日下部保雄の悠悠閑閑

横浜ゴムのジャーナリスト勉強会

勉強会を開いてくれた横浜ゴム

 毎年続いていた横浜ゴムのジャーナリスト勉強会。コロナ禍で3年ほど休止していたが、この春に再開された。タイヤはクルマのキャラクターを変える重要なパーツだが、黒くて丸いのは同じ。そして中を見ることができないのでなおさら謎の多い物体だ。それだけに勉強会は貴重なのです。

 今回のテーマは横浜ゴムが取り組む環境技術についてのプログラムだ。最初に清宮技術統括から、生産現場でも100%再生可能エネルギーが使われている工場が直実に増えていることが紹介された。

技術統括の清宮さん。今後のヴィジョンを話してくれました

 ちょっと話はずれるがADVANでスポーツタイヤのパイオニアとなった横浜ゴムだけに乗用車用タイヤのイメージが強いが、産業用のタイヤやホースなども高い割合を持っており、近年大型の商用タイヤに力を入れて、インドのオフロードタイヤメーカーの大型買収やスウェーデンのOR専門メーカーを傘下に収めるなど、こちらの分野も活発な動きを見せている。もしかしたら環境技術はこちらが先行する可能性もありそうだ。

 さて、プログラムの最初はHLC規格だった。HLCとは聴きなれない言葉だが、高負荷対応を意味する「High Load Capacity」の頭文字で、重量級のBEVなどに対応したタイヤもこれに該当する。

 これまでの乗用車の重量の推移をみると同じクラスのクルマだとICEからPHEVになって約350kg増え、BEVになるとさらに150kgプラスとなっており、必然的にタイヤの負荷能力を上げることが求められる時代に入ったという。通常は空気圧を上げるなどが考えられるが、摩耗の悪化要因ともなるので別規格が必要になる。そこでトラブルの少ないプロファイルの変更などで対応していくことになるようだ。HLCタイヤであることはサイズの前に表示されている。

HLC規格であることはサイズ表示の前に明示されている

 次に中国、欧州で急速に数を増やしているBEV用タイヤについて。BEV最大の問題点は摩耗で、シミュレーションと実車試験によって効率的にエビデンスを得ることで、BEV用にはICE用とは別のパターンを持つことが求められるようになると考えられている。

 そして素材について。カーボンニュートラルに対応するのはタイヤメーカーも同じ。2030年までに38%の削減を目標に、ヨーロッパで始まった再生可能リサイクル(サーキュラーエコノミー)の考え方を取り入れた作業が始まっている。循環性のある資源を使うのはトレッド、サイド、構造、素材など多義にわたり、35%がこれに代わるという目標を掲げている。

 たとえばナフサに再生可能素材を入れたり、今やウェットグリップに不可欠なシリカも、もみ殻を燃やして灰を化学処理してシリカを作ったりする方法も考えられている。

タイヤに使われている主な部材の原料

 一方で古タイヤのゴムを使った粉末ゴムを原料とする研究も進んでいる。コストも重要な要素で、大変な時代になっていることを実感した。

 ご存じのようにスーパーフォーミュラではすでに実戦で使われ始めており、再生可能部材の使用はますます増えていく。

SFも材料置換でカーボンニュートラルに向けて走り始めた

 会議室での座学が終了した後、試験設備の一部を見せてもらった。カタログのイラストで見るシリカや吸水バルーンを見ることができるなんてちょっと感激の瞬間もあり、ムービングベルトでは実際に走らせるときに、高速で回るムービングベルトがたわまない技術など、多くのノウハウが詰め込まれていることに感心した。ウィンタータイヤ用の大型の氷盤インナードラムなども見るたびに驚く。

 集中して甘いものが欲しくなったところで終了。とっても中身の濃い勉強会でした。

日下部保雄

1949年12月28日生 東京都出身
■モータージャーナリスト/AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員/2020-2021年日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員
 大学時代からモータースポーツの魅力にとりつかれ、参戦。その経験を活かし、大学卒業後、モータージャーナリズムの世界に入り、専門誌をはじめ雑誌等に新型車の試乗レポートやコラムを寄稿。自動車ジャーナリストとして30年以上のキャリアを積む。モータースポーツ歴は全日本ラリー選手権を中心に活動、1979年・マレーシアで日本人として初の海外ラリー優勝を飾るなど輝かしい成績を誇る。ジャーナリストとしては、新型車や自動車部品の評価、時事問題の提起など、活動は多義にわたり、TVのモーターランド2、自動車専門誌、一般紙、Webなどで活動。