHEVで見事に3位入賞。あいかわらず速いです。
新城ラリーは20周年を迎え、地域社会に溶け込んで成長してきたラリーだ。主催者のモンテカルロオートスポーツクラブ(MASC)の代表、勝田照夫さんはモータースポーツファクトリーLUCKの創始者であるとともに、プロモーターとしての才能も優秀だった。
夜間のハイアベレージ区間が主流だった日本のラリーがもがいていた頃、ヨーロッパ型ラリーを目指して昼間のSSを中心としたMASCラリーを開催したのは1970年代の後半だろうか。
多数のギャラリーが陣取った林道でのSS、しかも補助ランプの必要ない昼間、観客の声援がスポーツ選手の背中を押すのはラリーも一緒だ。
光栄にもゼッケン1で第1回のMASCラリーを走った時は感激した。整備された林道には新しい砂利が引き詰められ、気持ちよいほどドリフトした。気持ちよすぎて滑るばかりでトラクションがかからない。つまり後続のラリーカーのために砂利かきをすることになった。後続車のタイムは飛躍的によくなっていくが、しかし成績など二の次。その爽快さは忘れられない思い出となった。
MASCラリーの進化した姿が現在の新城ラリーだと思っているが、今のスタイルのラリーは先人の努力の積み重ねの上に成立していることを実感する。主催、お疲れさまでした!
次戦は九州の唐津。コバライネン選手の独走は続くのか?