日下部保雄の悠悠閑閑

ノート オーラ e-POWER 4WDの舗装路での素顔

広報車返却場所で別れの1カット

 エクストレイルに続いて同じe-POWERの「ノート オーラ」を借り出した。女神湖で乗った4WDのオーラでe-POWERの4WDを再認識した。後輪モーターの出力も大きく、4輪で駆動する力強さは格別だった。

 そして今回はノート オーラ4WDは超ドリドリの氷上とは違って舗装路オンリーのオーラの素顔に改めて接した。

 モニターを見ていると後輪モーターが休んでいることはほとんどなく、ほぼ常に前後輪で駆動している。ハンドルを握っていると駆動方式を意識することはないが、どっしりしたところは4WDらしい。

 自分は自動車の動力源に関してそれほどこだわりはなく、クルマ単体で言えば電気のよさも、内燃機のよさもそれぞれだと思っている。そして内燃機の進化は止まらない。夢と思われていた可変圧縮比は日産が実用化し、40%が限界と言われていた熱効率はかなり前にその壁を突破し、実験段階では50を超えている。まだまだ進化し続けているのが内燃機だ。一方の電気の可能性は始まったばかりだ。メリット/デメリットが明確になりつつあり、バッテリのイノベーションも兆しが見えつつある。

 話が脱線してしまった。その両方を使ったe-POWER、シリーズハイブリッドは発電機であるエンジンがバッテリからの要求でいつでもかかるのはご承知のとおり。走行中ならそれほど気にならないエンジン振動とノイズだが、低速で突然始動するとちょっとびっくりする。ドライバーの意思とは関係ないからだ。もうちょっと音と制振性が高いとグンとポイントが上がるのだが……。VCRエンジンがほしいとは言わないけどね。

おなじみの日産のテストドライバー、と言うか「現代の名工」。会えば口がわるくて冗談ばっかり言ってるけど優しい人なんです。日産のイベントでまた会えて嬉しい

 一方ドッシリした安定感は前後にモーターを持つ4WDの強み。FFの軽快さとは違って後輪荷重も大きいひとクラス上の落ち着きがあった。高速直進時のハンドルのスワリやフロア振動はもう少し向上させたいけど妥当なところ。

 ノート オーラのデザインは曲面の使い方が巧みで、シンプルでありながら他にない秀逸さがあると思う。インテリアの加飾も質感の見せ方が上手でインパネは視点があちこち動かないのが好ましい。

リアのデザインも曲面がきれいで気に入ってます

 ただ、ディスプレイは必要なものを呼び出して動かすまでにちょっと手間がかかる。レーンキープも警報音が煩わしくて切ってしまった。またADAS系では車間距離の認識がエクストレイルに比べると少し甘いようだ。これも近い将来きっとよくなるに違いない。

 気になるクルマほどマイナス点をほじくるのが自分のわるい癖だが、基本性能の高さで満足度は大きく、市街地から長距離まで意外なほど疲れ知らず。期待値以上に楽しいコンパクトカーだった。

 600km以上走り回って通算燃費は15.8km/L。市街地や渋滞が多かったせいでエクストレイルとほぼ同じだった。THSほどの燃費は出せないが、それでもコンパクトカーの中でも独特のサイズ感や質感などオーラは独自のポジションを築いている。

返却時のメーターです。通算燃費は15.8km/L。ターンパイクを上っていたときは一気に通算燃費が13km/L台に下がりました。でも下りですぐに回生でかなり盛り返した
オーラでは栃木県のテストコース、GKNにも遠征しました。この原稿はもう少しお待ちください

 家人も「これなら運転しやすそうだわ」と好感触を抱いたところで「トランクが小さいのね」と一言。そりゃ広大な荷室を誇るボルボ・V60 に比べればでしょ?そんなすべては両立しないのですよ。

久しぶりのMercedes meで行なわれたフルモデルチェンジのメルセデス・ベンツ「GLC」発表会。ディーゼル+マイルドハイブリッドです。こちらも近いうち試乗レポートを出します
日下部保雄

1949年12月28日生 東京都出身
■モータージャーナリスト/AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員/2020-2021年日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員
 大学時代からモータースポーツの魅力にとりつかれ、参戦。その経験を活かし、大学卒業後、モータージャーナリズムの世界に入り、専門誌をはじめ雑誌等に新型車の試乗レポートやコラムを寄稿。自動車ジャーナリストとして30年以上のキャリアを積む。モータースポーツ歴は全日本ラリー選手権を中心に活動、1979年・マレーシアで日本人として初の海外ラリー優勝を飾るなど輝かしい成績を誇る。ジャーナリストとしては、新型車や自動車部品の評価、時事問題の提起など、活動は多義にわたり、TVのモーターランド2、自動車専門誌、一般紙、Webなどで活動。