日下部保雄の悠悠閑閑

丹後ラリー

KYB Rally Teamに帯同させてもらった。サービス中のKYB号。今回は旧知の石田雅之さんがハンドルを握る。まだまだ現役で嬉しい

 丹後に初めて行った。全日本ラリー選手権も中盤になり、折り返し点になるラリーが開催される丹後は、京都府の北にある日本海に面した豊かな土地。というのは行ってみて初めて知った。

 新幹線で名古屋から先は行くことはあまりないので、京都まで意外と早いことを実感。最近利用する新横浜から2時間強で到着するのだ。

 京都駅でKYBの桝本さんに拾ってもらい、いざ丹後へ! 京都から高速道路で一気に日本海側まで行けるので、休みながら行っても2時間で京丹後に届いた。昔の感覚からすれば半日以上得した感じだ。

 ラリーチームはすでにサービス隊の設営も終わり、レッキも終了してペースノートづくりも行なっている。われわれが町の食堂で昼食をとって(さぬきうどんとはまた違ったおいしさだった)サービスに合流したときはラリーカーも戻っており、奴田原君や久しぶりに会う石田雅之選手に会った。石田選手は今回KYB号のハンドルを握る。

ヤリスのトランクはこんな感じ。スペアを1本積むと結構かさばるのが分かる

 今年の丹後は今シーズン初めてのドライラリーとなる予想で各車ともドライセッティングとなっている。

 初戦のつま恋から比較するとJN-1の車両がかなり増えていた。残念ながら丹後がデビュー戦のはずだったスバル・WRX S4は事前テストで鎌田選手がアクシデントに見舞われ、荒井敏弘選手とも参加を見送った。

 それでもコバライネンのファビアを筆頭に8台の車両がエントリーする。GRヤリス ラリー2も将来のカスタマー向けに実戦テストが進み、同じく8速ATを搭載するGRヤリス Rally4DATも着実に進化している。

 ファビアは3台、改造GRヤリスが1台、以前、新井大樹選手が走らせていたシトロエンC3のR5車両が1台。その新井大輝選手は2輪駆動のプジョー・208 ラリー4で4輪駆動に挑戦する。

 昨年までのJN-1だったGRヤリスは今年からJN-2になり、奴田原文雄選手と山田啓介選手の一騎打ちが面白い。GRヤリスは計7台でこれにスバル・WRXが加わって計8台。

 JN-3はGR86とスバル・BRZで計8台。そしてJN-4はスイフトで占められ、こちらも8台。

 JN-5になるとバラエティに富んでいる。ヤリスは2台のCVTを含めて9台、2台のデミオと1台のフィットで計13台だ。さらにJN-6になると清水和夫選手のヤリス HEVを含めて3台のヤリスと2台のCR-Z、フィットが1台となる。

 参加可能車両を見ながら時代に合ったクラス分けをしているのでちょっと複雑だ。

 さらにオープンクラスにはフェラーリやポルシェ、クラシック ミニもいてにぎやかだ。リスト上では約55台が一同に走り、かつての全日本ラリーの台数に迫っている。

 YUHO RALLY TANGOは京丹後を起点として丹後半島を回る2日間にわたる300㎞の行程。オールターマックのSSは計12本、約120kmで行なわれる。丹後半島は美しいところで、天橋立をバックにリエゾンを走るラリーカーはサマになっている。ラリーもコンパクトにまとまっている点も動きやすい。舗装もきれいでコースも走りやすいとはRALLY TANGOに出たことのある竹岡圭ちゃんの言。

 DAY1は9時スタートで15時ごろにはフィニッシュ。DAY2も同じコースを使い、15ごろにはすべて終了予定だ。

 私はKYB Rally Teamに帯同させてもらい、サービスの現場とSSを見せてもらった。サービスはラリーカーが出て行ってしまうとやることはない。サービス隊が次々と移動する昔のラリーと違って、ラリー車がレグごとに帰ってくるのを待つばかり。しかし便利なものでスマホにTRICSというアプリを入れれば、SSごとにタイムを見ることができる。

 コバライネンはいつものように最初からスパートしていく。SS4を終わってすでに30秒近いアドバンテージだ。福永ファビアと勝田GRヤリス ラリー2は数秒差での2位争い。これにJN-2の奴田原ヤリスが絡みつく構図だ。

 わがKYBの石田雅之選手は初めてのヤリスと久しぶりのラリーをベテランらしく無難に走っていたが、DAY1最後のSSでエンジントラブルとの連絡が入った。まだ走れると言う。サービスを共用する奴田原チームの山田メカはタービンと判断。KYBモータースポーツ部の社員メカたちが交換準備をして待つ。白煙を上げたKYB号が帰ってきた。ターボ交換は時間がかかる。DAY1リタイアを決めてじっくり交換作業に入るが、タービンは見えにくい位置にあり手も入らず苦戦する。こんな経験からラリーチームは鍛えられていく。

Leg1の終わりでタービン交換に入るKYBのモータースポーツ部。実戦も4戦目で動きもスムーズ

 同じころにGRヤリス ラリー2もバタバタと不穏な音を上げながら帰ってきた。どうやら大作業になりそうでGRのテントに緊張が走る。排気管をはじめとして下まわりのほとんどを外した末、テントが静かになった。部品待ちだろうか。ラリー2はワークスのラリー1と違ってカスタマーが使う。トラブルになりそうなところは出し切って、カスタマーの手に渡せるようになるにはもう少し時間が必要だ。今は生みの苦しみというところだろうか。

GRテントのGRヤリス ラリー2。大作業で緊迫した雰囲気。いつもにこやかな斉藤さんもさすがに話しかけにくい

 もう1台のGRヤリス GR4RallyDATは快調でほぼトラブルフリー。ルーティンメンテで済んでいる。熟成も進んでタイムも上がっており、このATを積んだスポーツカーが登場するのも近いかもしれない。

 DAY2のギャラリーステージで見たラリーカーの感想は次の機会にする。コバライネンの完勝も、JN-2のADVANヤリス、奴田原選手が3位に入ったのも納得でした。

ラリーが終了して撤収作業に入る。実戦を重ねるごとに順序よく手早くなっていくもの
日下部保雄

1949年12月28日生 東京都出身
■モータージャーナリスト/AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員/2020-2021年日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員
 大学時代からモータースポーツの魅力にとりつかれ、参戦。その経験を活かし、大学卒業後、モータージャーナリズムの世界に入り、専門誌をはじめ雑誌等に新型車の試乗レポートやコラムを寄稿。自動車ジャーナリストとして30年以上のキャリアを積む。モータースポーツ歴は全日本ラリー選手権を中心に活動、1979年・マレーシアで日本人として初の海外ラリー優勝を飾るなど輝かしい成績を誇る。ジャーナリストとしては、新型車や自動車部品の評価、時事問題の提起など、活動は多義にわたり、TVのモーターランド2、自動車専門誌、一般紙、Webなどで活動。