日下部保雄の悠悠閑閑

キックスで行く山の温泉

日産 キックス。キビキビと正確なハンドリングとレスポンスのいいe-POWERで、山道も軽快に走れました

 日産のキックス 4WDで赤城山の麓にある山の温泉まで足を延ばした。キックス4WDは1月の女神湖氷上試乗会で改めてe-POWER 4WDの実力を知り、今回は高速道路、市街地、山道のオンロードに付き合ってもらった。

 全高1605mmのキックスは結構大きく見える。シート位置も高いのでアクセル&ブレーキペダルとの位置関係が少しだけ上から踏むような感じで、自分のドラポジだとバックレストが立ち気味になる。シート座面は固め。そのかわり視界も広く明るいのがいい。それに全長4290mm、全幅1760mmのボクシーなデザインは四隅もつかみやすい。

正しいドラポジにはなるけど、座面はシートの屈曲点がお尻の位置になることと硬めです

 前後2つのモーターはフロントが100kW/280Nm、リアは50kW/100Nmのパワーで、前後独立で4輪を駆動する。リアモーターの出力が意外と大きく、滑りやすい路面では常時4輪駆動に近い動きをするのは氷上の女神湖で経験した。しかもモーターは反応が早く、常にコントロールしやすい。e-POWER 4WDの持ち味の1つだ。

 レギュラーガソリンが使える発電用エンジン、HR12Dは60kW/103Nmの出力。エンジン振動やノイズもあるので、エクストレイルのVCRエンジンのように静かではないが、初期のe-POWERから比べると格段に遮音性は向上しており、緩加速では音振ともあまり気にならない。

 最初に感じたのはハンドルにダイレクト感があってキビキビしていたことだ。ボディ剛性も結構高くてSUVらしい頼もしさがある。意外と硬いサスペンションで「こんなにクイックだっけ?」と思ったが、4WDではFFと同じドライブフィールながら設定も違って当然だ。リアサスペンション形式はFFと同じトーションビームなのも、乗り心地やハンドリングに影響を与えているのかも。

 高速道路ではプロパイロットを起動して前車に追随する。高速での加速の伸びはそれほど得意ではないが、必要十分で120km/h区間でも余裕がある。レーンキープは強い強制力はなく、レーンを踏むと軽い振動がハンドルに伝わるぐらい。

 小さなロールにキレのいいハンドリングが生き生きとする狭い山道。正確なライントレースでSUVと言うよりもスポーツ・ハッチバックと言った方がぴったりくる。

長い傘だと斜めにしないと入らない。でもノートにはない積載容積が魅力

 目的地は赤城山麓にある梨木温泉。お湯は茶褐色の濁り湯で、湯の華がパリパリに張っているのを初めて見た。いつもはすずめの水浴びと言われるが、今回はじっくりお湯につかり、何回もこの風呂場に足を運んだ。山の宿らしい山菜料理もおいしく、9時半を過ぎると外は消灯してしまうので屋上から満天の星が見えるという。残念ながらこの日は雲が出てしまい何も見えず、真っ暗な中で手探りで部屋まで戻った。季節を変えてまた来てみたい自然豊かな山の中の梨木温泉でした。

露天風呂は茶色の濁り湯がまた魅力。借景には滝が見え、藤がキレイでした。
温泉のそばを流れる小川。緑あふれる風情はなかなかです

 翌日はあいにくの雨だったが、気になっていた「わたらせ鉄道」に乗るために何も考えずに水沼駅までナビに入れた。

 ところが案内に従って行くと、どんどん山道に入り、まるでラリーのSSみたいな細い山道に入る。すれ違いもできない山道でしかも到達距離は増えている。妙だなと思いながら次第にペースが上がって行くのは性かもしれない。

 ナビは駅に道路から右折して入らないように案内していたのだと気づいたのは到着してから。でも正確なハンドリングとピックアップのいい加減速でちょっとだけSSの気分を味わえたからよしとする。

わたらせ鉄道水沼駅。左は下り線で名物のトロッコ列車が停車してます

 わたらせ鉄道は名物のトロッコ列車ではなく普通車だったが、十分に旅の風情を楽しめた。渡良瀬川の絶景をすぐそばから見ることができ、なかなか得難い経験だった。足尾銅山の入り口にある通洞まで7駅。ここで下車したものの、帰りの列車までは30分ほどしかない。駅のそばには30分で見物できるところはなかったが、肉屋さんで買ったホカホカのコロッケは高校時代、部活の帰りに食べたコロッケと同じ味がした。

絶景の渡良瀬川。巨石がゴロゴロしていて、改めて水の力を感じます
通洞駅の上り線、駅長さんが傘をさしてくれました

 帰路も渋滞もなくスムーズに帰れたが、同乗していた家内にはシートが少し硬かったようだった。最後までナビに悩ませられたが、キックスの実力は改めて知ることができた。

 平均燃費は16.5km/L。高速道路が多かったドライブルートにしては妥当なところではなかろうか?

帰ったらムクがこんな格好で寝てました。こんな無防備でいいんだろうか
日下部保雄

1949年12月28日生 東京都出身
■モータージャーナリスト/AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員/2020-2021年日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員
 大学時代からモータースポーツの魅力にとりつかれ、参戦。その経験を活かし、大学卒業後、モータージャーナリズムの世界に入り、専門誌をはじめ雑誌等に新型車の試乗レポートやコラムを寄稿。自動車ジャーナリストとして30年以上のキャリアを積む。モータースポーツ歴は全日本ラリー選手権を中心に活動、1979年・マレーシアで日本人として初の海外ラリー優勝を飾るなど輝かしい成績を誇る。ジャーナリストとしては、新型車や自動車部品の評価、時事問題の提起など、活動は多義にわたり、TVのモーターランド2、自動車専門誌、一般紙、Webなどで活動。