日下部保雄の悠悠閑閑
人とくるまのテクノロジー展
2023年6月5日 00:00
日本自動車技術会が毎年開催する「人とくるまのテクノロジー展」は、ティア1や2、3にあたる企業が多く参加し、BtoBの技術を一堂に見るには絶好の機会だ。
パシフィコ横浜の会場は幕張メッセやビッグサイトに比べるとコンパクトだが、ブースを細かく分けて効率よく展示している。
3日開催の最終日に行ったせいか来場者が随分多く、みなとみらい駅から会場まで人の波が絶えない。5~6年前より女性の数が増えたような気がする。人の多さに眩暈を起こしそうだ。
どのブースもちらっと見ただけでは正直分からないが、好奇心を刺激することは間違いない。
アクセルとブレーキの踏み間違いによる事故があとを絶たない。近年の新型車では障害物を検知してアクセルが開かない機能を持っているが、既販車に取り付けるのはなかなかハードルが高い。自動車技術展で見かけたのはアイアクセルと言う商品。シンプルなメカ機構で、急アクセルを踏むとリンク機構でアクセルを解除し、合わせてブレーキが穏やかに効くというものだ。作動時はブザーとインジケーターでドライバーに知らせる。ほとんどの場合フルアクセルにすることはないという前提で開発されており、装置のON/OFFチェックは可能だ。
シミュレータ的なものに乗せてもらったが、少なくとも違和感はなかった。構造変更申請も必要ないので町の整備工場でも取り付けられる。聞いたことないメーカーだな、とよく見るとNGKが販売元だった。約20万円と言う価格だが、クルマを買い替えるのはちょっと、と言う層には関心がもたれるだろう。
見慣れたHKSのロゴを見つけた。HKSは昔大変お世話になった。英国RACラリーでの三菱エンジンはパワフルで頑丈、並みいるワークスカーに勝るとも劣らないパフォーマンスで素晴らしかった。ナビゲーターシートに座っていても硬質な回転フィールを思い出すと今でもうっとりしてしまう。
で、今年のHKSの展示は電池交換タイプのバッテリフレームの展示だった。HKSも業態変化が進み、開発能力を活かして多様な分野に進出している。その1つが2tのEVトラックで、コンビニなど決まったルートを周回する商用車向きだ。すでに他業種と協業して試験運転を始めているという。ところでHKSの内燃機関の技術は急速に注目を集めている合成燃料にも活かせるに違いなく、近い将来にそんな展示を見ることができるかもしれない(希望的観測です)。
ラリージャパンを応援しているFORUM8も出展していた。これまでどのような会社かおぼろげながらしか知らなかったが、ドライビングシミュレータなどのパッケージソフトの開発を行なうエンジニアリング会社で発展著しい。複雑な動きをするラリーカーもシミュレートできる高い技術のアピールにはラリージャパンはいいと理解した。中国出身のエンジニアの熱心な説明を聞き、なおさら親和性を感じた次第。
東京R&Dや戸田レーシングなど懐かしき名前も出展しており、業態の柔軟な変化にちょっと嬉しかった。あっちこっち行ったり来たり、人酔いするロートルにとってはヘトヘトになった時間だが面白かった。じっくり見ると3日かかりそうだ。取材したCar Watch編集部のみなさん、お疲れさまでした。