日下部保雄の悠悠閑閑

最新国内ラリーカーの走り

コバライネン選手のファビア。鋭角的に向きを変えて修正舵を当てながら危なげなく旋回していった。さすがです

 さて前回はYUHO RALLY TANGOを見学に行き、国内ラリーを紹介したが、そのときにギャラリーステージで外からの各選手の走りを見せてもらった。

 サービスポントからほど近いSS9と12、Tsunotsuki Reverseという名前がついている。SSはそれぞれネーミングされているので、参加者はイメージしやすく、ギャラリーもなじみやすい。距離は約12kmのターマック(RALLY TANGOはオールターマック)で観戦ポイントは森林公園スイス村にある下りのWヘアピン。朝この観戦ポイントに入ると、ラリー終了までこの地点から出られず、1日ここに陣取る形になるが、熱心なギャラリーはアウトドア装備で場なれた格好をしてラリーを楽しんでいる。屋台も出て、トイレもあるので長居にも困らないように配慮されている。

 天気は曇り空だが午前のSS9の路面は夜の雨でウェットが残っている。タイヤは全車ドライ用を選択しているようだ。

 10時過ぎに特徴のある排気音と共にコバライネンがやってきた。ワイドな左コーナーのあと短いストレートがあり、左ヘアピン、その直後に右ヘアピンとなるライン取りが難しいコーナーだ。コース幅は片側1車線ぐらいの広さがありライン取りは自在それぞれのドライバーの個性が出る。

迫る右コーナに向けて短時間でも直線的に加速していく。速い!

 ドライビングセオリーは昔も今も変わらないはずだが、レースでもラリーでも走らせ方はずいぶん変わっている。特にドライではタイヤグリップを最大限に使うような走らせ方になっている。

 友人の三好正巳さんが昨年ヤリスレースにチャレンジしたが、ドライでは歯がたたなかったと言っていた。走る編集長として有名だった三好さんはワークスのサポートを受けていたこともあるほどの腕達者だが、それでも現在のスペシャリストとは全くクルマの走らせ方が異なり、走り終わったあとのタイヤ摩耗が全く違うと言っていた。そういえばロードスターのメディア対抗4時間耐久でも同じことが起こっており、タイヤを限界まで使えるドライバーが速い。

 話がそれてしまった。さて、ラリー2特有の音を響かせてファビアが表れた。速い! 緩い左コーナーを抜けてきたファビアはアウト側からヘアピンに向けて直線的に入ってきた。強いブレーキで減速する。ブレーキを使いながら姿勢をヒョイと変えて、インぎりぎりをとらえ、カウンターで姿勢を整えヘアピンに向けて鋭く修正して、また直線的に加速する。右ヘアピンはコーナー出口のアウト側に余裕があるようで、アウト・イン・アウトのセオリーは取らない。クルマの行きたい方に走らせながら、クリッピングはコーナーの頂点ぐらいに取っていた姿勢変化はやはりシャープだ。見とれてしまいコーナリング中にブレーキを使っているのかも分からなかった。記憶の映像には少し点灯したような気もするが。とにかくシャープで無駄がない。

若干19歳。JN5のヤリス5MTで全日本に参戦する木内秀柾選手のコーナリング。コ・ドライバーは加勢直毅さん

 JN2で快調な奴田原ADVAN号は対照的にスムーズ。コーナーは滑らかに速度を落とさないような走り方。こちらはコーナーを余すことなく使い、タイヤのグリップ力の最大値を引き出している。立ち上がり速度はパワーのあるラリー2のファビアが速いものの、コーナリングスピードはGRヤリスの方も速そうに感じた。DAY1をタービントラブルでリタイアしたKYB号の石田雅之さんもベテランらしく危なげのない走りだ。

ADVAN カヤバ KTMS GRヤリスの奴田原/東組は総合3位。走りも無駄がなく流れるようなコーナリングでした

 JN1でFFのプジョー・208(ラリー4)を走らせる新井大樹選手は元気いっぱい。少し甲高い音を上げながら突っ込み速度が速い走りで旋回半径が小さい。こちらが元気をもらったような気分だ。

 このギャラリーポイントでは奴田原選手と長年コンビを組んでいたコ・ドライバーの佐藤忠宜さんが解説をつとめており、その毒舌、いや正直なコメントが面白すぎて、ドライバーの立場だったら冷や汗をかきそうで新鮮だった。長年、奴田原選手とコンビを組んでいた理由がちょっと分かった気がする。

 SS12になると路面は完全に乾き、観戦ポイントまでの到達時間が短縮されている。コバライネン・ファビアに至ってはトータルタイムを20秒も短縮していた。奴田原ヤリスも18秒ほど速く、トップドライバーは軒並みタイムを上げている。新井大樹プジョーも奴田原ヤリスとほぼ同じタイムだったが、反対にいつも奴田原ヤリスに肉薄している山田啓介ヤリスは今回元気がなかった。

 注目したのはJN1で走る眞貝選手のGR4RallyDAT。JN2の奴田原ヤリス並みにタイムを上げており、想像以上にATの完成度が高くなっていた。ギャラリーコーナーでは立ち上がりが一瞬遅れたように見えたが高速の伸びはいいようだ。

 あくまで個人的な感想です。自分ではとてもあんな走りはできません。

 優勝はコバライネンのファビアで破竹の連勝記録を伸ばし、奴田原ヤリスは新井大樹プジョーに競り勝って総合3位に入賞した。

 NUTAHARA RALLY SCHOOL出身の若手、JN5の若葉マーク、木内選手は無事完走し、また経験値を上げた。応援してるよ。

ギャラリーステージには狭いながらもGR京都伏見とKYBがブースを出しており、それぞれステッカーや旗などのグッズを配ってました
日下部保雄

1949年12月28日生 東京都出身
■モータージャーナリスト/AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員/2020-2021年日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員
 大学時代からモータースポーツの魅力にとりつかれ、参戦。その経験を活かし、大学卒業後、モータージャーナリズムの世界に入り、専門誌をはじめ雑誌等に新型車の試乗レポートやコラムを寄稿。自動車ジャーナリストとして30年以上のキャリアを積む。モータースポーツ歴は全日本ラリー選手権を中心に活動、1979年・マレーシアで日本人として初の海外ラリー優勝を飾るなど輝かしい成績を誇る。ジャーナリストとしては、新型車や自動車部品の評価、時事問題の提起など、活動は多義にわたり、TVのモーターランド2、自動車専門誌、一般紙、Webなどで活動。